プロローグ
剣と魔法のファンタジーな世界
今見ている君たちにとっては、案外近いようで遠く、理想であり未知の領域だと言える
だが、この世界というのも中々ハードなもので、楽かと言われると寧ろ過酷だろう
必ずしも報われるとは限らない
本当の理想を得られるのは一握りすら存在しない
不遇は当たり前
例え僅かな希望や幸福も
ご都合主義な主人公に漏れなく掬われる事になる
そして、更なる不幸がやってきたその日には……
僕の命はいとも簡単に捨て去られる事になる
努力は惜しまず、希望は捨てず、幸福を望んだ
生き方は間違っては居なかった筈
一般的に順当に生きてきた筈
だから報われないのだろうか
そうして
普通で一般的で普遍な生き方ではダメなのだと悟った
だからありったけの時間を費やして努力した
歴史・地理
母国語
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剣術
槍術
格闘術
魔法学
戦術学
全てを独学で習得してきた
目で盗み、身体で体現、感覚で馴染ませる
そうして生きてきた僕の人生は間違っていたのか
ここまでの努力を以てしても
幸福どころか、欠片すら見せてくれなかった
何故なら僕が弱いから
どれだけ修練を積もうが上がる事の無いのだから
だから僕は今度も最後を迎える事になる
目の前にいる二本角の鬼にまた命を奪われる
一回目は酷かったものだ
四肢を叩き折られた挙句に暫く生かされたのだから
二回目は一回目よりはまだマシなものだった
抵抗しようとした瞬間に身体中の骨を粉砕された
三回目は失敗した
あと寸での所で足元の粘液体に脚を溶かされ死んだ
四回目は…………
取り敢えず何度も死んでは生き返っての繰り返し
その度に自身の力の弱さを心底恨み
周りの人達を妬み羨んだ
その将来有望な力を渇望した
僕は目覚める
そしてまた捨てられる
足元を魔法で凍らされて
逃げる事も出来ずに殺される
何度死んだのかはもう忘れた
後方の足音が遠ざかっていく
あぁ、結局僕はどうすれば良かったんだろう
努力せずに生きてみれば
怠け者と揶揄われて甚振られる毎日
努力に全てを捧げてみれば
役立たずと言われてこの様に
普通に生きれば
不幸に見舞われ死んでいく
何故か繰り返される僕の人生
何かが変わる事はあるけれど
僕の最後は変わらない
弄り殺されるか
見捨てられて死ぬか
不幸な死か
ははは、ハハハハ
「ありがとう踏み台君」
「さようなら役立たず」
「さっさと死ねゴミ屑」
「消えてしまえ愚か者」
「お前にもう用は無い」
「努力?出来ない癖に」
そして僕は同じ人生を歩む事になるのだろう
鬼の拳はもうすぐそばに迫っている
身を屈もうにも凍らされている足が邪魔して屈めない
同じ人生、やり直せるなら何がしたい?
僕は何も変える事は出来なかった
物語はまた最初から始まる
廻り回って最初から