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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion01 白の章
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Episode05 「厄介事はまだまだ続くのかぁ!」



「報告書、ちゃんと分かりやすく書けよ」


 リーノとソアは、あっさり包囲された編隊によって保護を受けた。


 謎の襲撃者は残らず捕獲され、戦艦も武装を解除されて、曳航されていった。


「カートにも礼を言っておけよ。あいつが俺に連絡をくれて、警察にも通報してくれたんだからな」


 銀河評議会警察機構は、法の下に様々な権限を有しているが、制限も多くて手続きが面倒な案件なんかは、コスモ・テイカーが解決に動くこともある。


 ランクの高いテイカーは、警察との結び付きも強い。


「あの、それでソアは?」


「もちろん、連中に預けたさ。あの嬢ちゃんが何を考えているかは知らんが、これで問題は解決したようなもんだろうよ」


 警察の一個艦隊と共にベルトリカでやって来てくれたラリーだが、今はノインクラッドの宇宙船ドックに一緒に戻っている。


「ラリーさん、今日って仕事だったんじゃあ」


「そうだよ。けどまぁ、そっちはほとんど解決したようなもんだがな」


 人差し指でリーノの額を小突くと、事務室に二人で入っていく。


「俺の仕事は後回しでいい。何があったか、一から話せ。ティンクは記録を頼む」


『りょうかぁ~~~い』


 一からと言われたリーノは、カートと行った食堂の話からしようとすると、ラリーから拳骨をもらい、スタート地点をソアとの出会いからに修正、警察部隊に囲まれるまでの顛末を報告した。


「やっぱお前、訓練所からやり直した方が、いいんじゃあないか?」


 深い深い溜め息を漏らし、雇用主は頭を抱える。


「昔のお前によく似ているじゃないか」


「カート、茶化すのは無しだ」


 ゲートウェイに入る前にリーノを追い回していたモビールを取り押さえ、警察に引き渡したカートが戻ってきて、手に持った今日の戦利品をキッチンに持っていく。


「あんな子供にいいようにされるコスモ・テイカーなんて前代未聞だよ」


『クスクス……』


「ティンク、俺はカートになんて言った?」


『なにか気になる事でもあるの? 心当たりとか?』


 舌打ちをし、ティンクを無視してラリーはウィスクを操作する。


「今日の課題は済ませたか? 追加50問だ。寝るまでにやっておけ」


 ラリーはリーノに、自らが監修する、テイカーの心得を纏めたティンク特製の問題集を毎日やらせている。


「50問って、5日分じゃあないですか」


「全部復習問題だ。前に間違えてやり直しもしている物ばかりだから、そんなに時間もかからないだろ?」


 報告書も纏めなければならないのに、課題までだなんて、まだ夕飯前だが、グズグズしていると就寝時間までに終わらない。


『ラリー、警察機構から緊急入電だよ!?』


 珍しく慌てた様子のティンクからの報告。


 ラリーは自分の端末に繋がせる。


「まいったな。報告書に始末書、それに追加課題なんて、朝まで掛かったって終わんないよ」


 いつもと同じなら、10問の課題を解いて答え合わせ、間違い直しまでをおよそ1時間近くかかってしまう。


「ぼやいている暇もないよな」


 先ずは報告書、ラリーに説明しながら書いていたので、これはもうすぐ終わる。


 始末書はテンプレートに沿って入力すれば、ティンクが修正してくれる。


 ラリーには内緒で、リーノは結構ティンクに甘やかされていた。


 けど課題はやはりリーノの為だからと、ホストコンピューターは優しくはしてくれない。


「おいリーノ」


「は、はい!」


「追加課題はやらなくていい。こっちで問題が起きた。行くぞ」


 事務室からも繋がっているコントロールルームの隔壁を開けて、ラリーがリーノを呼ぶ。


「な、何があったんですか?」


 コントロールルームでは既にカートが着席しており、駆動炉に火を入れている。


「俺達と別れた警察が襲われた。やつらは一般人50人を人質に交渉してきた」


「えっ!?」


 もちろん敵の狙いはソア。


 人質の解放交渉をしている間に、攻撃準備を整えられ、一斉に襲い掛かられて、警察の部隊は大型艦を残して、全滅したそうだ。


 主砲と動力をやられて、大型艦も行動不能に、ほぼ生き残りもなくやられて、少女も奪われてしまったのだとか。


「リーノ、追加課題は免除してやる。活躍して見せろ」


「はい、出会ったばかりでも、知り合った女の子を怖がらせる奴らは許せません」


 それに無念にも散った警察官のためにも、賊を野放しにはしてられない。


「警察からの追加情報だ。敵はパスパード解放軍と言うテロ集団だそうだ」


 カートがベルトリカの発進準備に忙しいティンクに代わって読み上げる。


「銀河評議会に反発する過激派組織か。確かそのほとんどがお尋ね者のクリミナルファイターだったよな」


 ラリーが今日捕まえたのも、そこの工作員だった。


「ああ、下部組織員に至るまで賞金を掛けられている連中だ」


 ベルトリカ内では火気管制はラリーが、動力管理と通信をカートが行う。


 リーノが入るまでは操舵もラリーが行っていたが、能力を見込まれて、舵を握るようになったルーキー。


 稀にだがテイカーやクリミナルファイターの中にも、特殊能力を保有する者が存在し、その能力は“イズライト”と呼ばれ、様々な物が確認されている。


 リーノは意識を高めれば、目に映る全ての物が遅く感じられる“スローアイ”の持ち主で、戦艦の砲撃なども、発射から目で追っても反応できる程の反射神経を持っている。


「この作戦に参加するコスモ・テイカーは俺達を含め3チーム。囮は警察機構が行うので、俺達は敵アジトに潜入、壊滅を任されるそうだ」


 航宙船ベルトリカと、キャリバー海賊団ランベルト号、ジャッジメントオール・ブルーティクスは、銀河評議会に登録されるテイカーチームの中でも、トップスリーに数えられる強者揃い。


 ルーキーながらもベルトリカに名を連ねるリーノは、注目株の一人に挙げられている。


「警察機構から一人、この船に案内人として派遣されるから、詳細データはそいつから受け取れとの事だ」


「了解だ。それよりカート、あの妖精はどうした?」


「寝ている。と言うか気絶したままだ」


「えぇーーーっ!?」


 夜叉丸はシュピナーグのような重力制御機能は付いていない。


 危険だからとその体をカートの左の二の腕に縛り付けはしたが、モビール戦の加重に耐えられず失神してしまい、命に別状はないものの、今は医務室で横になっている。


「お前、容赦ないな」


「重力制御などされては戦場のプレッシャーを感じる事ができん。俺の機体に乗り込んだんだ。それくらいは覚悟すべきだろう」


 ティンクに鎮静剤を打ってもらい、リリアは今も呻き声を上げている。


『意識は戻ってないけど、もう大丈夫だよぉ』


 キャリバー海賊団のランベルト号、古代に惑星内の海で活躍していた、“帆船”を模したガレオン船は、赤い船体に白い帆が映える。


 対艦戦では無敗を誇る無数の砲門を有しており、近付く者は容赦なく灰と化してしまう。


 ジャッジメントオールのブルーティクスは上部に離発着用の甲板を備えた母艦の形をしており、艦載機はほとんどが無人機ながら、その圧倒的な物量で電撃作戦を遂行する荒技で有名。


 船体下部は戦艦の形をしており、火力でも後れを取る事のないハイブリットな強者である。


「彼らが道を切り開いてくれる。俺達はベルトリカで可能な限り敵陣に切り込み、三方に分かれモビールで内部に侵入、ゲリラ戦法で白兵戦を仕掛ける。とちるなよリーノ」


「はい、ラリーさん。それにしてもいつの間にソアにアイコンを取り付けたんですか?」


 特殊な電波に反応するマーカーを、別れる前にソアに取り付けた。


 そう言ってリーノのウィスクに、特殊電波を発するドライバをインストールする。


『お客さんの到着だよう』


「タイミング悪いな。管制室から発進許可を受けようって時に来るなんてな」


 もう少し早いか、発進後に来てくれればいいものを、こちらの予定は報せてあるのに、なぜ一番手が放せなくなるこのタイミングなのか。


『着艦許可を求めてるけど』


「ああ、了解だ。カート、お客さんを迎えに行ってくれ」


 通信担当と言っても送られたデータのやりとりのみ、顔を出すような外向きの仕事はティンクの役回り。


「断る」

「おい! もう動力は安定してんだろ?」


「客を迎えるなんて、俺は愛想笑いなんてできないぞ! リーノの仕事をお前がすればいいだろう」


 手の空いているカートに接近するモビールの迎え入れをしてもらおうとするが、ラリーには予想通りの反応だ。


「おいおい、しゃあねぇな。リーノ、お前がエアロックに行って、着艦の誘導をしてやりな」


「わ、分かりました」


 やって来たのは同伴する予定の警察官。


 ベルトリカの格納庫には3機のモビールが入っていて、もう一機と言うわけにはいかない。


 間もなく発進のため、ステーションとのデッキは封鎖している。


 警官にはここまで乗ってきたモビールを船底部に磁力で接舷させ、外からエアロックを使って入るように指示を出した。


 接舷と同時に船は港を離れ、まだ巡航速度の間に警官をエアロックに入れて、機密ブロックの気圧を正常値にもっていく。


「乗船を許可頂き、ありがとうございます」


「ああ、いえ、ご苦労様です」


 警察官は機密服もヘルメットもそのままに、リーノに対して敬礼をし、お互いに挨拶を交わした。

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