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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion01 白の章
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Episode03 「もっとよく考えて行動しろ!」



 お茶をしながら、少女ソアの話を聞くこととなったリーノ。


「仕事って、俺は今日は休養日で、勝手に依頼を受けたりとかはできないんだよ」


 女の子は困っている様ではある。


 このまま見捨てるのは忍びないが、プロのテイカーとして、勝手な行動は慎まなければならない。


「それじゃあ、友達のお願いを聞いてよ! それならいいでしょ」


 イチゴのパフェを堪能しながら、さもありなんと方向転換。


「お友達ってさっき会ったばっかだし」


「そうよそうよ。図々しいのよ」


 どの口が言うと突っ込みたくなるリリアの一言。


「君は俺に仕事を頼むと言ったよね、それは友達が手伝いレベルでできることなのかい? どこに送り届ければいいかは分からないけど、暴漢に襲われる覚えがあるって言うなら、ちゃんとした依頼を然るべきルートで、きちんと手続きを取ってもらわないと」


 養成所で最終試験にも出た注意事項を説明するリーノ、ソアは少し考える素振りを見せて、直ぐに顔を上げる。


「襲われた理由なんて知らない。一人旅をするあたしを誘拐しようとしたんじゃあないの?」


「いや、それにしてもあの黒服の二人って、君に関係のある人達だよね」


 ほぼワンパンチで仕留めはしたが、ソアの腕を掴んでいた力が弱すぎたことが気になっていた。


 加えて齢12歳の少女が、いくら威風堂々とした見た目通りの性格だとしても、恐い思いをしたというのに、あまりにも落ち着いているのが不自然でしょうがない。


「強ちバカって訳じゃあないのね。それじゃあどうしても、あたしのお願いは聞いてもらえないって事?」


「うん、そうだね」


 自分は直球思考であると自覚しながらも、猪突猛進をやめられないと痛感しているリーノでも、流石に首を縦に振ることはできない。


「そう、……それじゃあリーノ、あなたに誘拐犯になってもらうしかないわね」


「って、どういう事?」


 体の半分くらいの大きさのパウンドケーキに、夢中になっていたリリアが顔を上げる。


 あまりにも物騒な話になり、リーノも口元に運ぼうとしていたコーヒーカップをテーブルに置く。


「あたしがここで大声で騒いだら、簡単にあなたを誘拐犯にできるって話よ」


「そんなの、私が証言すれば直ぐに誤解を解けるわよ」


「ふふん、今さっき調べたけど、フェラーファ人って、調停法の下で特定保護を受けてるから、そこから出たばっかりのあなたみたいな人の話は、証言として採用されないのよね」


「ぬぅ……ぐぐっ!?」


 リリアは自身で銀河評議会の事やらを調べているから、常識も弁えているが、ほとんどの妖精族は集落でのルールが全てで、その為に評議会ではフェラーファ人は特別扱いに、外に慣れたと見なされるまでは、調停法で線引きがされる。


「自分で言うのもなんだけど、あたしは見た目は幼女だからね。あんたを陥れるくらいは簡単にできるはずよ」


 厄介な子供に捕まったものだ。


 実際ここで騒がれたところで、捕まることはないと分かっているリーノでも、流石に面倒事は避けたい。


「しょうがないか、それじゃあ友達として、お願いを聞くしかないね」


 一度置いたコーヒーカップを手に取り、残りを一気に飲み干して、深い溜め息を一つ溢した。






 向かうのは惑星パスパード。


 銀河評議会に加盟してから間もない、文明レベルの極めて低いが都市型として開拓の進む惑星だ。


 新たな労働力として開発された人型のロボット、今までは作業に応じた制御プログラムを、一体一体に施していかなければならない、非常に高価な産業機械だった。 


「ロボット制御用の画期的なプログラムを君が?」


「そうよ。で、そのプログラムディスクを持って行かないといけないの。あたしが」


 その制御プログラムを作成したソアが行って、最終調整を行わなくてはならない。


 これが成功すれば作業用ロボットは、いちいちプログラムを調整する必用がなくなる。


 そうなれば技術者が、わざわざ現場に訪れる必用がなくなると言うことだ。


「君が? 本当に?」


「……嘘に決まってんじゃない。でもこのディスクの中身は本物よ。誰もがこんな子供が運び人だって思わないでしょ? だからパパに任されたの」


「じゃあ、あの黒服の人達は?」


「パパの会社の人、依頼したテイカーをあそこで、あなたにやったのと同じ方法で面接して、全員契約に至らなくて困っていたところに、リーノが来たの」


 つまりリーノの体捌きを見て、これなら間違いないと判断されたと言うことだ。


 取り敢えずの話は理解できた。


「信じるの? 今の話……」


「いや、信じるも何も判断材料がなにもないしね。取り敢えずはつき合うよ。そんでリリアにお願いがあるんだけど」


 三人はスペースポートまでやってくる。


 自分のモビールも、カートの物も駐機したまま。


「カートさん、まだ街中を見て回ってるのかな?」


 はぐれたカートへの伝言をリリアにお願いして、ソアを同乗させた自分のモビールを発進させる。


 リリアは万が一のために教えられていた手順で、カートの機体のコクピットハッチを開けて、中で待つことに。


 音もなく浮かび上がるリーノの機体。


 瞬く間に重力圏を抜けて、無限の宇宙へ。


「なにこの小型機? あなたが買ったの?」


「えっ? いやラリーさん、俺の保護者的な人が買ってくれたんだよ」


 駆け出しのルーキーが乗るには、あまりに高性能なのが気になったソアが聞く。


 そんなことが気になる少女と言うだけで、色々と怪しいのだが、リーノは細かいことには気も回らず、進路をこの宙域にあるゲートウェイに向ける。


 囮としてソアの父親が、すでに目的地へ向かっているそうだから、こちらも少し急いだほうがいいのかもしれない。


「なんだ? この反応はもしかして……」


 スペースポートで予定航路をターミナルに送り、許可を得たリーノの機体に、無断で接近するモビール。


 明らかに宙航法に違反する行為だ。        


「接触しようとしている? まさか君が狙われているのか?」


 ノインクラッドの管制エリアを出た途端に急接近する機体。


 心当たりは一つしかない。


「全チャンネルとも通信に応答無し、少しだけ進路を逸れて振り切ってみせるか」


 急加速で躱そうとするが、距離を変えず追跡してくる未確認機。


 不信航行とならないギリギリを蛇行するも、振り切ることはできない。


「すごいわね、このモビール。全然振動を感じない。こんなに小さな機体なのに、重力制御がかなり高性能なのね」


「そうなの? そんなにすごい物をもらったんだな俺」


 そんな機体でも振り切れないのは、乗り手の腕の差がハッキリ出ているのだろう。


「最高速を出せれば簡単なものを! このままじゃあ、ゲートウェイまでに逃げ切る事はできないな」


 思い切って接触をし、目的を明らかにして、蹴散らす手を思いつくが、冷静に考えれば、間違ってもしてはならない手段であることに気付く。


 そろそろ減速しないと、ゲート公団から警告が出され、評議会警察機構の警察職員に取り締まられてしまう。


 コスモ・テイカーである自分が、依頼でもないのに少女のお願いを聞いて、公的にはプライベートフライトをし、これで問題を起こせば、停職処分を受けるかもしれない。


「そんなことになったらラリーさんに殺されるよ」


 鬼教官の顔が浮かび上がり青ざめるリーノ。


「レーダーにもう一機?」


 未確認機の更に後方から、恐ろしい速度で接近する小型モビール。


 スピード違反も気にせず、瞬く間にリーノ達と未確認機の間に入り込む。


「む、無茶するなぁ。一発免停もんだよ。……あれ?」


 しかしお陰で未確認機は速度を落とし、リーノは法定速度でゲートを潜り抜けることができた。


「今のってカートさんの“夜叉丸やしゃまる”だったよな。助けてくれたんだ、よかったぁ~~~」


 位相差空間であるゲートウェイに入ってしまえば、同じように追っ手があろうと、この中では手を出してくることは不可能。


 ただしこの中では、通信も通常空間に送ることはできない。


 事情はリリアが説明してくれているはず。


 リーノは自動操縦に切り替えて、シートに深く座り直して、大きく溜め息を吐いた。


「なぁ、あれってやっぱり君を狙ってきたんだよな」


「分かんないわ。けど普通に考えたらそうでしょうね」


 確かにこれは警察では預かってくれない案件だろうが、新米テイカーが首を突っ込んではいけない問題だったような気もする。


 リーノはこの後の展開よりも、経緯をラリーとカートに説明しないといけない事に、今から頭を悩ませるのであった。

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