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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion05 金の章
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Episode23 「もう、指先一本動かせねぇぜ!」



「イグニスグランベルテと共にラオ=センサオも終わるのね」


 金色に船は次元断層に逃げることなく、残り少なくなった警察機構軍艦隊が見守る中、船体のあちらこちらから炎を上げる。


「飛び出してくる無人モビールが、火を噴いてる。ヘレン、これで気が済んだ?」


 ソニアはキャプテンシートのヘレンの顔を見る。


「まだよ。私の敵はまだ1人残っているもの」


「カーティス=リンカナムの敵だから? あれだけ邪険にされてるのに?」


「なぁ~に? もしかして妬いてるの?」


「そう言う事を聞いてくるあたり、私はやっぱり、あなたにとっては都合のいい女なのね」


「本気で怒るわよ」


 ソニアルは禁句を使うのを躊躇わない。


 ヘレンの顔が真剣になった分だけ、自分が愛されているのだと実感できるからだ。


「姐さん達、まだ終わってないですよ」


「そうね、脳みそまで筋肉のあなたに注意されていたら、世話はないわね」


 バシェット=バンドールは禿頭を右掌で、ペチペチしながら照れ笑いをした。






 イグニスグランベルテとガルガントォーバルを失い、無人モビールのガードも無くなったラグランデスボルト。


『くそぉ、めんどくせぇ~、なんで俺が、こんな目に合なきゃなんねぇ~んだ!』


「もしかしてヴァン=アザルドのヤローか? あいつもしぶとい奴だな」


 ラリーの指示で巨人の腹部の穴を目指すブラストレイカー、失った右前腕を思いっきり振り回し、左腕を振るおうとするも、リーノのイズライトが先読みして、鮮やかに躱すと、腹部の大きな穴が目の前に来る。


『えっ! ちょ、ちょっとラリーさん!?』


「狼狽えるな。俺も見てるし、同じくらい驚いている」


 ラグランデスボルトの土手っ腹に開いた穴が修復されている。


「もしかしてヤロー、イグニスグランベルテの再生能力を、このデカ物で使えるようにしたってのか?」


 あり得ないことではない。だがそれではやはりヴァン=アザルドは。


『まったくよぉ、ようやく逃げ出せたぜ!』


 まさかである。古代遺産に体も魂も取り込まれた現代人が、誰の手助けもなく自力でシステムから抜け出すなんて、できるものなのだろうか?


「オリビエあれ、どう思う?」


『有り得ない。と言いたいけど、どうなんだろ? 協力者がいれば或いは」


「その協力者の力量って、お前クラスである必要はないか?』


 オリビエ保有の機械工学系のイズライトは、一度見て理解した技術を記憶して再現する事ができる。


 小さい頃から一流の職人達の中で技術を磨いてきたオリビエは、師匠である親方も超えたと、オルボルト=ベッツェマック自身が太鼓判を押している、ワンボック・ファクトリーの秘蔵っ子だ。


「まさかあいつらに、オリビエみたいな技術者の協力者がいるってのか!? そんなのあるわけがないだろ?」


 そう断言するも宇宙は広い、ヴァン=アザルドやラオ=センサオなら、そういう隠し球がいてもおかしくない。


「まさかだが、もしそんなヤツがあれの中にいるとしたら……、ヴァン=アザルドぉ!?」


 あいかわずのしぶとさと謎大き男。


「もしかしてラオ=センサオも生きてるのか?」


『それは考えられないわ。イグニスグランベルテが爆発するまで、あの男の反応はずっと同じ位置にあった。パターンから言って、機械化されたままだったはずよ』


「ソア、その反応ってのは確かか? ヴァン=アザルドはどうなっている?」


『同じよ。ラオ=センサオと。ただし、12秒間だけ確認できていないブラックアウトがあるんだけどね』


 イグニスグランベルテの爆発の間、機関部の1基が消滅する12秒間、ガルガントォーバルが直ぐ側にいたから、ラオ=センサオの反応はロストする事も無かったけれど、離れた位置にいた、ラグランデスボルトの内部信号をキャッチし続ける事は不可能だった。


「オリビエ、12秒でどれだけできる? それだけあればやれるか?」


『流石にそれは無理。例え、その空白の12秒が起こるって分かっていても、たったそれだけの時間で作業を終えるなんて、古代人でもできっこないと思うよ。最初から仕掛けがあって、手順を知っている人でも居ない限りは』


 ここまでの考察では、ヴァン=アザルドの声を発する巨人は、奴を取り込んだまま。あれはシステムの起こしたフェイクである。


『もう謎解き遊びは終わったか?』


 みんなの声を信じると決めても、相手があのヴァン=アザルドでは、安心はできない。


「くそ! なにが本当なんだ?」


 惑わされている間に、巨人は右腕も再生している。


『騙されないでください。ラリーさん!』


 巨人はブラストレイカーに背中を見せて、キリングパズールへ向かおうとしている。


「ヤローまで、あの星を狙ってやがるのかよ」


『待ってくださいって、ラリーさん』


「うっせぇぞリーノ、なんだってんだ!?」


『あの巨人の中のヴァン=アザルドは、俺たちが見た時のまんまっすよ』


「おまっ!? 何を根拠にそこまで言いやがる?」


 このマジメな後輩が、いい加減な事を言いはしないのは分かっている。


 しかしソアやオリビエが断定できていないことを、なに自信満々に言ってやがるとそう言いたい。


「なぜ分かる?!」


『その子のリンクが切れてないからよ』


「ソア?」


『リーノはまだイグニスグランベルテと繋がったままなのよ。まぁ、あの船は沈んだから、今はあの巨人と繋がっているってことになるのかしら?』


 それが本当なら、巨人諸ともヴァン=アザルドを葬るチャンスだ。


「やるぞヤローども! 巨人退治だ」


 ガルガントォーバルを失ったラグランデスボルトなんて敵ではない。


 そう思っていたラリーに、カートが悪い報せをもたらす。


『重力波を感知した。ラグランデスボルトの右腕だ』


 熱量はブラストレイカーの粒子加速砲の三分の一程度。


「なんの問題もないじゃあないか」


『忘れちゃダメだよラリー。加速砲の粒子には質量があるんだから、力場を掛けられた方に歪められるんだよ。突っ切る力がない粒子砲じゃあ勝てないから』


 オリビエの計算に寄れば、負けはしなくても突破は難しい。


「ランベルトだ。ランベルト号なら弱った奴のすかしっ屁なんて、簡単に潰せるだろう」


『すまないラリー、ランベルトとブルーティクスはそっちまで行けそうにない。イグニスグランベルテ戦でダメージを受けすぎた』


 ベルトリカとグランデは、そのイグニスグランベルテの残骸が、惑星に落下しないように奮闘している。


『やりましょう、ラリーさん。カートさん』


「なんだよ、何かいい考えがあるってのか?」


『ありません。ただ俺はブラストレイカーを信じるのみです』


 自信満々に説得力のないセリフを吐く新人だが、信じるに足る根拠は持っている。


 そう、ブラストレイカーは。


『おいクソガキ! いつまで食っちゃべってやがる! めんどくせーからチャッチャと終わらせるぞ』


 ヴァン=アザルドが吠えるが、もう惑わされる事はない。


 賭けるだけの価値がある突破口も見つかった。あとはできるだけ激しい気合いを込めるだけ。


「いいか、俺は腹をくくった。恐らく成功するか否かはお前次第だ、カート!」


『案ずるな、俺はこれでもフウマの諜報員だ。どのタイミングで何をすれば効果的かは、体に染み込ませてきた。お前らに一流をみせてやる』


 ブラストレイカーが持つ二本の刃を一本へ! 全長の三分の二以上ある大きな剣を構え、ラグランデスボルトに斬り掛かる。


『うぉぉぉぉぉぉお!?』


 イグニスグランベルテは盾であり、ガルガントォーバルは槍だった。


 鎧であり剣の役目を担うラグランデスボルトは、警察機構軍の船の主砲をモノともしない。


 だがブラストレイカーの一振りを、金の巨人は左腕で受けようとする。しかし鎧は小さな相手の攻撃を止められず、前腕を失ってしまう。


「リーノ、早く離れろ!」


 巨人の狙いは15メートルブラストレイカーが立って入れる程の右腕の大筒、重力波で合体挙兵をバラバラにしてしまう事。


『あばよ、ガキども!』


 ヴァン=アザルドの声は勝利を確信する。


「いけるぞリーノ!」


『分かりました!!』


 ブラストレイカーの強化武装、ブラストエッジにバスターキャノンのエネルギーを注入する。


『いけ! “ブラストエッジ・アークブラスト”』


 ブラストレイカーのとっておきは、重力波に負けることなく、粒子加速を100パーセントエネルギーに変換して、重力波を掻き消して、アークブラストを300メートルの巨体に叩き込んだ。


「左前腕に続いて、右腕を完全に吹き飛ばしてやったぜ!」


 動きが止まる金色の巨人ラグランデスボルトへ、ブラスト・バスターキャノンをお見舞いする。


 全てのエネルギーをつぎ込んだ攻撃で、ブラストレイカーのエンジンはガス欠で停止。


 宇宙は静けさを取り戻した。

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