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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion05 金の章
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Episode21 「膠着状態だな、しぶといジジィどもめ!」



 少しばかり不安はあったがブラストレイカーの粒子加速砲は、金色の巨人の放つ重力波砲を相殺する威力を発揮した。


『くそ、全くの互角かよ』


『ラリー、負けていないだけでも上出来だろう。小回りならこちらに利がある』


『カート、お前本気で言ってんのか? 俺たちは針の山の様な、砲台だらけの敵を相手にしているんだぞ』


 敵は自軍のモビールを犠牲にしても、惜しむことなく弾幕を厚くする。


 こちらの飛び道具は届かず、近接武器が使える距離に近付く事もできない。


「けどお二方が武器名をドナってくださる分、威力は増しています。俺たちの心が折れない限り、負けはありません」


『カートはともかく、俺はキャラじゃあないんだがな。だがはっきりと今までで一番、あのオッサン共に怒りを感じてるからな、腹の底から叫んでやるよ』


『ラリーが俺をどんな風に見ているかは知らんが、魂を燃やす修行を子供の頃はしていたからな』


 そしてなにより、一番肝心なリーノのテンションを引き上げるべく、先輩テイカーは新米にも分かり易いように気合いを込めた。


 威力の増したシュピナーグと、アークスバッカーのミサイルを全弾撃ち尽くす。だが全てを無人モビールで食い止められてしまう。


『畜生、イグニスグランベルテをどうにかしないと、無人モビールが邪魔でしょうがない』


『ラリー、あれを』


 金色の巨人ラグランデスボルトと金色の砲船ガルガントォーバル、金色の船イグニスグランベルテの鉄壁の防御、無人モビールがベルトリカ他三隻を襲う。


「ヤバイですよ。ベルトリカが!?」


『心配いらないわ、リーノ。こっちの事は気にしないで、目の前のデッカイのに集中しなさい』


「だけど……」


『ソアがああ言ってんだ。俺らは俺らの勝利を掴むぞ』


「は、はい。分かりましたラリーさん」


 だがどうにも飛び道具では、巨人にダメージを与えられそうにない。


「カートさん、お願いします」


 ブラストレイカーはブラストエッジ。夜叉丸が持つ天狗丸と大蛇丸の二刀に、プラズマの刃を纏わせた2本の剣で、無人モビールを斬り刻みながら前に進む。


『リーノ、思い切って前に出ろ!』


「で、でもカートさん。タイミングが合わせられないっす」


『リーノ、俺にコントロールを渡せ! こういうのは呼吸だ』


「わ、分かりました。お願いしますラリーさん」


『お前は近付くモビールを撃って、援護するんだ。頼りにしてるぞ』


「はい!」


 ラリーはリーノに気を使った。


 カートの剣技とリーノの砲撃でやっとの思いで近付けば、今度は巨人と砲艦からの直接攻撃を受け、また距離を空けさせられる。


「くそ! 粒子砲が連射出来たら、ボッコボコにしてやるのに」


 リーノが思っていることは相手も同じ。だから牽制に使うだけで、撃ち合いには使えない。


『ブラストレイカー、聞こえますか?』


『おお、御曹司』


『すみません。ようやく追いつけました。援護します』


「隊長、ありがとうございます」


『任せてくれたまえ、リーノくん』


 ブレイブティクスはブラストレイカーの背中を護って、新武装を全身に仕込んできた中の一つ、数え切れないほどのミサイルを撃ち放った。


『全方位ミサイルは一度に40発の同時発射を、最大10回できますから』


 ブレイブティクスの武装は、全て実用的な物に換装された。


 ドクトル・ヘルのロボットでは、手も足も出ないくらいに強くなった。


『ラリー、リーノ、聞こえる?』


『なんだ? ソアか?』


『カートもよく聞いてね。あの中にいる犯罪者の配置が分かったわ』


 グランテは戦闘をほとんど、AIのウロボロスに任せている。


 ソアとソアラはデータ収集に専念していた。


『イグニスグランベルテからはラオ=センサオが、ラグランデスボルトからはヴァン=アザルドのパーソナルデータが検出されたわ』


『そしてガルガントォーバルは巨人を通して、ヴァン=アザルドの意識が操作していると』


『相変わらずラリーは察しだけはいいわね。あの砲艦から巨人の腕を引き抜けば、私が乗っ取ってあげる』


 巨人から大筒を奪い取れば、弾幕の数も半減。なにより重力波砲がこちらに向けられなくなる。


『やるぞ! リーノ、お前は集中力を高めろ。今から俺たちが重力波砲を撃たせてやる。発射と同時にお前にコントロールを戻すから、イズライトで重力の弾を躱して、巨人の腕を粒子砲で撃て!』


「それって無茶ぶりが過ぎませんか?」


『やれなければ、お前の大事なこのオモチャはぶっ壊れるし、下手したら俺らは3人揃ってあの世行きだ。気合い入るだろ?』


 ラリーはリーノにカツを入れる。


「そうっすね。目が覚めた思いです」


 ブラストライカーのパワーゲージが上昇する。


『待って、ラリー』


『なんだよ、これからだってところで邪魔すんなよソア』


「ラリーさん、あれ」


 何が起きたのか、金の砲艦カルガントォーバルが、巨人の腕から離れた。


『どうなってんだ。巨人が慌てて捕まえようとしていやがる』


『ラリー、巨人の邪魔をするぞ』


『お、おお、そうだなカート』


 危険を冒すことなく、重力波砲を奪い取るチャンスが舞い降りた。


『はぁ~い、カート。やっほー』


『……、ヘレーナ=エデルート』


『もう、まだフルネームのままなの? こっちの事情は話したんだし、あなた達の敵でないと分かってくれたんじゃあなかったの?』


『ヴァン=アザルドの件に関してはな。だが本当に俺たちの敵にならない保証はどこにもない』


 ヘレンからの通信がどこから発信されているのかは、ソアが突きとめてくれた。


『そうよ。私たちがこの船を奪ったの』


「えっ? それって、どうやって? ヘレンさんの所にいるのって、脳筋2人と、コピー能力者であるリリアのお姉さんだけですよね」


 ヘレンがシステムに強くとも、巨大な船をプログラムだけで完全に乗っ取るなんて、この短時間でできるはずがない。


『お前、まさかオリビエの力を?』


「えっ? ミラージュさんの力? イズライトですか?」


 別段、チーム内でも誰も話題にしないから、オリビエのイズライトについては知らない者も少なくない。


『普通に考えたら分かるだろう。たった6歳でワンボックで機械技術を学んで、たった2年で親方から現場仕事を任されるなんて、有り得るわけがないだろう』


「つまり? どういう事ですかラリーさん」


『オリビエは能力で、回路の電気の流れを見ることができるんだよ』


 そのイズライト能力を、ソニアにコピーされたのは間違いない。


「なんかもうソニアルさんって、なんでもアリですね」


 そんな異色な一派に、古代遺産の中でも異色な砲艦を渡していいものか?


 という問題は後回しにして、これで戦力の均衡は崩された。


『作戦変更だ』


 ラリー達がラグランデスボロトの気を引いている間に、ガルガントォーバルの加わったベルトリカ率いる船団が、イグニスグランベルテを沈黙させる。


 無人モビールが片付けば、巨人も攻略出来る。


 狙いは間違いないはずだが、ガルガントォーバルの動きが悪くて、重力波砲を撃つ態勢にもっていけない。


『おい、ヘレンお前、そのへたくそっ振りはなんなんだ』


『しょ、しょうがないでしょ、ミスター! モビールと船が、こんなに勝手が違うなんて、思って、なかったのよぉ~』


 無人モビールに囲まれる砲艦を、ランベルト号が助け。


 イグニスグランベルテのミサイルに追い回されるガルガントォーバルを、ブルーティクス・バトルシップキャリーのミサイルが救う。


 ベルトリカとグランテが、砲撃ポイントを確保してくれても、ヘレンたちが大きく回り込んでいる間に、また敵だらけになったポイントに突っ込んでしまう。


『このままじゃあ埒があかないな。先に巨人をやっつけるか』


『待ってラリー』


『……誰だよ。っていやその声は、ミニソアの……』


 一度は耳にしていても、まだ聞き慣れない声に気付けなかったが。


『ソアか! どうした慌てて』


 説明を求めるラリーが見たのは金色の砲艦が、空間を揺るがす巨砲を撃ち放つ姿だった。

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