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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion01 白の章
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Episode14 「厄介な奴らだぜ!」



 ラリーとソアの前に現れたのは、探し求める今一番会いたくなかった男。


「まだ関わっていたのか?」


「アフターケアってヤツだ」


 ベック=エデルートの仲間が何かを掘っていることを突き止めてやってきた。


 お宝まではあと僅かな距離にいる。


 予測ではもうそろそろ掘り起こす頃のはず、到着の直前で男は立ち塞がった。


「ヴァン=アザルド、お前の顔も見飽きたし、そろそろ死んでくれないか?」


「俺の顔を見飽きるなんて事は有り得んだろ?」


 からかうように顔の形を変える男に銃弾が放たれる。


「あっ、ぶねぇな、クソガキ!?」


 ラリーの後ろから飛んできた弾をギリギリのところで回避する。


「ちっ、造りもんは俺の能力に反応しないか」


 相手の末端神経を操作するヴァンの能力に、高度な制御装置を積んだロボットは相性が悪い。


 ソアやリリアのロボットはカートでも乗っ取る事が出来ない。


 ラリーにとってはこの上ない強い味方だが。


「きゃあ!?」


 側にいるラリーを操る事は出来るヴァンは、先ずソアロボットを使い物にならないようにと襲わせた。


「らしくねぇな。いつものいけ好かない余裕っぷりはどうしたよ」


「それこそこっちのセリフだぜ英雄様よ」


 インパクトナックルで加速されたパンチの連続攻撃を、ソアはロボットの自動回避機能に任せるしかないのだが、一流のコスモ・テイカーの動きには付いていけない。


「ちょっとラリー、私のロボットを壊さないでよ」


「一応逆らっちゃあいるんだがな、ヤローの力がこの前の比じゃあねぇ」


 前回よりも強い力で操られては逆らおうにも上手くいかない。


 しかしこちらにも全く対策をしてない訳ではない。


「おいよ小僧、なにしやがった。お前の気配が読めなくなったぞ?」


「いつまでも同じ相手の対策ができないと思ってるのか?」


 ここは魔法の使えるファンタジー世界ではない。


 イズライトが人智を超えた力だとしても、そこには物理原理を逸脱した超常現象は存在しない。


「お前の能力の有効半径は20メートル。相手の肌に波が伝わりさえすれば神経を乗っ取れる」


 口で言うほど簡単ではないが、ヴァンの能力を遮断する装置をソアとオリビエが作ってくれた。


 ただそれも万全ではない。


 ヴァンの能力は奴に近いほど強くなる。


 近付けるのはある一定の距離までなのだ。


「ガキんちょ頼むぞ。俺は近接戦専門だからな」


「ホンキで言ってんの?」


 ロボットは完全武装で犯罪者の前に立ち、担いだミサイルランチャーが火を噴く。


「お前、ここがどこか分かってんのか!?」


 慌てるラリーだが、飛んでいったのは爆発物ではない。


「そんな網にかかるかよ」


 目の前で絶妙に開いた網は男が持つ単分子カッターが切り裂く。


「くそ、いいもん持ってやがんな。遠慮なく攻めてくれ、殺しちまってもいいからな」


「子供になんて命令すんのよ。ろくな大人じゃあないわね」


 ランチャーを投げ捨てて、少女はペンシルサイズの小型ミサイルを束にして投げ飛ばした。






 バシェット=バンドールは膝をついた。


 力任せに打ち落とした鎌を短い小太刀を持つ右腕一本で受け止め、跳ね上げて斬りつけた。


 異能力全開でコンクリートの床に大穴も開けられる一撃を、カートはどうやって止めたのか?


 その答えに行き着くどころか、考える間もないままにバシェットは意識を失った。


「お前は自分の能力に溺れた。俺は自分の限界を知り、信頼できる仲間からより強い力を貰った。他人を信じられない奴に負けはしない」


 他に向かってくる相手もなく、調べる価値もない施設を後に、カートは一度地上に出た。


「ティンク、リーノ達はヘレンと合流できたのか?」


『うん、ちゃんと会えたよ。警察機構のモビールが連れて行ってくれた』


 囮行動をしていたリーノ達はモビールに戻り、そのシュピナーグの端末を使って、ヘレンはガテン中の電脳空間を探索している。


「まだベックの居所は掴めていないのか?」


『えっ、ああカート?』


 カートからの通信を受け、ヘレンは一息つく。


『そうね、あっちこっちに痕跡残して、私の邪魔してくれちゃってるけど、そんなの時間の問題だって証明してやるわ。それでそっちはどうなの、何か掴めた?』


 このまま情報収集を続けてはもらうが、どれほどの時間が残されているかが分からない。


 そう判断したカートは感じていた疑問の対応のため、次の手を打つ。


「リーノ、そっちは任せる」


『えっ、ちょっと何のことです?』


 通信は終了。


 後の段取りをベルトリカのティンクに送り、カートはモビールを発進させる。


 現地人に見られないように大気圏を一気に抜け、ベルトリカの駐留するエリアとは反対方向に飛ぶ。


「もう目を覚ましたのか……」


 背後から急接近してくる機体。


 夜叉丸のように二本のマニピュレーターを持ったモビールは、外部スピーカーからあの大男の声を垂れ流す。


「バシェット=バンドールの機体か、やつらしい野蛮なデザインだ」


 夜叉丸とさほど違わないのだが、こちらに対してあちらの腕は、中心にあるコクピットコアの倍以上の体積で、搭乗者同様に機動力は高くない、突進力を持たせるための大きなバーニアが特徴的。


「質の悪いスピーカーだな。それともあいつの声が汚いせいか」


 怒鳴り声は恐らく罵詈雑言なのだろうが、何一つ聞き取る事が出来ない。


 一頻ひとしきりがなり立てた後、バシェットのモビールは全開でバーニアを噴かして猛突進をしてくる。


 躱すのは簡単だが、時間を取られるわけにはいかない。


 互いのモビールが最接近したタイミングで、バシェットはマニピュレーターに持たせた、鎖につながれた鉄球を投げてくる。


 鉄球を避けた刹那に刀で斬りつけ、見事に鎖を断ち切る。


 と同時に敵機を観察し、今度は夜叉丸の方から敵を追いかけて横に並ぶ。


「端末はコクピットの下にあるか」


 加速に特化した機体にあっさり追い付き、外部から信号を送る端子を見つけて接続ジャックを繋ぐ。


「俺の能力を知らんわけではないだろうに」


 敵のコントロールを奪い、これ以上追ってこれないように移動力を完全に奪い、惑星の周回軌道に乗せて放置する。


 カートは遠回りをしてベルトリカへと戻る。


 静まりかえる船内。


 ティンクの出迎えもなく、カートは次の準備を開始する。






 イズライトを封じられても、ヴァン=アザルドのクリミナルファイターとしての力は、決して侮れるものではない。


 近接戦闘を得意とするラリーも銃の類は持っている。


 ペンシルミサイル、ホーミングダーツ、オリヅルビット等を駆使するソアよりも、相手にとっては厄介な攻撃を繰り出すが、事も無げに避けて反撃をしてくる。


「ちょっと、女の子になんてことするのよ」


 ラリーもヴァン同様無傷だが、ソアロボットはそうはいかない。


 黄色いドレスは泥だらけ、裂け目だらけで、地肌も見えている。


 人間そっくりに作っているため、やや卑猥な姿をしているが、機能の低下は見られない。


 とは言えソアの性格を書き写したAIは、さらけ出された肌を気にしながら、怒りをぶちまける。


「ロリコンじゃあないんだ。好きで引ん剥いてんじゃあねぇぜ」


 手持ちの武器を全発射するも、敵にダメージを与える事は出来ない。


「やっぱりお前の狙いは時間稼ぎかよ」


「へぇ、よく見抜いたな。俺はそこそこホンキで殺そうと考えてんだがな」


「奇遇だな。俺はいつだってお前を殺してぇんだよ」


 ヴァンの背中の向こうに何があるのかは分からないが、地上との連絡を絶たれてからもそれなりに時間が過ぎている。


 ラリーは予定より早いが、新装備を試すなら今だと判断してセーフティーを解除した。

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