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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion05 金の章
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Episode19 「これが本当の本当の最後だ!」



 イズライトは1人に対して1つ。


 リーノのそれもまた、ただの1つの能力に過ぎない。


「未来視だと!? そんな反則ギリギリアウトな能力持ちが、思考加速なんて、そっちも反則ギリギリだってのに! どうしてそのガキは使える!!」


 ヴァン=アザルドは勘違いをしている。


 リーノの能力は未来視だけだ。思考加速はその副産物に過ぎない。


 イズライトが高速の物がゆっくり動いて見えると思っていた頃から、リーノは未来視を使っていた。


 未来視の能力は現時点より力の大きさの分だけ、先の幻影を眼球に浮かべるモノだった。


 当然、リーノの思考も能力の分だけ先に飛ばされるのだが、現在視と未来視のズレを戻すために伸ばされた思考が、新人テイカーが弾丸を避けるなんて芸当を可能にさせた。


 この時のリーノ達には、この真実にたどり着くことはできなかった。


「ウチの新人はスペシャルなんだよ!」


 ラリーのイズライトは、能力者達の脳量子を膨れ上がらせ、銀河中に拡散するモノ。


 正直現役テイカーにとっては、ハズレを引いたようなモノだ。


 だが能力者10人前の脳量子を発するラリーには、どんな局面にも即対応できるタフな心の余裕が生まれた。それは伝説の勇者の名に恥じない大きな強みとなった。


「この部屋に入ってから、頭の中がスッキリしたのはなんだろう? って思ってたが、ヴァン=アザルド、テメぇの能力を跳ね返らせるようになって分かったぜ。いまの俺には干渉系の能力は効かないようだ」


 イズライトが2人には意味を成さなくなったヴァン=アザルドは、勢いあるテイカー達を相手に体力の回復をしに、玉座に戻ることができない。


「……遊びはそこまでだ。ガキ共」


 負け惜しみのようなセリフを吐いたのは、窮地のヴァン=アザルドではない。


「ラオ=センサオ、お前もいいかげん諦めの悪いヤツだな。って、なにしてんだよ!?」


 ラリーは思わず笑って噴き出した。


 ヴァン=アザルドに裏切られ、壁のパネルを開いて中を覗き込んでいたラオ=センサオが、壁から顔だけを出して動けなくなっている。


「……どうやって顔のサイズの穴から入ったんだよ? フウマの諜報員ってのはなんでもありだな」


 顔だけ男はラリーを無視して、ヴァン=アザルドのみにメッセージを送る。


「なっ! バカ言え! 先走ったのはお前の方だろ」


「急になに言い出したぁ~!?、こいつ気でも狂ったか!」


 ヴァン=アザルドはラリー達に背を向けて、パネル顔男に詰め寄る。


 何に焦っているのか、ラオ=センサオの顔面を何度も何度も殴り続ける。


「ヴァン=アザルド、気が狂ったのはお前の方だろう……」


「ラリー……」


「カート? やっと回復したのかよ」


「いや、回復はとっくに。俺はずっとダイヴしてたからな。こいつらの力を借りて」


「こいつら? って、ソアのおもちゃじゃあないか」


 リーノをラリーたちの元に送り出したことで、仕事を終えたみんなは脱出すると言っていた。


「うわっ、ミニじゃあないですか! って三体だけ?」


 リーノも気になって近付いてきた。


『やぁ、リーノ』


「えっと、その声はオリビエさんですか?」


『アタリ! 声が高いから気付かれないかと思ったけど』


 ミニ・ソアの中から聞こえる声に、遠隔なのかと聞いたところ。


『私たちの本体はもう宇宙に出たけど、私とオリビエとティンクの意識の一部を、ソアラの能力でミニ・ソアに移してもらったのよ』


 カートが発令所までたどり着けば、防御システムに潜り込んで、プログラムを破壊できるかもと期待して用意していた。


『フラン、もう戻ってもいいんだよねぇ』


『ティンクぅ、まだ中にいるの? カートはとっくに戻ってきてるわよ』


『やっぱりそうだったんだ! どこにもいないから、もういいのかなって思ってたよ』


 カートの作業は終わり、その結果。


「おい、ラオ! やめろおい!! 聞いてるのかジジィ!?」


 ラリーたちが内輪ノリをしている間に、反対側の壁際では大きな騒動が起きていた。


「ラオのヤロー、ヴァン=アザルドにボコ殴りにされてたのに、顔色1つ変えねぇのはもしかしてと思ったら、今度は逆に壁からケーブルを出して、オッサンを持ち上げられていやがる」


『ラリー、違うよ。あれはケーブルに見えるけど、立派なフレキシブルアームだよ。このイベントは予定されていたモノじゃあないかな?』


「オリビエお前、何かエッチな事考えているだろ」


『なっ!?』


 ラオ=センサオと同じように、壁から顔だけを出すヴァン=アザルド。


 ミニ・ソア(オリビエ)にポコポコされながら、ラリーはヴァン=アザルドの成れの果てを拝む。


「それ、動かねぇけど生きてるのか?」


「ラリーさん、これ、生きてますよ。温かい」


「お前、そんなのをよく触れるなリーノ」


 壁から露出する顔は地肌に見えるが、殴った手が傷つくほど硬質化している。


「生きてるんだとしたら、放って置いてはおけないか」


「いや、今すぐ脱出するぞ」


「なんだよカート、言いたい事はまとめて言ってくれ」


「急いで脱出と言ってるのは俺じゃあない」


 とカートが向けたのはミニ・ソアの1体。


『……あたしかぁ!』


「その声はティンクだな。一体何を見たんだ?」


『カート、私はこっちよ。ラリー、話は私から』


「おお、ソアか。見た目じゃあ、まったく判別できないな』


『うん、この船はね。完成させるのには、まだ最後に重要なパーツがあるのよ』


「そのパーツってのが、人間って事か」


『それはちょっと違う。必要なのはこの船を生み出したのと、同じ文明遺伝子を持った人間』


 ラリーの目の前に3体のミニ・ソアがふわふわ浮いている。


「オリビエよ、それじゃあ、あいつは最初っから、ああなる運命だったってことか?」


『ちがうわ。ラオ=センサオはちゃんとそこまで考えて、対処していたの』


「次はソアか。お前ら順番に喋ってきてないで、さっさと要点を言えよ』


「それどころじゃあない。さっさと行くぞ」


 カートはまだ回復しきらないソニアに手を貸してやり、一番に廊下に飛び出していった。


「話は後だ、リーノ! リリアはお前が責任持ってって、どうしたんだ?」


「いえ、リリアが元の姿に戻ったもんで、何を着せたらいいモノかと……」


 左手で抱えて、右手で妖精族の裸を隠す姿は見るからに変質者、リーノにハンカチを渡すラリーはカートを追って行く。


 格納庫までの道程で襲われる事はなかったが、全員がモビールに盛り込む寸前に、大きなアラーム音が鳴り響き、ガードロボットとガーディアンが襲ってきた。


「リーノ! お前からだ、行け!!」


 他の仲間はリーノが発令所に向かった時点で脱出している。


 ここに残っているのはモビールの搭乗員3人と妖精族の姉妹、それと。


 リーノはリリアと、ラリーが背負ってきたエリザも乗せて、シュピナーグを金色の船から飛び出させた。


 カートも戦うことなく、ソニアを夜叉丸内に膝つかせて脱出した。


「行くぞ、ミニ達」


 ロボットの格納庫進入を押さえてくれていたミニ・ソアを呼んで、ラリーはガードロボットに塞がれた脱出口をバルカンで蹴散らして、宇宙に飛び出た。


 外に出ると銀河評議会警察機構軍は戦力を結集して、イグニスグランベルテを包囲して、攻撃を続けている。


「次元断層なしでも鉄壁だな。金ピカは伊達じゃあねぇ」


 無傷に見える金色の船の無人モビールが、星の輝きに匹敵する数で飛び回り、主砲、副砲が無尽蔵に段幕を張りまくっている。


「それでソア! ラオ=センサオが施した対応策ってのは、なんだったんだ?」


『あいつは取り込む対象を、あなたにしていたのよ』


「なんだとぉ!? って、それなのに俺は無事で、あいつは結局取り込まれた?」


 必要な脳量子を生み出した後は、邪魔にしかならないラリーを排除と同時に、役に立たせようと一石二鳥を狙っていたラオ=センサオだったが、ギリギリで裏切られたヴァン=アザルドに設定を変えた。


『で、その設定の変更が完了したところで、彼は先にイグニスグランベルテに取り込まれてしまったというわけ』


 相手がしようとしていることをウェヴの中で勘付いて、ティンクがカートを手伝って逆転させた。


『そうなるように指示したのはフランだけどねぇ』


『ティンク、それは言わなくていいって、言っておいたでしょ』


 命の恩人のミニ・ソア達だが人目では見分けが付かず、狭いコクピット内では誰が喋っているかも分からない中、ラリーは迷う事なく真ん中のミニの頭を撫でた。


「けど、あの船が必要だったのはラオのジジィだったんだろ?」


『実際にはイズライト能力者なら誰でもよかったのよ』


 ミニ・ソアたちはラリーに撫でてもらいたがって、場所の奪い合いを始める。


「よ、よし! 急いで戻るぞ」


 戦場から少し離れた場所に、ギャレット海賊団のランベルト号と、ジャッジメントオールのブルーティクス。


 その向こうに青と白の船ベルトリカが、ラリー達の帰還を待っている。

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