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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion05 金の章
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Episode14 「ジジィども! 張り切りすぎなんだよ!?」



「おいカート、しっかりしろって!」


 烏丸一本でラリーを追い込むカート、孔雀丸を使わず、全力で立ち向かってくる。


「くそ!? フウマの諜報員ってのは、どいつもこいつも!」


 本気ではないカート1人なら相手ではないが、ラオの動きは彼の一族でも最強クラス、厄介この上ない。


 しかし所々でカートは気合いで、ラオの邪魔に入り、時々ラリーの攻撃がヒットする事もあった。


「おいヴァン=アザルド! 自信満々にほざいた奥の手が、この程度なのか!?」


「おいおい、こいつらが可愛げないガキ共だってのは、お前もよく知ってるだろ」


 ヴァン=アザルドの能力が及ぶのは、対象の末端神経。


 末端操作程度ならば、ヴァン=アザルドは自分も動き回りながら、能力を行使する事ができる。


「人間一人分の、首から下の神経を支配するんだ。100%なんて保証できるかよ。お前にも実力があるんなら、自分でどうにかしやがれ」


 カートが一瞬踏ん張ってくれても、ラオの戦闘力はラリーを全力でい続けさせる。


「い、一度、一呼吸を、したい、んだけどな!」


 ラリーの一撃がラオの背中にヒットした。


「おい、ちょっと待て、カート!? いいから、一呼吸だけ、一呼吸だけ、な!」


 その一呼吸を吐きたかったのはカートも同じ。


「ほぉ……」


 だがそのカートの一呼吸でラオは復帰、ラリーはチアノーゼを発症しているが、止まったら殺られる。


「行って、エンジェル・ビット!」


 ラオが後ろに下がり、ラリーは大きく息を吐き出した。


「くはぁ~~~~~、生き返ったぁ!」


 カートも動きを止め、ラリーは大きく深呼吸した。


「おお、還ってきたかエリザ」


「ただいま父さん」


「そうだよな。お前は俺には逆らえないもんな! ……なんてな」


 ヴァン=アザルドはカートの操作を中断し、イズライトをエリザに向けた。


「無駄だよ、父さん。あなたの能力はエンジェルが遮断してくれる。それに私の深層に埋め込まれた呪縛も、ソアラ=ブロンクスが取り払ってくれた」


「へぇ、あの小娘にそんな力があったなんてな」


 カートも掛かっていた深層操作、より深いエリザのそれだったが、これでまた1つヴァン=アザルドを攻略できた。


「はい、これ。カートも羽を展開して」


「リリア、俺はこいつにそんな機能があるとは、知らされていなかったが?」


「オリビエでしょ。なんでかなんて知らないわよ」


 リリアはエンジェル・ビットと同じ機能を持つ、脳波遮断機能の付いたロボットの中。ビットが精神波を遮断する事は、エリザに教えてもらった。


 この発令所にヴァン=アザルドがいる事を知って、入室を躊躇っていたエリザと合流して、ソアラに言われた暗示突破術を彼女に伝えたら、一緒に突入してくれた。


「本当に大丈夫そうだね、エリザ」


「いつまでサボってるの! こっちを手伝いなさい」


「やっぱりお姉ちゃん1人じゃあ辛いみたいね」


 ラオを1人で抑えてくれるソニアからお声が掛かり、リリアは姉の元へ。


「お姉ちゃんはヴァン=アザルド対策してないんだから、そっちを注意してよね」


「あら、言ってなかった? 私はあの男の能力で一度痛い目を見てるわ。その時にコピーしたのよ。コピー能力を完璧に使いこなせるようになった今、怖い存在ではないわ」


 今や並の諜報員では、相手にならないソニアだが、ラオ相手に1人は厳しい。


 リリアが援護しようと走り出したところで、ラオ=センサオはヴァン=アザルドのいるところまで下がった。


「おっとっと」


「そんで、リリアはソアラに何を聞かされたんだ?」


 立ち止まるリリアにラリーは並ぶ。


「ラリー、お疲れ様。さっき、エリザが口にしたまんまよ。ただのブラフだけどね」


「なに?」


「深層の暗示なんて、それを上書きする情報を埋め込んでやれば、簡単に溶けるって」


「あいつらしいな。グッドだ!」


「なに? 私の事? 見直したんなら、褒めてくれてもいいわよ」


「ああ、本当に助かったぜ。ありがとうなエリザ」


 完全なる大逆転。ラスボス共を追いつめたラリーに異常が起こる。


「今さらジタバタすんなよ。焦ってるのか? らしくないぜオッサン!」


 ヴァン=アザルドのイズライトが、自分に向けられた実感を、ラリーは気合いを込めて押し返す。


「ちっ、殺せるウチに殺しておくべきだったぜ。お前の親父共が邪魔さえしなければ、あのステーション落下のどさくさに殺れる機会があったのによ」


「そうかよ。やっぱり親父達は殺られちまったんだな」


「お前らの船も、あの頃はまだまだ穴だらけだったからな。しかもあの時のお前とカートは身動きもとれないくらい疲弊してたんだろ? オンボロ船が沈む瞬間のモーブがラルへの通信でほざいてたぜ。あいつは俺の目の前で死んじまってたがな」


 ベルトリカが逃げる時間を稼いでくれた。ガルラゲルタに無理をさせてでも。


「感謝するよ、親父、モーブ……」


 その仇敵をここまで追いつめた。


 しかしまだ油断はできない。ヴァン=アザルドは息を引き取った後に、細胞を分析し、本人と確認した上でトドメを刺して、心配が停止した後の遺体を焼き尽くすまで、安心できない相手だ。


「なぁに、相手は2人だし、細胞検査キットも持ってきた。ここでトドメを刺してやる」


「おいおい、俺はゾンビじゃあないぜ。やばくなったら逃げ出すだけさ」


「逃がさねぇよ!」


 ラリーとエリザはヴァン=アザルドに、カートとフェアリア姉妹はラオに向かって走り出す。






 乾いたパーンという音が響いた。


「いってぇ~~~~~!?」


「やっと起きた」


「ちょっとオリビエさん。ひどいじゃあないですか」


「寝ぼすけなリーノが悪いよ」


 真っ赤になった左の頬を抑えるリーノに、真っ赤な右手をヒラヒラさせて痛みを誤魔化すオリビエ。


「だ、大丈夫ですか?」


「今のはオリビエの自業自得ね。……どうかした?」


「ソアラ=ブロンクスさん? なんでこんな所に? いや、起きていて大丈夫なんですか?」


「おーい、リーノぉ!」


「あっ、はい、なんですかティンクさん」


 ソアラの事が気になるが、ティンクに呼ばれて、なんとなく夢を思い出す。


「そうでした! す、直ぐ行くっす」


 ここで覚醒する前に、夢でティンクに言われた事を思い出す。


「それじゃあ私も行くね。だから2人は……」


「ベルトリカへ戻れ。って言うんでしょ。なんだか私、全然活躍できなかったね」


「最初からボクとソアラは役割が違う。でもちゃんと役に立てたでしょ」


「うん、2人ともスゴイよね。私ももう一踏ん張りして、みんなに褒めてもらうんだ」


 ティンクが生き残れたのはその強い思い。大好きな仲間達と離れたくない。認められたい、褒められたい。その為に今も一生懸命。


「行きましょう、ティンクさん」


 捕まってからの事情を知らないリーノに、ティンクは電脳空間で現状を教えた。


 そんなに時間がなかったので伝えられたのは、イグニスグランベルテに捕まっている事と、ベルトリカがギャレット海賊団とブルーティクスの力を借りて、リーノを助けに来た事。この2点だけ。


「えっと、本当にティンクさんでいいんですよね。なんかオリビエさんも少し、いやかなり変わってたんですけど」


「正真正銘のティンクだよ。オリビエもすっごく可愛くてカッコよくなったよね」


 ティンクはリーノの前にいるロボットの中に、フェラーファ人サイズの妖精族型の素体があって、その中にデータを移した事を説明した。


「そしてあのソアラさんそっくりな女性も、コールドスリープされた本人の記憶を転写したロボットだと」


 宇宙一のロボット工学者は、すごい事をやり遂げた。……のではなく。


「それがソアラのイズライトだからね。ソアのロボットも同時に動かせるんだよ。スゴイよね」


「そんで、俺がソアだと思っていたのは、ベルトリカ前リーダーのフランソアさん。なんかもう頭の整理が追いつかねぇっす」


 更にリーノがクララリカ=クニングスと認識していた警察官は、ヴァン=アザルドの間者だと告げると、こちらは意外にも冷静に話を聞いてくれた。


「そうか、ヴァン=アザルドに育てられた工作員だったのか。そいつはたまげたっすね」


「本当にそう思ってるの?」


「はは、頭が追いつかねぇっす」


「そっか、もうちょっと詳しく教えてあげたいけど、着いたよ」


 妖精族が飛んで入る部屋へ、まだ全容を把握できていない少年は歩いて入っていく。

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