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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion05 金の章
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Episode13 「おい小僧、早く起きねぇか!!」



 ラリーは徐々に、ヴァン=アザルドを追い込んでいく。


「なんなんだよ、その気持ち悪い武器わよ」


「喜べよおっさん。お前のためにウチのメカニックが腕によりを掛けて、作ってくれたんだぜ」


 オリビエの自信作、インパクトナックルの最新機能。


「くそ! 避けられねぇ!」


 ヴァン=アザルドは明らかにラリーの攻撃を嫌がっている。


「いくぜ! トゥォオー・ケン(闘拳)・ナックル!!」


 ラリーが込めた気合いの分だけプラズマが走り、巨大な拳となってぶん殴る。


 踏み込む力加減で、ブロークンアンクルがラリーの重心を変えてくれる。


「そのステップで、なんで打点が変えられるんだよ」


 この足使いを体に染み込ませるのに、どれだけ苦労したことか。


 そう、カートと競いながらも、装備の性能確認をするのではなく、オリビエと何度も調整した踏み込み加減の設定。


 可視化したプラズマの拳だが、拳の軌道を読まれると簡単に打開されてしまう。


 重心を移すことで敵の感覚を狂わせ、ヴァン=アザルドのイズライト対策にもなる。


「めんどくせぇぞ、クソガキ!」


「あちらは楽しい展開になっているようだな」


 余裕を見せるのは、ラリーとヴァン=アザルドの決闘を眺めながら、カートを軽くいなしている青年。


「ラオ=センサオ、流石は元老。動きに全く無駄がない」


 氣の扱いにも長けていて、構えた刀に澱みもない。


「俺の足りない実力での、準備運動を終わりにしよう」


 烏丸に気合いを込める。氣の扱いはラリーよりも手慣れているが、そもそもの気合が違う相棒には敵わなくても、練り込む器用さはカートが上。


「……オーラブレード」


 誰にも聞こえない程度の囁きに応えて、刀身が光を放つ。


「うん? フウマの術ではないようだな」


 ラリーはナックルを打つ度に気合いを込めて叫んでいるが、カートは静かに心の中の刃を研ぎ澄まし、プラズマの刃を飛ばす。


「これは!」


 ラオ=センサオの表情が変わった。


 離れたところから、カートの斬撃の鋭さを持つ闘氣の刃が、連続で襲いかかる。


「俺の法術を上回る力を持つか!? 俺の知る古代文明の技術を、全て注ぎ込んだフウマを上回る力など……」


 遊んでいる余裕のなくなったラオ=センサオだが、手が塞がれたわけではない。


 カートは一気に勝負を決めようと、孔雀丸を抜いた。


 機能はリリアやティンクのエンジェルと同じ、長刀はいくつものナイフとなって自在に飛び回る。


「シャドー・フェザー、あいつを斬り刻め」


 出し惜しみなく、カートは持てる全てを結集する。






 ソア達は、リーノの覚醒に手こずっていた。


「もう! なんで起きないのよ、この子は!?」


「落ち着いてお姉ちゃん。リーノが悪い訳じゃあないよ」


 カプセルは可能な限りばらして、リーノの脳波も測定した。


 妙なトラップがないかも確認して、スリープモードを念のために、プログラム設定を変更してセーフティーを強化した。


 システムとリーノを繋いでいた気体の組成の分析も終わった。


 カプセルの電源を切って、蓋を開けても問題ないとソアラが断言した。


「思いっきり引っぱたいてみる?」


「オリビエ、あなたって意外と大胆なのね」


「いつも大胆なのは、お姉ちゃんの方じゃない」


「はいはい、姉妹喧嘩は後回し、なにか見落としがないか、確かめるわよ」


 リーノの呼吸は穏やかで、顔色も良好。


「理由と言われてもねぇ……。うわっ! ビックリした」


『フラン、フラン、聞こえる?』


「あなた、ティンクなの? えっ、なんで通信ができるの?」


『そんなの後にして! 急いで急いで、緊急事態なの!』


 ソアは急いでのティンクのお願いを聞いて、大慌てで走り出した。


「なんでヘレンまで付いてくるのよ」


「あら、私もいる方がいいように聞こえたけど?」


「聞き耳なんて立ててるんじゃあないわよ。……頼りにしてるわよ、お願いね」


 先ずはこの廊下にあふれるガードロボットと、いまやお馴染みになりつつあるガーディアンを排除しないといけない。


こっち(戦闘)も頼むわよ」


「あなたにお願いされるのも、悪くないわね。カートのヤツはとことん冷たいけどさ」


「なんで最初から本当の事を言って、協力してもらわなかったの?」


 仲間を想っての行動なら、カートはちゃんと協力してくれたはず。


「あいつが、未だにフウマの監視を受けているの、知ってるでしょ?」


「それはあんたもでしょ」


「そこまで分かってるんなら、言うまでもないでしょ。フウマの監視の目が二つも付いたら、行動がしにくくてしょうがないじゃない」


「それでも、本当の事を話すくらいは、できていたでしょ」


「本当に意地の悪い。私が昔馴染みのままなら、カートはきっと手を貸してくれるでしょうね」


 狙っているのが古代遺産と知られれば、フウマの干渉は強くなる。


「私如きが煙にまける程度の監視員よ。カートまでフウマの目を逃れたら、あなた達の立場が悪くなるわ」


「それじゃあ、あなたはこれからも、何を考えているか分からない悪者。ってことでいいのね」


「はぁあ、自分から選んだ道だけど、正面から言われるとムカつくわね。しょうがないけど」


 2人はガードロボットとガーディアンを蹴散らしながら、会話を続けてティンクのいるブロックに到着する。


「ティンク、あなたラリーの所に行ってって言ったのに、なに勝手に、こんな所に来てるのよ」


「なんかね、声がしたんだよ。最初は気のせいかと思ったんだけど、私の高感度センサーにビビーっとね」


 その反応を追いかけてきたここで、見つけたというのが。


「本当にリーノのようね」


 端末から漏れるリーノの反応を感知して、やって来たティンクは画面の中に少年を発見した。


 それで急いで、ソア達がいた動力室に連絡してきたのだ。


「なるほど。こういう事なら、ここから通信ができても不思議はないわね」


「ベルトリカの頭脳の私だったから、気付けたんだからね。褒めてよね」


「はいはい、すごいすごい」


「もぉ! フランもラリーも、もっと私を甘やかしてよ」


「それで、どこまで潜れたの?」


「うん、リーノともお話しできたよ。けど、ここからどうやったら出られるかは、分からないんだって」


 つまりラオ=センサオはリーノの神経と体を引き離して、奪還の障害とした。あの男の言う「できるなら」の真意はこの事だろう。


「あまり時間もないし、ヘレン」


「ええ、私は数え切れないほど設置された、防衛プログラムの相手をしてあげるわ」


 お願いするまでもなく、ヘレンが備え付けのキーボードを叩いている。


 防御警戒をヘレンに任せて、ソアは最深部を探る。


「ティンク、リーノの体の所に言って! 向こうの2人と話ができるようにしてちょうだい」


「りょうか~い」


「今度は寄り道しないでね」


「……ねぇ」


「なに? 言いたい事は手短にね」


 不機嫌そうなティンクの顔を見て、ピンッとくるソアは敢えて聞いてみる。


「もう! もういいよ」


「ウソウソ、ウソよ。けど全員で一生懸命頑張ってるんだから、褒められるのはティンクだけじゃあなく、みんなでパーティーをしましょ」


「ホント? 約束だよ」


 ティンクは気持ちの成長を遂げて、人間の大人と同じようなフェニーナになった。


 その後、体を失ってベルトリカのメインシステムに取り込まれてから、幼児退行してしまっているが、頼れるメンバーに違いはない。


 だから、少しくらいは。


「頑張ってくれて、ありがとうね」


「えっ、なに? なんか言った?」


「いいから、早く行って、あなたが向こうに着くくらいには目処を立てておくわ」


「はぁ~い」


 ソアは元妖精族が飛んでいくのを見送り、空中に浮かぶキーボードを無心で叩きだした。

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