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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion05 金の章
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Episode11 「追い込んだのは俺たちだよな?」



「ようやく会えたな。ヴァン=アザルド」


「本当にしつこいガキだぜ」


「しつこいのがイヤじゃあなさそうなのが、残念だよ」


 ラリー達が目指したのは、この巨大船の発令所。


 ここにリーノの姿はないが、同じくらいに会いたかった犯罪者を見つけることができた。


「おい、ヴァン=アザルド! 本当にこいつらが必要なのか?」


「お前はラオ=センサオ、やっぱり生きてやがったか」


 フウマ族の元長老。


 イグニスグランベルテの情報をヴァン=アザルドに与えて探させた、自らがこの船の主と言って、ふんぞり返る謎の老人。


「はん! 俺たちはこの船に招かれたってことかよ」


「あぁ~あ、もうちょっと泳がせとこうと思っていたのによ。しゃーない、そろそろ本腰いれるかな」


 モニターに映し出されたのは、金色の船を墜とそうと襲いかかる、警察機構軍の生き残りだが、イグニスグランベルテの砲撃は厚く、主砲と副砲の射程の内には一隻たりとも近づけない。


「この船、機銃が何台あるんだ? モビールも近づけていないじゃないか」


「だろう! ふざけた船だよな。なぁ、フィゼラリー! バカみたいな火力でバカバカ撃って、いったいどんな構造してるんだよってな。おい小僧、こんなところでノンビリしている場合じゃあないぞ」


 モニターは金色の船の格納庫を映した。


「見ろ、ラリー。無人モビールだ。無人モビールが発進しているぞ」


 ミリーシャが指さしたのは、巨大スクリーンの左下端分割画面の格納庫の光景。


 ガーディアンが押し寄せて、自動工作機を抑えていたベルトリカのモビールや海賊の突入隊。ブルーティクスのボールズを宇宙に追い出してしまう。


「ミリシャ! 船に戻って、外をどうにかしてくれ」


 ベルトリカのモビール3機が、イグニスグランベルテの外壁にへばりついたのを、ラリーは見落としはしない。


「御曹司にも外へ出て欲しいが、どうやって報せるかな?」


 カートを迎えに行ったフォレスが、既に格納庫へ向かっている事を知らないラリーは、外の事をミリーシャに丸投げし、次の指示を出す。


「ダメだよ。ラリーを1人にするなんて」


「オリビエ。残ってもらったとしても、お前とソアラに、このオッサンらの相手は無理だからな」


「つまり私らは足手まとい、カートに早く来るように言って、戦力になるリリアとエリザを、ここへよこすのが任務って事ね」


「グッドだソアラ。それと早くリーノの寝ぼすけを叩き起こしてくれ」


「どうしてリーノが寝てる。って決めつけてるの?」


「オリビエ、もしヤツが寝ぼけてないのに、俺らに牙を剥いてくるようなら、ケツでも蹴り飛ばして、正気に戻してくれよ」


 ラリーは1人を残して、二人は走り去った。






 カートは烏丸を鞘に納めた。


「はぁ、はぁ、はぁ……、あ、あんたのその強さ。異常すぎない?」


 決着までは10分とかからなかった。


 ヘレンのスタミナでは、この10分が限界だった。


 ただそれだけで、どちらも大した怪我はしていない。


「お前が鈍ってしまっただけだ、ヘレーナ=エデルート」


「……ねぇ、なんでそんなに余所余所しいの? これまであなた達の後は追い回してたけど、そんなに邪魔してきた訳じゃあないでしょ。私たち」


「十分に俺たちの敵だっただろう。動けなくするぞ。運が良ければ死なないだろう」


「待った!」


 勝敗の見えた戦いに割って入ったのは、リリアーナに抱えられて追いついてきたソニアル=フェアリアだ。胸のアーティファクトの色は紫色をしている。


「……事情は分かったが、俺には関係のない話だ」


「ねぇ、この2人も一緒に連れて行っていいかな?」


「リリア、俺は言ったぞ。俺には関係ないと。お前がどうしたいかは、俺に聞く必要はない」


「なによ、その言い方!」


「リリア、これがカートだから」


「だって、ソア~」


 みんなと合流し、リーノの顔を見て気が抜けたリリアは、ロボットから飛び出してソアに抱きつく。


「あれれ? みんなここにいたんだ」


「ソアラ、オリビエ。よかった、ティンクから聞いてきてくれたんだね」


「ティンク? 会ってないよ」


「行き違えたのね。はぁ、まぁいいか。リーノを見つけたんだけど、私にはお手上げでさ」


 ソアに近づいたオリビエとソアラが膝をつく。


「ここは任せたぞ」


「待ってカート、フォレス達知らない?」


「宇宙に戻った。他のボールズに呼ばれてな」


「おお、ラリーの指示通りになったじゃん」


「他に何かあるかソアラ?」


「もう大丈夫よカート」


 返事が早いか? カートは全力で走り出し、残されたリリアも付いていこうとする。


「リリア、いいの? リーノの側にいないで」


「ソア達3人がいれば平気でしょ? それにエリザだって毒を抜いて、ラリーの所に行ったって言うじゃない。私もリーノにバカにされないように役立たなきゃ」


 ロボットに戻るリリアにソアラが聞いた。


「落とされた手と足は?」


「持ってきたけど」


「直ぐに繋いであげるから、慌てないでこっちにきて」


 船の中、ここまでは問題なかったけど、リリアーナの大きさで動くのにも、限界があるかもしれない。ソアラが直ぐと言ったなら、そんなに時間は取らないのだろう。


「大丈夫、カプセルを調べるのにも時間がかかる。その間にソアラは直せなかったら、リリアと二人罰ゲームね」


「オ、オリビエぇ~、オリビエが意地悪言うなんて……」


 ベルトリカ最後の良心。オリビエに冷たくされて、リリアはまたソアに抱きついた。


「それじゃあ私たちは先に行ってるね」


「そんなのダメに決まってるでしょ、お姉ちゃん達はカートに拒絶されているんだよ」


 リリアに「同行を許したのは私よ。勝手な事をしないで」と言われ、ソニアは地べたに腰を下ろした。


 ヘレンも息が整ったばかりで、もう少し休みたいと思っていたので丁度いい。


 天井を向いてソアが呟く。


「にしても動力部が船のど真ん中にあるなんて、珍しい船よね」


 下のフロアには中央制御室があり、この上には発令所。


 重要箇所が縦に並ぶのも、この船が多層構造だからだが、お陰であまり迷うことなく、それぞれの目的地に移動が可能。


「ティンクとエリザ、一体どこに行ったんだろう?」


「さぁね。地図に間違いはなかったんだから、その内に合流できると思うわよ。……よし、これで足はオーケーね」


 ソアラのロボットは、自分やみんなの修理ができるように、戦闘用には作られていない。


 主武装のライフル銃を手放したら、戦場では役に立たなくなるが、機械のリペアを神業でこなせる特別製。


 あっと言う間に手も元通りになり、リリアはリリアーナから装甲を外して、装着し終えると、ソニアと共に発令所に向かった。


「……あんたは付いていかないの? ヘレン」


「あははは、ちょっとまだやる事があって……」


「古代技術に触れる機会がここにはまだあるもんね」


「フランソア=グランテ! あなたって、本当にかわいくないわね」


「もしかしてケンカを売ってるのかしら?」


「そう言う意味じゃあないわよ。分かってるくせに、イジワル言わないで」


 ヘレンは里を飛び出した理由を語り始めた。


 フウマの里で最初にソニアを見つけたのは、本物のベック=エデルートだった。


 フェラーファ人が母星を出る事なんてほとんどなく、ましてや惑星ガテンはかなり遠い。


 小さい体を活かして、密航に次ぐ密航でたどり着いたガテンで力尽きた。


 行き倒れた理由は空腹。


 餓死寸前のところを、助けてくれたのがベックである。


 ベックは目を覚ましたソニアに食べ物を与え、上層部に報告せず自分の屋敷に匿った。


 当然同居していたヘレンも、ソニアの存在に気付き、3人の生活は一ヶ月ほど続いた。


 ソニアの目的は広い世界を知る事。ヘレンは合間を見てはソニアにこの惑星連合について、色んな事を教えてやった。


 ある日、ベックが言葉を滑らせたと言って、上層部にソニアの存在を知られてしまった。


 フェラーファ人は銀河評議会が特定種として、調停法で護る種族だと調べが付くと、元老たちは兄妹から妖精族を引き離そうとした。


「ソニアがフェニーナにならなかったら、あの子の冒険は、そこで終わってたでしょうね」


 進化したフェラーファ人の扱いは、法がまた変わってしまう。


 ソニアは2人の元を離れなくともよくなった。


「だって、契約者となった人から引き離したら、フェラーファ人は死んじゃうんだもの。銀河評議会的には、余生くらいは自由にさせてやろうってことなんだろうけど、ヒドイ話よね」


「それで情が移ったあの子を助けるために、諜報組織を抜けたって事? それでお兄さんを始め、4人もの犠牲者を出したのはなぜ?」


 ソアの問いに、ヘレンは深い溜め息を吐いて答えた。


「裏切り者の5人ね。あの子をラオ=センサオに売り渡そうとした連中も、最後にソニアの役に立ったんだもの。それくらいの償いはしてもらわないとね」


「ラオって、上にいたわよ」


「そりゃ、いてもらわなくちゃ。今度こそ、完全に息の根を止めてやるんだから。ほら、早くボーヤを起こしてあげて!」


 ヘレンの檄に3人は「あなたが仕切るんじゃあないわよ」と、心の中で突っ込むのだっだ。

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