表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion05 金の章
130/144

Episode10 「姉弟喧嘩と因縁の対決か……」



 2人の実力は拮抗していた。


 ソニアはバシェット=バンドールの怪力、デルセン=マッティオの超スピードを巧みに使い分け、リリアに反撃の隙を与えない。


 それでも距離を置く事で生まれる、相手の攻撃手段が途切れたところで放つミサイルだったが、そのすべてを手持ちの細剣一本で裁き、時には軌道を変えて、リリアへ打ち返す。


 5人のベック=エデルートは皆、フウマ族でも一流の諜報員だった。


 その誰かの能力をコピーした剣技は、まるで華麗に舞う蝶のよう。


 それだけの力を持つソニアにも、リリアロボを討つだけの決定打はなかった。


 リリアロボの能力も、人類の叡智を超えていた。


「大丈夫? お姉ちゃんは生身でしょ、息切れしてきてるんじゃないの?」


「そっちこそ、今からそんなペースで、エネルギーは保つのかしら」


 お互い出せる手は隠すことなく、全力のぶつかり合い。


 先に動きが鈍くなるのは、リリアの心配通り、生身のソニアが先立った。


「やっぱり、ズルい、わ。……あなたは、自分の力で、戦ってるんじゃあないんだもの、はぁ、はぁ……」


 姉妹喧嘩は妹に軍配か。……と言うわけでもない。


「やだ、右足がもげちゃった。どうしよう……」


 外部スピーカーはオフにしたけど、右足のくるぶしから先がなくなった事は、一目で分かる異変。息を切らせているから。と、気付かない事を願うが。


「その足じゃあ、上手く、動けないでしょ。こ、この……勝負、わ、私の……」


 ただの息切れではない。ソニアの異変は胸の宝石に寄るものなのか、青かったアーティファクトは赤くなっている。


「スタミナ切れなのは、そのアーティファクトの方なのね」


「……まだ、完成品とは、いかないみたい。悔しい。今なら、後5分とかからず、その、お人形を、倒せただろうに」


「いいえ、それでも私の勝ちよ、お姉ちゃん。あれ?」


 右手首がポッキリ折れた右腕を下ろして、左手の人差し指をつきだした。


「ああ、大きい方の、お人形が来たのね。ふぅ、だったらどう? 2回戦といきましょうよ」


「息切れが収まっただけでしょ。お姉ちゃんの弱点がその宝石だって、私に教えておきながら、まったくもう! まだ真っ赤っかじゃん」


 立っていられないリリアはリリアーナを纏った。


「待って、私も連れて行ってよ」


「……いいよ。ちゃんと覚えておいてね。私から取り上げたのと、今日の約束の分。グワンの実、二つだからね」


 リリアーナはソアラを抱え上げて、みんなの跡を追った。






 ソアとエリザはヘレンを追って、イグニスグランベルテの心臓部、動力室で彼に再会する事ができた。


「アタリ、かな」


 ソアとエリザは少しホッとする。おそらくは動力部に直結されているカプセルの中に、目を瞑るボサリーノ=エギンスの姿を前にして。


「ちょっと後から来て、横入りはしないでよね」


「なに言ってんのへレーナ=エデルート! 順番なんてないでしょ」


「エリザ、挑発に乗っちゃダメよ。そいつは正真正銘の性悪女なんだから」


 完全な死角だったのに、後ろからのミニ・ソアの攻撃は刀で弾かれた。ヘレンもれっきとしたフウマの諜報員なのだ。


「フランソア=グランテ、交渉しましょう」


「なんの交渉かしら。あなたが私たちを抱え込めるだけのカードを、持っているとも思えないんだけど。あとそれと、あなたにフランなんて呼ばれたくないわ」


「そう、だったらソアのままで。そうね、私の提案はこの子を渡す代わりに、ヴァン=アザルド捕獲のお手伝いをさせて欲しいってことよ」


 ヘレンの手札は、バシェットとデルセン。言わずとしれた雑魚キャラ1と2。


 それと今、リリアと戦っているであろうソニアス=フェアリア。


「やっぱりこっちに提案を聞き入れるメリットはないわね。あなたが土壇場で裏切るデメリット以上のね」


 もう一度ミニ・ソアに攻撃させるも、結果は同じ。


 しかしその一手は、エリザが飛び込む合図に過ぎない。


 6枚のエンジェル・ビットと自身の特攻だったが、エリザの手はヘレンに届かない。


 いや、斬られる前に腕を引っ込めたのはいい判断だった。


「あら残念。ここで1人減らしたら、さっきの提案、聞いてもらえると思ったのに」


 ヘレンが飛び退いたので、ソアはカプセルに近づく事ができた。


「どうなの? 開けられるの?」


「焦んないの。ほら来るわよエリザ。あんたが負けたら、その女が、一時的にでも仲間になっちゃうんだからね」


「あら、本当に仲間にしてくれるの?」


「するわけないでしょ。だってエリザが負けるわけないもの。ビットを20枚扱えれればね」


「無茶言わないでよ。6枚でもいっぱいいっぱいなのに」


 エリザの意見は余所に、vsヘレンが確定した。


「私の事はいいから、ソアもさっさとカプセルを開けなさいよ」


「はいはい、やれるだけやってみるから。……たぶんこれはオリビエの仕事なんだけどね」


 ケーブルのソケットを近くの端末に突き刺し、プログラムを読み始めるソアは、ロボットの眉間にシワを寄らせる。


「やっぱり選択ミスね。ここにいるのが私じゃあなく、あの2人ならどうにかできると思うんだけど」


 オリビエとソアラはここにはいない。


 ラリー達の元へ走るか、でもそうなると、エリザだけにヘレンを任せる事になってしまう。ここからならミサイルで援護くらいはできるのだから。


 ソアがカプセルを開けてくれる事を信じて、奮闘しているけれど、明らかに余裕がない。ヘレンの方が数段余力を残しているようだった。


「ま、まだなの?」


「あら、もう弱音を吐くの?」


「弱音なんか……、吐いてない!」


 左回し蹴り、紙一重を見切って空振りをさせたところで、ヘレンはエリザの背中へ回る。


「ちょっ!?」


 左腕をとられ、動きを封じ込まれるエリザ。


「もう終わりかしら」


「お前がな」


 烏丸がヘレンがいた場所を通過する。ソアがミサイルを発射する前に。


 自由を取り戻したエリザが膝をつく。


「早く治療してあげなさいよカート、結構強力なのよ、その毒」


「そうだな。だがここでお前から目を離すと、またくだらないマネをしてくるのだろう? 面倒くさいタイミングでな。ヘレーナ=エデルート」


「まぁ、本当にその子を見捨てるの?」


「なに、解毒なら仲間がしてくれる」


 少し遅れてティンクが追いついてくる。徐にカートが投げた解毒剤を落とさなかったのは、ロボットの性能のお陰だ。


「来い、ヘレーナ=エデルート! ここで決着を付けてやる」


「本当に私って、あなた達から嫌われているのね。悲しいわカート」


 ヘレンにフウマの修行を耐えた経験があっても、一流の諜報員のカートが相手では、一縷の望みもあるとは思えない。


「カート、ティンク、ここをお願い。私はラリーの所に行って、ソアラとオリビエを連れて戻ってくるから」


「待て、フラン。ラリーに伝えてくれ、フォレックス=マグナとボールズ5は宇宙へ戻った」


「えっ? なんで?」


「イグニスグランベルテの自動工作機の製造スピードに、ブルーティクスが対応しきれなくなったからよ」


「なんでヘレンがその事を知ってるのよ。カート、本当なの?」


「本当だ。キャプテン・ミリーにもランベルト号へ戻ってきて欲しいそうだが、そちらはキャリバー海賊団の突入部隊、パメラ=ビオフェルマが迎えに行っている」


 状況は刻一刻と変化していると言う事だ。


 ますますリーノの救出を急がなくてはならない。


「ティンク、あなたの方が私より早く移動できる。お願い、ラリーの所へ行って、今の話を全部伝えて」


「えっ?」


 エリザに解毒剤を飲ませて、横に寝かせていたティンクが頭を上げる。


「聞いてなかったの?」


「あははははっ、……もう一度お願い」


 ティンクは抱え上げたエリザをカプセルの側まで運んで、もう一度内容を確認した。


「分かった。任せて!」


 ティンクを見送ったソアは目線を下げて、もう一度プログラムを解読できないか試みる。


 カートとヘレンが戦いの場を、別フロアへ移すために出て行った事には、気付いていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ