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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion05 金の章
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Episode07 「またやられたってか!?」



 発進していたモビールが戻ってきた。


「ヴァン=アザルドのヤロー、一体なにを考えてやがるんだ?」


 オッグス壊滅を狼煙代わりに、金色の船はキリングパズールに制圧勧告を送った。


「警察機構軍が躍起になって戦力を集め、イグニスグランベルテを包囲しようとしています」


 アンリッサはアポースとの回線を開いたままに、通信を傍受されないように高密度圧縮したデータのやりとりをしている。


「どうするの? まぁた、こっちの計画が狂っちゃったけど」


「なに言ってんだ、ソアよ。計画は続行だぜ。現場が荒れている方が潜りやすいだろうよ」


「本気で言っているの? 随分な自信ね」


「俺たちのバックアップをしてくれるのが、オリビエとワンボック・カンパニーだからな。心配があるとしたら、キャリバーの突入艇とエリザベルガだけさ」


「心配御無用。古代遺産のモビールに頼らないと、安心できない人には負けないわよ」


「随分と強気じゃあないか、それじゃあエリザ、お手並み拝見といこうじゃないか」


「ラリー、キャリバーのエルディからです。『若造が吠えるな』だそうですよ」


 アンリッサはラリーに代わって謝罪メールを送る。『期待してるぜオッサン』と。


 ブルーティクスもまた、ボールズの性能を信じるフォルスからもOKサインがもらえた。


「にしてもなんでキリングパズールなんだ?」


「一番因縁の深いあなたやカートが分からないんじゃあ、本人に聞くしかないでしょ」


「因縁があるのはお前やティンクも一緒だろ」


 再出撃のために全員搭乗、一部計画は変更され、突入口は各々任せで合流地点は重力波砲。


「バラけるにしてもこうも別れるもんかね」


「でもお姉ちゃんとソアラはキャプテンと合流したよ」


「御曹司とリリア達が一緒になれたのもまずまずだな」


「うん、カートとティンクのペアが心配かも」


「お前は心配じゃないのか?」


「ラリーと一緒だから」


 戦闘用に新しく設計し直した擬態もある。


 オリビエには何の心配もない。それは本当だ。


「なんか新鮮だな。この近さでオリビエと目線が会うなんて」


「う、うん。そんなに見上げなくていいの、新鮮」


 オリビエは頬を染める。これまでは恥ずかしくて、分厚いゴーグル越しでしか見られなかった目を見る。


「透過ゴーグルにしたとは聞いてたけど、俺、なに気に初見なんだよな」


「それは……恥ずかしかったから」


「似合ってるぞ」


 突入から3分。


『パパ、掃除が終わったのですぅ』


「おっ、アースラご苦労さん。それじゃあ自動工作機と遊んでてくれな」


『はぁ~い』


 無人モビールをアークスバッカーとアースラに任せて、2人は移動を開始する。


 この辺りの攻略法は完全に抑えてある。格納庫から出ると直ぐに集まってくるガードロボット。


「じゃあない、ガーディアンだと!?」


 前回と全く一緒、なんてあまい相手ではない。


 ヴァン=アザルドは警察機構軍なんて敵視していない。警戒しているのはベルトリカ同盟軍なのだ。


「んだよこいつら、さっきより強くなってるじゃあねぇか」


「ラリー、援護は任せて、思いっきり暴れて!」


 二丁拳銃で狙うのは、少し離れたところからラリーを狙う銃撃タイプガーディアン。


「撃ち合いなら負けない」


 オリビエが見ているのは、ゴーグルに移るロボットの姿。


 ロックしてショット、ロックしてショット。ゲーム感覚の操作だが、相手の飛び道具を百発百中で潰していく。


「ラリー、ガードロボットも出てきた。こいつらも任せて!」


「頼んだぜ」


 近接戦闘でバンバンとガーディアンを行動不能にさせて、足下のガードロボットも足で潰していく。


「よし! さっさとみんなと合流するぞ!」






 無人モビール破壊工作は突入部隊に任せて、先行するキャプテン・ミリーとソアとソアラは廊下に出た。


「ガードロボットが出てきたわね」


「こいつらは私に任せて!」


 キャプテンが前に出ようとするのをソアが止めた。


「みんな、お願いね」


 ソアロボット・ミニことミニ・ソア10体がガードロボットに攻撃を仕掛ける。


「あれ。どこにいたの?」


 ソアラはシュピナーグに積んだ覚えがない。


「ウチの突入艇で運んだに決まってるだろう」


「ミリー、ありがとうね」


 今回のミニ・ソアは最大の25体を使用。運んでと頼んで断られたら、スカートの中に隠せる3体しか使えなかったところだ。


「いや、私に言えば、シュピナーグにコンテナ繋いで持ってこられたでしょう?」


「えーっと、ソアラには頼みたくなかった。からかな」


 その心は? 当然ラリーが原因。でもここでもう一人が、残されまいと首を突っ込んでくる。


「もしかしてフラン、あんた私がラリーを諦めたとでも思ってる?」


「違うの?」


 ここに女の三つ巴の戦いが始まる。


 だったらと出されたミリーシャの提案に二人は首を縦に振る。


「っと、その前にあいつら片付けようか」


 ミリーシャはガーディアンを一突き、ラリーのように近接戦を担当する。


 キャプテン・ミリーのサーベルは蛇腹に分かれて、鞭のように振るう事ができる。


 通常の蛇腹剣よりも節が多くて、1つ1つのビットが小さい。だから滑らかな動きが可能で、自由度はかなり高い。


「我が友オリビエ=ミラージュが仕上げてくれた業物。この剣の前に雑兵がいくら群がっても無意味としれ!」


 肩慣らしを追えたキャプテンの連撃はスピードを増し、このまま一人に任せても大丈夫に思えたが。


「新手!?」


 体格の一回り大きいガーディアンが現れ、ミリーシャの剣が止まる。


「堅い!」


 即座にミニ・ソアで牽制を掛け、キャプテンは一歩下がる。


「なに? もう打つ手がないの?」


「いいや、こういう重たそうなヤツには、こっちで対処する」


 先ほどまでの細身の剣ではない。キャプテン・ミリーが抜いたのは彼女の本当の愛剣。


 先代であるギャレット・キャリバーから受け継ぎし宝剣。


「こいつはガラクタだったランベルトから見つかった古代遺産。無理矢理分解できるように改造してあった物を、もう一度一枚刃に戻してもらったんだ。こいつの破壊力なら!」


 それもまたワンボック・ファクトリーの名工、オルボルト=ベッツェマックが打ち直した至高の一本。


「ここからが本番だ」


「やる気があるなら任せるわ。ソアラ、私たちも援護するわよ」


「うん、任せた。がんばれ!」


「なに言ってんの、あんたも手伝いなさい」


「私の武装知ってるでしょ! こんなところじゃあ本領発揮なんてできないし、弾切れでおいしいところで役立たずなんて、ぜ~~~~~ったいにイヤですからね」


「こいつ、本気で言ってやがる」


 ソアは本気であきれたが、気持ちが分からないでもない。


「だったらいいよ。ミニ・ソアを貸してあげるから、ちゃんと働きなさいよ」


「なっ、こんなの一度に25体もって、あんたじゃあないんだから、私には無理だって」


「そんな事ばかり言ってたら、ラリーにチクるよ」


「ひ、卑怯な」


 じゃれ合う2人を余所に、ミリーシャは強化型ガーディアンにドンドンと斬り刻み続ける。


「おお、なんだこの斬れ味は! まるで豆腐を斬っているようだぞ」


 見せ場を全部持っていくキャプテン・ミリー。


「ああ~、ほら、あんたがしょうもない事言ってるから!」


「忘れるなよ。この戦いで一番ラリーの役に立ったヤツが、1日あいつとデートができるという約束を!」


 それは紳士協定ならぬ淑女協定。ラリーに対するアプローチを控え、淑女らしく振る舞う事。


 その取り決めを護りつつも、この勝負は始まった。


 「ラリーが選んだ1人が、彼とデートできる権利」を賭けた裏の戦いの事を、男達は誰も知らない。

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