表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion05 金の章
122/144

Episode02 「俺たちの活躍は! あれ?」



 名前も前と同じヴァラキリアと名付けることにした、新機種なのに妙に手に馴染んだ感じのするトンファー。


 名前は付けていないが足技をフォローしてくれるアンクル。


 エリザの体術は、リリアロボの機動力を大幅に超えている。


 だがリリアの武装は豊富で、全身の模擬弾と空弾頭ミサイルを撃ちまくる。


「模擬弾だけど、衝撃は実弾と変わらないわよ」


 爆発しなくとも、一発でもまともにヒットすれば、エリザの負けとなるルール。


 弾丸弾頭の雨嵐。


 俊敏力をあげる筋肉操作で、フウマの工作員のようなステップで回避し、足技でミサイルを絡め取ると、リリアの方へ軌道を変える。


「そんなの打ち返してきたって、私には当たらないわよ」


 ミサイルをコントロールしているのはリリアだとは言え、行って帰って、また飛ばすほどの推進剤が入っているわけもなく、ミサイルは全て地面に落ちる。


「次は私の番だよ」


 突っ込んでくるエリザを迎え撃つ機銃が火を噴くが、一発として掠ることなく、懐まで入られてしまう。


「リアクティブアーマーなんだ」


「物理攻撃の威力は、半減以下に落とせるよ」


 リリアーナはモビールとしては小型だが、機動性能も装甲強度も一般の物に負けない細工がされている。


「オリビエ懇親の力作だよ。そう簡単に抜けやしないって」


 モビールから外して体中につけた装甲は確かに強固だが、しかしエリザの優勢は変わらない。


 軽減していると言っても、ダメージが全く通らない訳じゃあない。


 エリザの猛攻に押され続けるうちに、リリアロボの背中が壁に付く。


「降参するなら、傷一つつけずに終わらせてあげるけど」


「まだまだこれからだよ!」


 リリアは前腕ほどの長さの短剣を二刀流で構え、エリザの手の動きをトレースし、全ての攻撃を受けきった。


「だったら!」


 エリザは足技に切り替えるが、それもリリアロボは完璧に受け止め、硬直状態となる。


「今回の強化はみんな、ヴァン=アザルド対策だからね」


 リリアのためにオリビエが用意したのが、襲い来る攻撃の軌道トレース。


 リリアロボは機械であるため、ヴァン=アザルドのイズライトである末端操作は通用しない。


 リリア本人なら操れるのだろうが、ロボの中にいて姿の見えない相手の、末端神経を操作するのは至難の業のはず。


「今のリリアに必要なのは条件反射ってことね。さすがはミラージュだわ」


 エリザはまだオリビエ=ミラージュのことを、ファミリーネームで呼んでいる。


 オリビエは機動力の低いリリアロボの防御を強化した。


「なにエリザ、打つ手無しぃ?」


「くっ、……分かったわよ。私の新装備を見せて……、しっ!」


 エリザは口の前に右手の人差し指を立てる。


 耳を傾けると聞こえてくる、知らない男達の濁声。


「おい、第3ドックの扉が開いてるぞ」


「待てよ、あそこは搬入口だから宙抗船もモビールも、脱出ポッドすらないぞ」


「そんなこと気にしている場合かよ。あのヤバイ連中から逃げられるなら、宇宙遊泳だって構わねぇっての」


 賊の数は十人ほど、まっすぐリリア達のいるブロックへ近付いてくる。


「なんでなんで? ラリー達が取り逃がしたの?」


「そんなわけないでしょ。リリア、きっとあれは私たちの取り分ってことよ」


「そっか。めんどくさいなぁ~。そうだ! ちょうどいいじゃん、あいつらはエリザに任せるよ」


「なに言ってんのよ!?」


「自信ないの?」


「なっ!? ……分かったわよ。やりますよ」


 小声での簡単なミーティングが終わった直後、入ってきた男達は、立ちはだかる二人の少女を見てニヤける。


「おお、モビールが3機と、ちっこいのは移動用のガジェットか? ちょうどいい。こいつでさっさと逃げるぞ」


「おいおい待てよ。上玉が2人もいるんだぜ。置いてく手はないだろう」


 モビールに乗れるだけ乗って、後はワイヤーで引っ張る。


 ここから脱出するのに、2人の少女も加え、15人が飛んでいければなんでもいい。


「と言うことだ。お嬢ちゃん達」


「ご託はいいから、早くかかってきなさいよ」


 賊の力加減が分からないエリザは突っ込むのではなく、かかってくる敵を迎え撃つ体勢を取る。


 その挑発に乗って、2人の男が殴りかかる。


 最初の2人はエリザの敵ではない。残りの連中も同レベルなら、いつもの戦闘スタイルで簡単に片づけられる。


「ちゃんとテストしなさいよぉ~」


 リリアもエリザと同意見のようだ。手を抜くなと釘を刺してくる。


「分かってるわよ!」


 エリザは意識を集中すると、足から無数の物体が飛んでいく。


「何だ! こいつら……」


 荒くれ者が、無軌道に飛び回る小さな物体放つビームに、撃たれて倒れる。


「エンジェル・ビット、うまく起動したじゃない!」


 リリアーナに腰掛けて、高みの見物をするリリアに、男2人が襲いかかるが、溜め息と共に飛ばされる小型ミサイルに焼かれて動かなくなる。


「なんなんだ、こいつら……ぐわっ!?」


 残党をエンジェル・ビットで、あっという間に片付け、リリアが拍手をくれる。


 飛び回っていた20枚の羽根は、エリザのアンクルに戻る。


「いつ、私のアンクルを入れ替えたんだか」


「結局、新しいヴァラキリアの武装は使わなかったのね」


「こっちは確認するまでもないよ。ミラージュが作ってくれた物だもの」


 扱いそのものは簡単な装備だから問題ない。それはリリアも同感だ。


「さぁ~て、次は私も戦うね」


「次はあんた一人でお願いね、リリア」


 2人の視線が火花を散らす。


 この後、2人の元へ送られた賊の数は30人程度。


 雑魚の擦り付けあいは直ぐに、どちらが多くの敵を討つかの勝負に変わったのだった。






 クラマンテ=アポース巡査長からクララリカ=クニングスに送られたモビール、クーララビットは色が変わり、エリザベルカと名を変更された。


 機能も変わらないそれは、エリザ専用の機体として登録された。


「アポース巡査長が警察の記録を抹消してくれたから、簡単な手続きで済んだわ」


 夜叉丸の背中に張り付けるリリアーナと違い、場所もなく、エリザベルカを格納庫に入れることはできない。


「やっぱりベルトリカの工作室は、僕のシャトルに移して、格納庫を拡げておくべきだったね」


 今、エリザベルカはベルトリカの上部隔壁に増設した、シャトル用のドッキングユニットに固定している。


 この件が片付いたら、シャトルの定位置になる予定だ。


「僕のシャトルねぇ~」


「今さらでしょ、ラリー」


 最近のオリビエは皆と交流することを嫌がりはしない。


 とてもいい傾向だが、なにかとラリーに突っかかってくるのは、なんとなく気掛かりになっている。


『作戦開始3時間前だよ。ランベルト号は2時間前に来てるけど、ブルーティクスは少し遅れているみたい。後20分で到着だって』


 正義の味方は遅れて到着する。


 のではなく、金色の船が予定ポイントに現れる時間が、2時間早まったのが遅刻の原因だ。


 それでも十分間に合うから、問題はないだろう。


「ミリシャ、お前もそろそろ船に戻ってくれ」


「えー? もう少しいいじゃないか」


 せめてブルーティクスが合流するまで。とせがむワイングラス片手のキャプテンを、副キャプテンのノエルに引き取りに来てもらい、ベルトリカのコントロールルームでは、作戦の最終確認が始める。


「敵船を通常空間に引きずり出せたら、全戦力でボコるぞ」


 そしてランベルト号には、次元断層発生の阻止もしてもらう。


「引っ張り合いに負けて、位相差空間から引っ張り出せない場合は……」


 ベルトリカチームは、モビール部隊で断層を突破する。


 戦闘部隊の編成は、第一チームにラリーとカート。第2チームにリリアとエリザ、ソアが続く。


 今回エリザはシュピナーグに登場してもらい、リーノ奪還後はエリザベルカに乗り換えて、全力で金色の船奪取にも協力してもらう。


 もうヴァン=アザルドに、変なわだかまりは持ってないようだが、念のためにリリアとタッグを組ませる事にする。


 と、ここまでのプランがパーになるのは、この最終打ち合わせ直後のことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ