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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion04 黒の章
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Episode25 「まさかの再会、だな」



 思いがけない帰郷となったラリー。


 ノインクラッドのアメルートは、何も変わっていない。


 自治領の治安を担っているのは、変わらずノインクラッド統治軍。


 ただその本部は別都市に移され、アメルートの治安は以前と比べものにならないほど悪化していた。


 ラリーは街中を見渡せる高台に昇った。


「間違いなく俺達は、あいつの誘いに乗せられているわけだがフラン、何か新しい情報は手に入れたか?」


『パスパードに集まってたゴロツキが、アメルートの街に散らばってるらしいわ。巡査長に説得された一部は姿をくらましたけど』


 評議会と警察機構軍の本部があるフリラグ大陸ではなく、統治軍のあるノザーヌ大陸に人を集めたようだが、統治軍の本部は沿岸部のサフラスに移されている。


「狙いが読めないな。アイツは俺達に何かさせるつもりだとしたら、ここで間違いないと思うが……、ミリシャとは連絡ついたか?」


『ええ、ワールポワートで巨大な爆弾を発見したそうよ。他にも無いか船員総出で、引き続き調査をしてくれるって』


 やはりヴァン=アザルドは手下を連れて、ワールポワートに行っていた。


 こうして相手の一手を潰したものの、それもヤツの手の内かと思うと、どれだけ手を尽くしても足りない気がする。


 と言ってもこちらができる事は限られる。


 アポースに警察機構の作戦内容を教えてもらい、オレグマグナの警備船隊を組み込む事ができた。


 ベルトリカはノインクラッドの宇宙港にいる。


 11年前にフィッツキャリバーの後押しを受けるはずだった統治軍は、軍備拡張に失敗し、本部を移転させて巻き返しを計ったが、その権限の行き届くのはノザーヌ大陸のみ。


 協力を願っても、独自の行動を取るの一点張りで、正直当てにできない。


 その姿勢は警察機構軍に対しても同じ、ハッキリ言って目の上のたんこぶだが、情報提供の見返りに、こちらにも干渉しないという協定は結べた。


「あと2、3手の駒があればな……」


 街を見渡して一番に目が向くのは……。


「母さん、ラナー……」


 この区のシンボルだった公民館はテロで燃え落ちた。


 新たなデザインの白い建物を見ていても、思い出すのは昔の茶色い館。


『ラリー、いいか?』


「どうかしたか? カート」


『ヤツを見つけた。なぜかお前が暴いた本性のままの顔だ』


「どこだ!?」


 カートが待機していたのは統治軍本部周辺のはず。


 隣の統治区であるサフラスにいるとして、ここからは少し離れている。


『本部周辺だ。しかしあまりにも堂々としすぎている』


「確かに気になるな。……分かった。そいつを張ってくれ。何らかの目的はあるはずだからな」


『了解だ』


 通信を切るのと同時だった。


 ラリーは大きな爆発音と、煙が昇る駐機港へ走った。






 航空機や個人のモビールまで利用される駐機港、一日の利用数はおおよそ12万人。


 ラリーが到着した頃には統治軍の職員が、現場を封鎖していた。


「おいおい、俺の事は連絡しておいただろう」


「協力者のコスモ・テイカーか。話は聞いているが、この現場は我々が命令を受けた案件だ。お前の介入の報告は受けていない。お互い不干渉なのだろう? 引き下がってもらおうか」


 評議会から許可を得た証明書を出した途端に、その軍人の表情が固くなった。


 この表情が統治軍と評議会、ひいては警察機構軍との関係性を意味する。


「この分だと、どこへ行っても門前払いさせそうだな。いっそのことカートの所へ行くか?」


 目と鼻の先にアークスバッカーは駐機されている。


 しかしラリーがコクピットに潜り込む前に事態は悪化する。


 街のあちこちで大きな爆発が起き、一般人も巻き込んで、阿鼻叫喚の地獄絵図となる。


「この大規模破壊、……爆弾を犯罪者に仕込んで街に散らばらせたな」


 街中で市民、統治軍人の怒鳴り散らす声。全く統制が取れていないようだ。


「こんだけの軍人がいて、いったい何をしてたんだ」


 いくら役立たずでも、彼らに見つからず、この数の爆弾を設置するのは不可能なことに思う。


「設置式の爆弾じゃあないってことか」


 ラリーの頭に人間爆弾という言葉が浮かぶ。


 金に釣られて自爆テロに使われた中には、おそらくパスパードで拳を交えた奴らもいただろう。


「悪党の末路と言っても、こいつは胸くそ悪いぜ」


 広範囲で混沌が拡がすぎて、統治軍は対応しきれていないようだ。


 これは却って好都合。


 ラリーの動きを制限する軍人はいなくなったに等しい。


 向かうのは公民館か?


 一般人を避難させるならあそこだ。


 しかしテロリストになんらかの狙いがあるとしたら、避難所を利用しない手はない。


 ここの軍人が無能でないなら、向かったところでまた、頭でっかちにかち合う可能性が高い。


「さぁて、どうするかな……」


 ラリーは踵を返した。


 向かうは旧統治軍本部。


 なんの根拠もないし、何にひっかかったのかも自覚がない。


「ビンゴ! だったか?」


 本部庁舎前に見慣れた顔を見つけて、ラリーは表情を明るくした。


「なんであんたがこんな所にいるんだよ」


 11年の歳月は、男の印象を大きく変えていた。しかも表情の読めない仮面をつけている。


 ラリーは戸惑うことなく男に近付く。


「親父、あんたが出てきてくれてようやく合点がいったよ」


「親父? それは私の事を言っているのかい? 若きコスモ・テイカー」


「仮面が邪魔だって言うんなら、素直になれる手伝いをしてやるよ」


 ラリーが指で弾いたコインが、仮面の前面と後面を繋ぐ金具を飛ばしてしまう。


「老けたな父さん、……それに痩せちまってよ」


「お前は随分とたくましくなったな」


 久し振りの再会だが、お互いの距離が縮まる事はない。


「ヴァン=アザルドはあんたの計画の隠れ蓑になって、目立つ行動を取っているってところか」


「……なぜそう思う?」


「あいつは業界では、トップクラスの大悪党で名が通っているのに、足跡も手段も、詳しい内容の残る報告書がほぼ残されていない。そんなやつがこれだけ表だった行動をとる理由。そしてあんたは最もヴァン=アザルドの行動から割り出しにくい、ここで何かを企んでいた」


 ラリーの何気ない行動で見つけた、怪しい仮面の男。


 それが今まで無事の報せを寄こさなかった、頭のキレる父となれば。


「目標は……、警察機構軍。あるいは評議会本部ってところかな」


「ラリー、一つ教えておいてやろう」


 得物は刃渡り18cmのナイフ。左手は何も持っていない。


 とてつもない殺気が放たれる父に、ラリーも最初から本気で拳を構える。


 父との手合わせは7歳の時以来。


 コスモ・テイカーとして、一級の仕事をこなすようになったラリーの戦闘スタイルを父親が知る由もなく、息子もまた本気の父の戦いを目にした事がない。


「速い!?」


 スピードはどうやら父、フェルディラル=エブンソンことラルの方が上のようだが、ラリーの動体視力も負けてはいない。


「被疑者は取り押さえてから、御託はその後だ」


 父の3手をインパクトナックルで受け止めた。ラリーの目はそのスピードに慣れる。


「そうかよ!」


 ラルの突きにベストタイミングの、きれいなカウンターが合わさる。


 しかしラルの目にはラリーのフックは止まってるように見えた。


 ラリーの開いた右脇に、左袖に隠し持っていた短銃の鉛弾を撃ってくる。


 避けられる体勢ではない。


 しかしこの攻撃を想定していたラリーは、セットしていたブロークンアンクルのスラスターで、小さな弾丸を吹き飛ばした。


「さすがに今のは、油断をしすぎたんじゃあないか? 親父」


 顔面を狙ったカウンターは、軌道を変えられはしたが、それでもラルのボディーにヒットした。感触も悪くなかった。


「お前が私の想像を超えてただけだ。なに、少し修正すれば問題はない」


 ラルは銃を袖に戻して、左手にもナイフを持つ。


 ラリーはナックルとアンクルのタービンをフル回転させる。

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