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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion04 黒の章
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Episode19 「朝の片頭痛は大変だけどな……」



「あぁはははぁ~、完勝完勝!」


 ご機嫌のミリーシャは、銀河法で20歳からと定められているお酒を、大いに呷っていた。


 ここはオレグマグナ所有の宇宙船メンテナンスドックステーション。


 ベルトリカとランベルト号も駐留している。


 参加者はフラン、ラリー、カート。海賊団からミリーシャとノエル。


 そして依頼主のオレグマグナからは今回の主役、フォレクス=マグナのみがこの場にいる。


「ミリーシャ、あなたいくつになったんだっけ?」


「お前の一つ下だ。なんだ、忘れたのか? フランは相変わらず失礼なやつだな」


「いいえ、覚えているわよ。私もあと8ヶ月したら、お酒が飲めるようになるってね」


「ああ、そう言う話か。固い事を言うな」


 キャプテンは飲酒を海賊になった時に覚えた。


 今はまだアルコール度数を気にして飲んでいる。


 ただ女海賊として箔をつけるために、体作りも兼ねて、飲んでいるにすぎない。


「こいつはいい、こんな旨いもんだったなんてな。喉が焼けるぅ~」


「うん? ねぇラリー」


「なんだよフラン」


「あんた今、何を飲んでるの?」


「なにって、キャリバーのオッサンらが薦めてくれたドリンクだよ。ちょっと甘いけど飲みやすいぜ」


 フランはニオイを嗅いで理解した。これも子供が飲んではいけないものだ。


「ねぇラリー、まさか目の前にある空ボトルって……」


 転がるボトルは、みんな同じようなラベルが付いている。


「これ、ミリーシャのより度数高いでしょ、それもかなり」


「なに言ってんだよ、俺があいつみたいに、乱れているように見えるか?」


「そうね、酔ってるか酔ってないかで言えば……、あんた、酔ってるわね」


「せいか~い!」


「じゃあない! 初めてで自分の加減が分かってないうちから、無茶な飲み方すんな。てか、まだ飲むな! 3年早いっての!!」


 この打ち上げの主役であるフォルスを差し置いて、できあがるラリーとミリーシャを放っておき、フランは今回の訓練の成果と、反省点をまとめた資料を3代目に渡す。


「今回は残念だったわね。でも初めての船隊戦の指揮としては、得る物は多かったと思うわ。それに今日のはミリーシャが大人げない。負かすにしても、もっと上手く立ち回れなかったかしら」


 ランベルト号の性能頼みの力押しで、被害を無視した強襲で、初実戦の少年指揮下に勝って、こんなに大笑いできるミリーシャに、フランはいい容赦なく苦言をぶつける。


「何を言う。私を煽ったのはラリーではないか」


 そう、もう一人の子供は、フォルスの教育係のラリーだ。


「煽ったのは俺だが、始める前に喧嘩を売ってきたのはミリシャだ」


 こうなったらもう、泥仕合のなすり合い。


 それでも得る物はあったのだからと、依頼通りの報酬を約束してくれたフォレスに、フランは頭を下げた。


 宴は深夜まで続くのだった。






 ティンクはオリビエに呼ばれて、レクリエーションルームにやってきた。


「はい、できたよ」


「ありがとう、オリビエ」


 先週の打ち上げの最中、ティンクは宴会場にフラフラ入ってきて、フランに叱られた。


 と言ってもベルトリカにフェラーファ人がいるという噂は、とっくの昔に広まっていて、妖精族を知らなかったフォレスが驚いたくらいで、全く騒ぎにもならなかった。


 いつもいつもベルトリカに閉じ込めて、申し訳ないという想いはフランにもあるが、それもこれもティンクを思っての事だ。


「へぇ、思ってたより小さいから、ちょっと不安だったけど、これなら寝られるね」


 フランがオリビエに注文したのは、ティンクを入れて背負えるボックス、もちろん固定されるのは、ラリー専用のバックパック。


「本当にこんな温度設定高めで良いの?」


「うん、わたしかなりの寒がりなんだ」


 寒がりのティンクに合わせて、ベルトリカ内の温度設定もそこそこ高めにしてある。


「それんな寒がりさんなのに、なんでそんなに薄着なの?」


「フェラーファ人用の服って、似たようなのしかないからね」


「そうなんだ? でもそれなら丁度いいかも。これ、気に入るかな?」


 30着以上の人形服。背中が空いていて、羽根が出せるようになっている小さな服だ。


「うわぁ~、かわいい♪ オリビエって、服も作れるんだ」


「うん、義手を慣らすのに、色んな事を試してるから」


 早速着替えようかと、選べ出した時。


「おはよう……」


「って、もうお昼だよラリー」


 ティンクは選ぶ手を止めて、ラリーの右肩に座るが、呼気のアルコール臭に溜まらず飛び退いた。


「ちょっとラリーあんた、もう出発の時間じゃない!」


 ラリーの後からフランも入ってきて、今日の予定をウイスクで確認する。


「まだ飯も食ってないじゃんよ」


「そんな時間なんてないわよ。コクピットでレーションでも食べなさい」


 ラリーは舌打ちの後に大きな溜め息、フランは敢えてそれ無視をし、ティンクの前に立つ。


「もうボックスはもらった?」


「これだよネェーネ」


「おっ、オリビエ仕事が早い。それじゃあラリーに連れて行ってもらってね」


「どこに? 何をしに?」


「昨日言ったでしょ。去年も行った、ノインクラッドの評議会事務局よ」


「う、うん?」


「フェニーナではないフェラーファ人は、年に一度の更新を怠ると、強制的に星に帰す事になるのよ」


「ああ、そんな事を言ってたわね」


 前回もアークスバッカーで事務局の駐機場に乗り付けて、そこからはただのバスケットに入り、コパイシートに相乗りしたフランが運んでくれて、手続きも済ませてくれた。


「私は一緒に行けないから、しっかりと頼むわよラリー。手続きはティンクが自分でできるから」


「あいよ。くそ、腹減ったな」


 市販のレーションは腹持ちはいいが、味がいまいちなのが良くない。


 それでも空腹よりはマシか。ラリーはもう一度溜め息を吐く。


「おいラリー」


「なんだよ、カート。お前も仕事だろ」


「ああ、俺はもう少し後だがな。それよりこれ」


「なんだ、これ?」


「弁当だ」


「おお、ありがたい。助かるぜ」


 カートがチーム入りして、一番重宝されているのは、その料理スキル。


 人間は三大欲求を満たすのが、最も大事なのだと気付かされた。


「よし、行くか。急がねぇと日が暮れちまうぜ」


「えっ?」


「ほら、行くぞ。箱の中に入ってくれ。その箱をサブシートに固定するから」


 言われて中に入るティンク。蓋を閉められると、正面の画面が光り、外の様子が見えるようになる。


 どうやらラリーの左耳の辺りにカメラが付いているようだ。


「聞こえるか?」


『うん、大丈夫』


「息苦しくないよな」


『なんでそんな事を聞くのよ』


「いや、この箱。気密性も高いって言うからよ。宇宙空間でも深海でも平気だとかでさ」


『あっ、もしかして空気清浄機が止まったら……』


「窒息するらしいな」


「バカな事言わないでよバカラリー」


 たまらずオリビエが話に入ってくる。


「ちゃんと安全装置が働いて、万が一にも機能停止するより前に、蓋が開くようになってるから、機械的に」


 それは例え宇宙空間でも深海でもである。


「平気だよ。ティンク専用の宇宙服もあるから、左コンソールの緑色のボタンを押してみて」


 オリビエの指示でボタンを押すと、腰を掛けているシートが割れて、中からアストロスーツが出てくる。着替えるのではなく、全自動で装着させてくれる。


『すごぉ、初めての模様替えが宇宙服って言うのも、何だかなぁだけど、ちゃんと私にジャストフィットなサイズだよ』


「これはあくまでも箱だからね。緊急脱出っても、外に放り出されるだけなんだけど、その服を信じてくれて大丈夫だから、落ち着いて行動してね」


 なんとも冷や汗の出る話だけど、必要最低限の機能は備えているボックス内は、非常食も3日分は積んでいるとかで、すこし乗るのが怖くなるティンクだった。

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