お見合い
戦後処理といってはいるが、そろそろ帰らないとN国(の宰相)がうるさい。
そこで正式にお見合いをすることになった。
途中で魔王様が連れ去られたり何かあるといけないので、護衛にケントを連れてきた。ヒューにケントを紹介するいい機会だ、仕事でこれからお世話になることが多いだろうし。
そんなわけで前日ケントと一緒に魔王城に来た。
「護衛をするケントだよ、わたしの息子、よろしくね」
「初めまして、魔術師のケントです」
「ユ、ユーリの息子?この魔力量、婿にこないか?」
「やめろ、ヒューに会う準備はできたのか?」
「ドレスが決まらないんだ、どうしよう、黒のいつものドレスじゃ、ヒューの瞳の色を選んだみたいではずかしいだろう?」
「別にそれでいいだろう?深い意味なんてなくていつも着ているんだから」
「やっぱり赤にするよ」
「そうしてくれ」
当日は大国②と魔の国の国境近くにある、小さな町の高級料理店での会食となった。この二人の見合いの場としてはずいぶんひなびていて静かなところだ。
わたしとケントが仲介で、魔王様とヒューがテーブルごしに見合っている。
魔王様は黒いいつもの正装よりも赤いドレスが似合っていて、年相応の大人の女性の魅力がきわ立っている。
色気と落ち着きのある姿にめずらしくヒューが目を見開いている。元々肌の色は白く、顔立ちは人にはみられないほど整っているのだ、特に今日のようにめいっぱいおしゃれした姿は本当に美しい。
集めに集めた情報が頭の中でぐるぐる回っているといっていたが、本人が目の前で自分の姿をみて驚いているのだ。魔王様の動きがぎこちなくなっている。
「とりあえず、いただきましょう」
めずらしい郷土料理でなかなかおいしい、ケントはぺろっと食べてしまった。魔王様は胸がいっぱいなのか食欲がないらしい。
「で、このお嬢さんを連れて帰っていいの?」
「本人の許可を取ってからですよ」
「ずいぶん待ったんだけど、結婚を前提として今ここに来ているわけだし、もういいでしょう。私はいつでもいいよ、今日明日にでも結婚していい、あなたはどうなの?」
「あっ、えっ、どう?」
真っ赤になってうつむく姿が嫌っているようにはみえない、恥じらう乙女だ。
「とりあえずベルリハルト家をみてください、それから判断してくれたらいい。この後一緒に行って私の家と私をよくみてください」
それと連れて帰ることのどこが違うのだろう。
「はい」
よしっ、決まった。この後のことは二人にまかせてケントと急いでN国へ帰った。魔の国からの苦情は受け付けない。




