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魔王の結婚  作者: ちゃい
7/8

引きこもり

 ユーデイアの独立は、ああだこうだと王太子がごねるから交渉が一カ月近くかかってしまった。兵を全部ひかせた後だから事務処理レベルのことなんだけど。


 N国の宰相様からいつまでもかかわっているな、と催促されたが、やっと調印式を迎えることができた。


 独立国ユーデイアが誕生した。王太子は王となり国の英雄となった、おめでとう、彼は実際信念だけでここまできたのだ、かなりがんばられてしまった。


 ヒュー・ベルリハルトもまあまあだね、くらいのねぎらいはしてくれている。そして魔王だ。


 彼女は魔の国でひとりになって考えたまま、ずっともだもだしている。家臣団が喜ぶほど城に引きこもって出てこない。

 いくら調べても非の打ちどころのない男なのだ。もういい加減そういう男だと納得したらいいのに、いつまでも調査している。


 「おかしいのよ、ヒューは人なの?」


 人外レベルだから大国②は王制が簡単に崩れてきているのだ。


 「いつ嫁に来るのかとしつこくきかれるのだけど、どうしよう?」


 嫁にいけよ、もう。あの人に目をつけられて、これだけいわれていて逃げられるわけがない。まだ遠慮しているうちに主導権を握らないと、本腰を入れてきたら好きなようにされるよ?国レベルで危険なんだけど、わかっているのかな。


 N国がその魔力量と不遇さからむりやり連れてきた、大国①のアレクシス・ファンジュールという突然変異の魔術師よりも少し魔力量は落ちるが、ヒュー・ベルリハルトには魔王並みの魔力がある。N国に来てくれるならどちらでもいいくらい欲しい人材だった。


 王制が大国②で確立する前に、王位を王家と争ったベルリハルト辺境伯家に長男として生まれ、辺境で着実に富を集めつつ王位をねらっているという家風の中で育ち、N国から魔力量の多い貴族の令嬢を代々何人も嫁に迎え、N国との血縁と魔力量を意図的に増やし続けて、サラブレッドのように遺伝子のいいところを受け継いだため多い魔力量と美しい姿を持っている。


 さらに厳しい家訓を守り、優秀な頭脳と魔法騎士を輩出してきたベルリハルト家の中でもトップといわれる実力を持ち、子供の頃からカリスマ性を発揮して他者を圧倒し続けて、今に至る。


 王以上のカリスマ性と政治的な能力により、若くして宰相位を得てからは国内改革に乗り出し、徐々に王家の権力を奪っていった男。


 あらゆる面でこれ以上の人間は生まれてこないだろうと、世界中に思わせる力があるのがヒュー・ベルリハルトだ。逆にここまで有名すぎるとN国は手を出さないが。


 それでいて性格的にはあっさりしていて話が早く、嫌味にきこえることはあっても正当な判断をする、冷たいところはあるが理にかなっている、ひどくクセがあって扱いづらいなんてことはない。他国の国家元首よりわかりやすいし話しやすい。

 わたしだけだとは思うが、付き合いやすい。


 魔力量に対して無駄に怖れる人が多い中で、本当の使用法とその功罪をわかった上での利用をしているので、そこまではするがそれ以上はしないという暗黙の了解がお互いにある。

 お互いの戦略が読みやすいし、やり方がわかりやすいのだ。


 魔王の婿に彼以上の男は最初からいない。


 ただ魔王という立場を理解した上で、彼がどこまで受け入れるのか不安はあったが、貴族出身のわりにはあっさり受け入れたことにおどろいた。

 人外との接触を貴族は平民以上に嫌うものなのだ。それも含めておもしろそうにしている。


 あとは魔王がヒュー・ベルリハルトを囲って権力を手に入れるのか、その逆か。

 お嬢ちゃんがのんびりしていると、あっという間にすべて、自分自身ですら国ごと彼の手の内に入ってしまうだろう。

 もう遅いのか、まだ間に合うのか。

 

 あのじわじわと締め上げるようなやり方をどこまで魔王が耐えられるのか、さらに反撃する力があるのか。


 たしかにおもしろいが、彼女は少し不利だ。


 


 


 

 

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