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第四話 ロミオでジュリエッと

俺の名は超人テレックス

電波の力を借りて変身する改造人間だ

悪魔王エンダイドとの戦いの日々を

回想するのが癖になっちまった

今回もその回想シーンから始まるのだが・・・

「くっ」

この俺、トドロキ・ヒリュウこと超人テレックスは

敵の悪魔人”オビトル”の罠にかかり大ピンチ

まんまと重火器の包囲網に囲まれてしまったのだ

『ぐはは、しねぃテレックスぅ!』

オビトルは逃げ場を失った俺に対して容赦のない攻撃を開始した

砲撃による攻撃が始まり粉塵の中で耐えるのみ

「一か八か、変身チェンジして突っ込むか?」

そんな考えを巡らせた時だった

どごぉぉぉん

急に敵陣の中央から轟音と共に火柱があがる

『な、何事だ!?』

悪魔人”オビトル”は突然の出来事に狼狽する

「何だ?」

俺も突然の事に驚く

どごんどごん

同じ様な火柱が敵陣のあちこちであがる

「よう!しけたツラしてんなぁ!」

乱暴だが凜としたこの声

「ミサキ!?」

声のした方向を振り返ると”アネゴ”ことミサキが

大型バイクに跨がり、逆光の中から現れた

「へへっ、アニキ!手助けに参りやした!」

側には弟分の”タクロウ”ことタクの奴もいる

「コガラシ博士からの贈り物さ!」

そう言って背中に背負っていた巨大なバズーカ砲を構え直すと

どごおおおん

威勢よく発射する

彼方で着弾し火柱が上がる

「さぁ、いくよっ!」

そういうとミサキは大型バイクを走らせた

「あぁ、行くさ!!」

俺もすぐさま変身チェンジして後を追いかけた





・・・所変わって、ここはとある町のとある酒場・・・

「はははっ!そういう訳だ!明日は頼みますよ、ダンナぁ!!」

ヒューム族の男”ロミ”は、そう言って気安くヒリュウの肩を叩く

その声に触発されて集まっていた仲間連中も

盃を掲げて意気上がる

ザワザワと周りが五月蠅くなる頃を見計らって

ロミはヒリュウにそっと耳打ちする

「・・・後で俺の部屋で・・・」


皆が寝静まった頃、ヒリュウは言われた通り

ロミの部屋を訪ねる

「・・・待ってましたよ、ダンナ」

「・・・俺はダンナじゃない。ヒリュウだ」

「解ってますって、ひりゅうのダンナ!!」

全く解ってないロミに辟易しながらヒリュウは部屋の中に入る

部屋の中にある小さな椅子に腰掛けるように進められ

これまた小さなテーブルに向かい合わせのように座るロミ

「・・・んで、向こうの・・・」

「・・・ん?」

もじもじしながら小声で話すロミに

意味が解らんと問いかけ直すヒリュウ

「だからっ!エルフ族の”ジュリエッ”の事だよッ!」

「馬鹿」

大声で怒鳴るロミの口を押さえるヒリュウ

「むがむが」

聞き耳を立てるが今の声に反応する者は居なかった様だ

「・・・ふぅ。気を付けろ」

「むが・・・申し訳ない・・・」

小さくなるロミにため息をつくも

「ほら。預かってた手紙だ」

そう言って懐から封書を取り出して手渡す

「はぁぁっ」

急に満面の笑みを浮かべて封書を手に小躍りし出すロミ

「おい、騒ぐなよ」

「解ってる解ってるゥ!あぁっ!ジュリエッの匂いがするゥ!!」

封書を手にくんかくんかするロミ

それをジト目で見るヒリュウ

俺の懐に仕舞っていたから

俺の匂いなんじゃないか?と思いながら

「封書には明日の打ち合わせのことが書いてある。確認しろよ?」

そう言って釘を刺しておく

急に小躍りを止めたロミはきりっとした表情に戻り

「あぁ!俺達は、これに賭けているんだ!」

そう言って瞳を輝かせるのだった



さて、事の次第を説明しよう

察しの良い方なら、うすうす感づいているかとは思うが

異世界における”ロミオとジュリエット”のお話だ

ヒューム族の城塞を後にしたヒリュウは

森林地帯にあるエルフ族の町に辿り着いた

・・・のだが

運悪く、その町は隣町のヒューム族と諍いの真っ最中だったのだ

見た目はヒューム族なヒリュウはスパイの疑いをかけられ

エルフ族に捕らえられ裁判をする事になったのだが

都合よく迷い込んだモンスターが暴れる騒ぎで

その力量を知られる事となる

その歓待の宴の中でそこの町長の娘

”ジュリエッ”に話を持ちかけられたのだ


敵対しているヒューム族の町長の息子”ロミ”

争いを続けている二つの町の

町長の子息子女同士

何の因果か出会った時から恋に落ちた

んで、お互いの将来の為に両町の

仲をを取り持とうと尽力したらしいが

上手くいかなかった!

最後の手段ってんで

駆け落ちすることにしたのだが

追っ手をかけられることを恐れて

何か上手い手はないかと思案していた時

仮死状態になる秘薬を手に入れたとの事

そんな最中、両町の緊張が高まり

ついに町を挙げてのぶつかり合いが起きる事となった


決戦の場所は近くのダンジョン

お互い選りすぐりの10名をダンジョン内に侵入させ

最下層にあるという”お宝”を先に取ってきた方が勝利

負けた方は勝った方の言う事に従うというおまけ付き?

・・・以外と平和的・・・

その決戦の日が近づいているという事もあって

ヒリュウは腕を見込まれてエルフ族の仲間となった

陰でこっそり町長の娘”ジュリエッ”に真相を明かされたヒリュウは

相手側であるヒューム族の町に潜入

そこでも腕を発揮してあっという間に用心棒となったのだった


かくして”二重スパイ”としてヒューム族の中に潜り込んだヒリュウは

隙を見て二人を仮死状態にして町の外に連れ出すという

任務を授かったのである


・・・長い前置きだなぁ・・・

そんなこんなで好き合う両者と連絡を取り終え

決戦の朝を迎えるヒリュウであった



「ぐはははは、今日で貴様らエルフ族はおしまいじゃ!」

「ハハハハハ、何の戯言を。終わるのはヒューム族の方だ!」

お互いの町長、ロミとジュリエッの父親同士がダンジョンの前で罵り合う

その周りには怒気をはらんだ町の住民が大挙して集まっている

「まあいい。見よ!此方の選りすぐりの10名を!」

ヒューム族の町長が腕を上げると

ヒリュウと”ロミ”を含めた10名が颯爽と現れる

「ハ、此方の10名の方が凜々しいな!」

そう言ってエルフ族の町長が腕をあげると

エルフ族の10名が現れた

その中には”ジュリエッ”もいる

お互いがお互いを見定めるようにして含み笑いを浮かべる

最もエルフ族はヒリュウの姿を見て、だが・・・

笑っているというか、鼻の下が伸びているロミを肘でつつくヒリュウ

「・・・はっ! オホン!長きに渡る諍いもこれで仕舞いだ!」

宣誓のごとく声を上げるロミ

・・・こんなんによく惚れたな・・・

ヒリュウは呆れてため息を漏らすが

よく見ると相手側のジュリエッも、ウットリとした表情でロミを見ていた

・・・実は似たもの同志かーい・・・

そんなヒリュウの思いとは裏腹に、お互いの気持ちはヒートアップする一方の様だ

そんな中お互いの町長が宣言する

「「では、いざ勝負!!」」

こんな所だけ息ぴったりにハモるのであった


お互いの陣営の10名が睨み合いながらダンジョンの入り口に向かう

ろくに前を見ないで入り口に向かう物だから

案の定、扉に双方の先頭がぶつかり

後ろの圧に押されて、あっという間に2名づつ脱落した・・・

そんな様子を見て、背後に陣取っていた皆さんは頭を抱えている

だが何事も無かったかのように残りのメンバーはダンジョンに侵入していった


突入してすぐの分岐路

お互い睨み合いながらそれぞれ分かれて進んでいく

暫く進んだ所でようやく緊張が解ける

「・・・さて、先を急ごう!」

ロミが皆を鼓舞するように声をあげる

それにメンバーが呼応する

・・・その前に・・・

ヒリュウは意気揚々と先頭を進もうとするロミの襟首をひっつかんで引っ張る

「ぐげぇっ」

トカゲがつぶれたような声をあげるロミ

さっきまでロミが踏んでいた床が崩れ落ちてトラップが口を開ける

「!げはっげは・・・」

そのトラップの底にある鋭利な剣先を見て全員が青ざめる

「ある程度攻略されたダンジョンらしいが・・・油断は禁物だ」

ロミを含め他のメンバーにも注意を促す

「先頭は斥候のスキル持ちにやってもらおう」

ヒリュウの呼びかけに応じ、斥候持ちのメンバーが進み出て行進が再開される


「ふひ、はひ・・・」

ロミの呼吸音はもはや絶望的だ

斥候持ちのメンバーを先頭にしてダンジョンを攻略しながら進んで来たが

次から次へと襲い来るモンスターやトラップにやられて

現在残っているのは、なんとロミとヒリュウの二人だけである

「なんでこうなる・・・」

死にそうになってるロミを引きずって歩くヒリュウは愚痴をこぼしていた

「ちょ、ちょっと、きゅうけいっ!」

ロミが叫びながら通路に腰を下ろすと

荷物から水筒を取り出してごくごく飲み出した

「・・・一応伝えておくが、向こうのパーティーはジュリエッ以外は全員敵だぞ?」

こんな調子で駆け落ちして、上手くいくんかいな?とヒリュウが溜息交じりに伝える

「はぁはぁ、だ~~い丈夫だってぇ!そこはよ!」

水分を補給して元気が出たのか立ち上がるロミ

「なんつったって、俺もジュリエッも町長の子供だぜ?」

自分に向けて親指をぐい、指し示す

「二人ならなんとかなっちゃうもんさ!」

にん、と歯をむき出して笑顔を作る

だめだな、こりゃ・・・とヒリュウは内心諦めかける

「兎に角、先を急ぐぞ。ゴールの最深部の宝箱部屋は近いようだ」

センサーの反応を感じてヒリュウが即す

「へーいへい」

ロミはその言葉に生返事をしながら

ブーツの踵をいじるために、片足立ちをして壁に手をついた

「あっ、むやみやたらに壁に手を触れるな・・・」

がっこん

ヒリュウが忠告する間もなくロミの片手をついた壁がへこむ

「「あっ」」

二人が同時に叫ぶと自分達の立っていた床下が全部崩れ落ちる

底にはお決まりの奈落が口を開けていた

「ぎゃぁぁぁぁぁっぁぁぁっっぁぁぁ」

悲鳴を上げるロミに崩れ落ちる足場を蹴って近づくヒリュウ

首根っこを引っ掴むと瞬時に発見した横穴に滑り込む

だがその横穴もトラップで二人は滑り台のごとく急降下していく

「びゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

ロミの情けない悲鳴を聞きながらヒリュウは周囲の壁の向こうに通路があるのを察知する

通路があるらしき方角へ壁を蹴り上げて破壊して移動する

「学習しない奴だな。さっきからトラップで仲間が減っていってるのに・・・」

引きずり込んだ通路で死にそうになってるロミに悪態をつく

「だ、だって・・・」

ごろごろごろ

追い打ちをかけるように、その通路にも大岩の転がってくるトラップが発動していた

「まーーまた、また」

逃げようとするが腰が抜けたようで動けないロミ

「って、俺は逃げなくても良いんだったな!」

ヒリュウは転がってくる大岩目掛けて正拳突きを繰り出す

「ちょうわっ」



「ここね」

此方はジュリエッ率いるエルフチーム

三人程のメンバーに減っていたがゴール目前だ

「ちょっと待って」

メンバーの一人が制止をする

「どうしたの?」

ジュリエッが訝しむ

「何か・・・来る」

微かな異音を聞き分けているようだ

どごごごおん

エルフチーム前方の天井が抜け落ちて

ヒリュウとロミが落ちてきた

「・・・よぉ」

なんとなく片手を上げて挨拶するヒリュウ

横にいるロミは瀕死の状態だ(単に疲弊しているだけだが・・・)

「ロミ! それと、助っ人さん!?」

エルフチームはロミの面識と共に

ヒリュウの面識もあるため

思わず声に出して叫んでいた

「あ、馬鹿・・・」

ヒリュウはまずいなぁと思いつつロミを見る

疲弊しながらもロミはその声を聞いていたらしい

「・・・す、助っ人・・・?」

声の主がエルフチーム全員の物だった為

さすがに違和感に気づいたらしい

「・・・まさか・・・」

気まずい空気が流れていると

天井が抜け落ちた影響で

ゴール前の部屋の扉が開いていたらしい


ごるるるるるっ


奥から獣のような唸り声が響く

その声にその場にいる皆が青ざめ

からくり人形のように

首をぎぎぎ、と声のした方に向けた


ごおおおおおおおおっ


開いた扉から出て来たのは

異世界ダンジョンお馴染み、”キマイラ”であった



3ヶ月ぶりに更新したと思ったら、一話完結じゃ無かった!

・・・何を言ってるのか解らないと思うが、俺も何を言ってるのか・・・

そんな訳で!異世界の怪物相手の難局を無事に解決出来るのか!?

ロミとジュリエッの二人の行く末は!?

次回”超人テレックス”

第五話 キマイラも喰わない

「俺は、必ず元の世界に戻る!」

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