9 マスクに刀に狼?!謎の敵、現る!
やっと自分の中では1話終わった感じです。
やっぱ世界観から書くのは駄目ですね・・・。
その少女は息を切らし疲れていた。
「ハア、ハア、・・・アルちゃんが一回見失ったっていう変なマイナスエネルギーをもう一回見つけたっていうけど、こんな急ぐ必要ある?!」
「急がなきゃまた見失うとこだったキュ!それにちゃんと追いつけたキュ。」
少女の隣には、サイズがぬいぐるみくらいのハムスターみたいなのが浮いている。
「あれは・・・変身か?」
冬先琉斗は考えていた、あれはきっとウルフェンから聞いた、ウルフェンを一瞬で倒したという少女だろうと、そしてその隣の「アルちゃん」と呼ばれてる奴が天界というとこにいる少女の契約者だろうと。
しかし、それ以上に琉斗には違和感みたいなものがあった。
何だ?この感じ。俺はあの娘を知っている?
いつどこで?多分あの娘は人間だ。どっかで会ったかもしれないけど、・・・いや変身したあの娘を知ってるぞ?!
なんか大事な事を忘れてるような・・・。
「それより気を付けるキュ!あの、お面をを着けてるの、今までに見たことのないエネルギーだキュ。」
お面を着けてるの・・・・あ、俺か。
「分かった。そこのアナタ!!」
少女が琉斗に指をさす。
「あなたも町の人達から、ハッピーを奪おうとしてるの?!」
「え?いや、・・・違いますけど。」
突然の少女からの質問に、琉斗は戸惑いながら否定した。
「え、違うの?」
少女もそれは予期していなかったのか、驚いている。
「騙されちゃダメキュ!あれは間違いなくキングサタンの手先キュ!」
キングサタン?誰それ。
それより何で俺そいつの手先みたいな感じになってんの?!
「あのー、それ多分ごか・・。」
「は、そうだった!さっき戦ったのと同じ悪いエネルギーを感じ取れるし刃物とか危ない物もってるもんね!」
聞いちゃくれねーーー。
負のエネルギー持ってるからって、そのナントカサタンの手先にならんだろ普通?!
とりあえず手に持ってる刀を捨てて、誤解を解かないと、なんかやばそう。
「すんません、俺実は・・・。」
そう言いながら琉斗が刀を地面に置こうとすると、
「さっきから聞いてればお前ら!!やっぱりキングサタン様の邪魔をするつもりか!!」
ウルフェンが横から叫んだ。
キングサタンの手先近くににいたーーーーー?!
ウルってジェンダーさんに仕えているんじゃないの?
「わあ、犬が喋ってる。」
冬先琉斗が混乱してるのを他所に、少女はウルフェンに視線を向けていた。
「俺は犬じゃねえ!そんなことより、忘れたとはいわせねーぜ。お前にやられた恨み、ここで晴らしてやる!!」
「私、あなたと会った事あるっけ?」
少女、いや、夢見きららの疑問も当然である。
彼女からすれば、以前きららを襲おうとしたウルフェンとはサイズや二足歩行から四足歩行になってたりと、姿が随分と違っていた。
「お前が契約した時の事だよ!!」
そんなことはお構いなしに、ウルフェンが怒りに身を任せながら叫ぶ。
「ケイヤク?・・・あ、もしかして私がスマイルハピネスになった時にアルちゃんを食べようとしていた狼さん?!」
「やっと思い出したか。」
「だって見た目が全然違うじゃん?!」
「それは、・・・色々あったんだよ。だが、そんなことはどうでもいい!今日こそは決着をつけてやる!!」
そんなウルフェンと夢見きららの、たわいのないやり取りを聞いて、頭に雷でも落ちたかのような衝撃を受けた男がいた。
「スマイル・・・・ハピネス・・・?」
その声は誰にも聞こえないくらいの小声で発せられた。
そして冬先琉斗はここがどんな世界かを悟り嘆いた。
ここアニメの世界じゃねーーーかーーーーー?!
え、嘘だろ?ここ異世界じゃなくてアニメの世界の話?しかもよりによってスマイルハピネスの世界じゃん。
全然俺このアニメ知らないし、唯一見た記憶といえば前世で転生する前にちょろっと見たくらいなんですけど?!
しかも俺、悪役の立ち位置にいない?!いや、よく考えれば魔界といい少し暗い雰囲気といいそんな感じはしてたよ?!
でもウルやジェンダーさん全く悪役っぽくねーーー。なんなんだこの世界ーーーーー?!
そんな琉斗の衝撃を他所にウルフェンと夢見きららの言い争いは続く。
「やっぱり貴方も皆からハッピーを奪うの?!」
「当たり前だ。そうしねーと人間どもから負のエネルギーが奪えねえからな。」
「きらら、連続でもいけるキュ?」
アルちゃんと呼ばれている、ぬいぐるみサイズのハムスターみたいなのが、きららを心配する。
「いけるよ。皆のハッピーは私が守る!!」
夢見きららは誇りを持って叫ぶ。これが自分の使命だと信じて。
「フン、やっとやる気になったなそれに俺にだって負のエネルギーが増している。」
ウルフェンの言う通り彼の体から負のエネルギーが溢れている。
ウルフェンは気持ちが高ぶる。
契約前には届かねえが明らかに力が上がってやがる。フン、俺の契約者もやる気を出したってことか。
「いくぜ!リュ・・・・・なぜ落ち込んでやがる。」
ウルフェンは勘違いをしている。負のエネルギーとは人のマイナスな感情、そして今の冬先琉斗の感情は低落、つまりは落ち込みである。
「ん?・・・ああ、悪い聞いてなかった。」
「聞いてねえってお前、あいつらと戦うって言ったんだよ。」
「は?逃げるんじゃねえの?」
琉斗の答えにウルフェンは一瞬呆然とした。
「いやいや無理でしょ。だって俺ら今悪役としてここにいるんだよ?絶対に正義の方に勝てるわけねえだろ。」
琉斗の主張に、ウルフェンには何を言ってるか全く理解できなかった。
「悪役?正義?何の話だ?」
「あーーーくそ、とりあえず逃げるぞ!俺達じゃ絶対に勝てねえ!!」
琉斗が逃げようとするときららが突っ込んで殴り掛かってくる。
「うお?!」
なんとかギリギリ躱すも、振りかぶった拳は地面に向けて放たれ小さいクレーターができた。
は?地面がえぐれて・・・・いやいや、こんなん女の子が、いや人間が出していい腕力じゃねーぞ?!
こんなんまともに受けたら・・・・死ぬわ。あれ、魔法少女ってこんなにバイオレンスなアニメだっけ?
冬先琉斗は自分の顔から血の気が引いていくのをハッキリと実感した。
なあ、これって子供用のアニメだよな?俺には目の前にいるスマイルハピネスが俺を倒そうとしているようにしか見えない・・・・。
「そこ!!」
「・・・!」
琉斗が考え事の隙に、きららが琉斗に拳を放つ、琉斗は避け切れず、顔を守るように反射的に腕を前に出すも、きららの拳が琉斗の腕に直撃する。
その直後、琉斗の体が吹っ飛び、公園に生えている木に激突する。
「・・・・ッ、ア、ガッ。」
い、痛え。けど、生きてる?全身に痛みがあるだけで骨とか折れてる感じはない。
もしかして今、俺が変身して力が上がってるからか?
だけどスマイルハピネスの方がよっぽど強いな。
「・・・やっぱ悪役じゃ、正義の魔法少女には勝てねえな。」
そう呟きながら琉斗は顔を上げて前を見ると、狼になっているウルフェンと夢見きららが闘っている。
ウルフェンがスピードで、きららを翻弄しながら爪で攻撃しているが、きららは戦う前から疲れている感じで、そのお陰で戦えてるような感じだ。。
「ピンク、大丈夫キュ?さっきの戦いで力を使ってるキュ。」
アルがきららをピンクと呼び、心配する。
「・・・辛いよ。でも、だからって私が諦めたら町の人達がハッピーじゃなくなっちゃうかもしれない。だから私は諦めたりしない!!」
そう言うと、きららのスピードが上がった。
「はああああああっ!」
きららがウルフェンに蹴りを入れた。
「何だと?!」
きららの予想外の強さの上昇に不意をつかれたウルフェンが蹴りをくらい、そのまま吹っ飛ぶ。
「これで、決めるよ!」
きららが追い打ちをかけようとウルフェンに一気に近づく。
「ピンク、危ないキュ!!」
しかしアルがそれを止める。
「え?・・うわ!!」
あと一歩でウルフェンに攻撃を入れられるところで冬先琉斗が、きららに刀で切りかかるも、ギリギリ避ける。
「危なかったー。ありがとアルちゃん。」
「気を付けるキュ。あのマスクの敵、狼より強い負のエネルギーを感じるキュ。」
「うん、そうだね。近づくのは危険だね。」
アルと夢見きららは、マスクを着用して刀を抜刀している冬先琉斗に注意を向ける。
「逃げろ、ウル。」
「・・・何だと?」
一方、琉斗はウルフェンに逃げろと言う。
「俺がなるべく時間を稼ぐから逃げろって言ってんだよ。」
「そうじゃねえ!あいつらを前に逃げるのかって言ってんだ!!」
「ああ、そうだよ!ぜってー俺達悪役には倒せねえよ!」
「ならテメエだけ逃げてろよ!!」
「お前が逃げねえと俺も逃げられねえだろうが?!」
ウルフェンは困惑した。
逃げる事に関して言えばウルフェンも理解はしている。
なぜなら、夢見きららとのパワーとスピードが余りにも差があるからだ。
このまま戦うのは得策ではないと、ウルフェンも分かっている。
だが、ウルフェンは敵を前にして意地を張ってしまい、無謀にも戦おうとしていた。
しかし問題は、ウルフェンが戦うと言ってるにも関わらず、今すぐにでも逃げたいはずの冬先琉斗が、自分を逃がす時間を稼ぐと言って、戦わないと言ってたのに戦おうとする矛盾に訳が分からなかったからだ。
「お前、訳わかんねえぞ。」
ウルフェンが琉斗に悪態をつくように言う。
「あ?俺からすれば、そんな瀕死の状態で戦おうとする、お前が意味不明だわ。」
琉斗も悪態をつくように言う。
「・・・分かった。逃げりゃいいんだろ?」
「そうだよ。尻尾巻いて逃げてろ。」
「チッ。」
ウルフェンは舌打ちをすると、公園から外に出て街道に逃げようとする。
「あ、逃げる気?!」
「おっと、少しばかり待ってくれや。」
夢見きららが、ウルフェンを追いかけようと一歩踏み出そうとするのを、冬先琉斗が刀の切っ先をきららに向けて牽制する。
「先ず、あのマスクの手先を何とかしないといけないキュ。」
「そうだねアルちゃん。」
きららとアルが会話してるのを他所に、琉斗は自分を蔑む様に心の中で悪態をついていた。
はーー。なーーーにやってんだろーーなーー俺。
どう考えたってウルを置いて逃げる場面だって言うのに、何で昨日知り合ったばかりの奴を庇ってんだ?
元はと言えば、俺って巻き込まれた被害者だよな?でも今なら、話せば向こうも、なんとかサタンの手先じゃないことが分かってくれるかな?
だけど、さっきは切るつもりで切ったわけじゃないけど、彼女に切りかかったんだよなあ。
・・・ま、向こうは俺と同じくらいの歳の女の子だし子供向けのアニメの世界だから、いざという時には「あそこにUFOがある。」って言えば騙せれるだろ・・・多分。
でも俺には武器がある!
この刃のない刀があれば、奴らも俺には簡単に近づけねえ!!
・・・・は?
刃とは、対象を切断したりする構造である。
刃のない刀は、簡単にいうと木刀の木の部分が鉄。つまり切ることにおいて、まったく役に立たない。
当然、琉斗は驚く。
嘘だろ?!この刀、なんの役にも立たねえ?!
だけど、ただの女の子が刀について詳しいとは思えない。脅しくらいには使えるだろう。
冬先琉斗が、そう思った矢先。
「なら離れて戦えばいいんだ!!」
そう言って、夢見きららが何やら力を貯めている。
そして次の瞬間。
「ハピネス、ショット!!」
三つのサッカーボールくらいの大きさのピンク色のエネルギー体みたいなのが出た後、それがビームとなって琉斗に襲い掛かる。
その刹那、琉斗は思い出した。ウルフェンが、彼女はビームみたいなのを撃って、瀕死にまで追い込まれたということに。
一方ウルフェンは琉斗の言うとおりに街道に逃げていた。
「クソ!結局二回も逃げちまっている・・・。琉斗の言っている事は本当だ、俺じゃ勝てない。だが、琉斗でも勝てるわけじゃねえ。なのにアイツはッ・・・・。」
ウルフェンは心配そうに後ろを振り向く。そこには無表情なマスクを着けて必死にきららから逃げる冬先琉斗がいた。
「・・・・。」
「あ、ウル。助けて!!」
「いや何でテメエが逃げてんだよ?!」
「俺があの娘に勝てるわけねえからだよ!!」
「じゃあ何でさっき足止めするとか言ったんだよ?!全然できてねえじゃねーか!!!」
ウルフェンは一瞬でも琉斗を心配した自分を呪った。
「ビームみたいなの出せる奴に刀しかない俺がどう立ち向かうっていうんだよ?!」
「逆ギレしてんじゃねえ!」
「とりあえず今は逃げるしかねえ!!」
ああ、神様がいるなら何で俺はこんな危ない事をしなければいけないんでしょうか・・・・・。
冬先琉斗は無駄な祈りをしながら必死に逃げる。
さてこっからストーリー進めます。(これ何回言ってんだろう)
あと手先とか言ってるのは、キングサタンの手先って事です。
ここでのマスクとは、まぁ東京○ーるみたいなマスクのイメージでお願いします