6 人間はたまに変な勘違いをする
すいません、今回は新キャラと冬先琉斗の勘違いの回です。
ゲートを抜けた先に見えたのはでかい西洋風の城だった。
空は雲で覆われて明らかに暗い雰囲気で、城には大きな植物の根が貼りついておりいかにも魔界という雰囲気を出しているのだが、
「何か余り怖い感じはしないな。」
なんでだろう?俺の精神がおかしいのかな?まぁ怖くないってのは俺にとってはいい事だからいいんだけど、なんかあの城を子供っぽいと思った事はウルには黙っておこう。
「そういえば人間の俺が簡単に魔界なんか来ていいんだよね?」
「・・・・。」
「おい、なぜ黙る。」
え?これ今の俺の状況ヤバくないか?浮かれてたわー。
「出来れば帰りたいんですけど帰れます?」
「ダメだなんとか俺のボスに許してもらう。」
「許してもらわなければ?」
「消される覚悟を持て。」
ウルフェンは当選のように覚悟を決めて、冬先琉斗はこの世の終わりみたいな顔をしている。
「な、なんで俺までそんな理不尽なことに巻き込まれなきゃいけないんだよ!!」
「情報が漏れないようにするためだ。当たり前だろ。」
「そこじゃないよ?!」
ああ畜生、やっぱここは魔界だよ。誰だよ子供っぽい雰囲気とか言った奴は?・・・・俺だーーーー。
琉斗はストレスでおかしくなった。
「安心しろ、天界側の奴らならともかくお前は人間だ。俺のボスに俺から説明するから多分安心だ。」
なんか天界とか気になるワードが出てきたけど、そんなこと聞いてる余裕が今の俺の精神力が無いから無視しよう。
「分かった、本当に頼むぞ。」
「ああ、だが念のためにここの連中になるべく会わないように行くぞ。」
「いや、なるべくどころか絶対に会わない方がよくね?人間だし。」
「確かにお前の服装は違和感があるかもしれないが安心しろ、リュウトみたいな見た目が人間のやつもいるし俺のボスも見た目は人間だ。」
え?マジかよ。そんなもんなのか?
まあ、変装とかをしなくて済むなら楽でいいけど、俺はてっきりゲームやアニメでいう、もっと禍々しい感じの奴を想像してたけど、魔界のボスが人の見た目なら意外となんとかなるか?
そうして冬先琉斗とウルフェンはすんなりと城へと入っていく。
「なあウル、この城門番とかいなかったけど大丈夫か?」
「門番?」
「城の入り口を見張る人だよ。・・・あー、この場合は魔族って言ったらいいか?」
「?、そんなの必要か?あと魔族ってなんだ?」
あれ、ここって結構セキュリティが、ガバガバな感じなのか?なんか拍子抜けだな。
てか、門番の概念すらないのか?
「あー、うん必要ないならいいんだけどね。あと魔族っていうのは俺が勝手に言っただけで、「魔界の奴ら」なんてちょっと失礼かなと思ったから。もしかして種族ごとに呼び方とかあった?」
「魔界は種族ごとで呼び合ったりはしてない。お前が呼びやすいなら好きにしろ。」
じゃあこれからは魔族って呼ぶか。短くてしっくりくるからな。・・・・あれ?まてよ。
「なあウル。なんで門番とかは知らないのに種族のことは知ってるんだよ?」
「人間界のことについては少し勉強したからな。」
「侵略するため?」
「だいたいそうだ。」
おっとこの中型犬サイズの狼は人に対して堂々と侵略行為を言っちゃったよ?・・・コイツもしかして馬鹿なのか?
そう思いながら冬先琉斗は自然にこみ上げてくる笑いを我慢しようと冷静になるが、直ぐにある考えが浮かんだ。
・・・・・いや、まてよ。なら人間界は間違いなくヤバイよな。そうなると魔界に人間がいたら捕まえて奴隷とかにするだろうなあ。なるほどね♪♪
「・・・・・・・・嵌められた。」
冬先琉斗は、もの凄くか細く、弱く、本人の耳にしか聞こえないような声で言った。
「おい、何か言ったか?いくら俺の耳がいいからって聞こえないぞ。」
へー狼って耳がいいのかあ知らなかった。
・・・・・こんの犬ッころがーーーーーーーーー!!!
コイツなんて奴だ!最初から捕まえる気だったのか!ああ人生終わったわ。俺も浮かれてたわこれは。
・・・いや、まだだ。まだ死ねない。俺は家に帰ってだらだらと過ごすんだ!帰れても明日にはテストがあるとしても!!帰ったら勉強しろと言われるけど!!
・・もう魔界にいるのもアリか?いや、奴隷とかは嫌だな。
「おい!しっかりしろ!!ゾルゲの負のエネルギーを感じる。なるべく下手くそな事を喋るなよ。」
そういいながらウルフェンは歩いている廊下の向こうにある曲がり角を顔で促した。
「ああ分かったよ、くそ野郎。」
「おい、リュウトその負のエネルギーは・・・おいさっきなんて言ったかもういっぺん言ってみろ。」
やばい、つい本音が。てかゾルゲって誰だよ。
そう思った瞬間曲がり角から、肌白くて耳がとんがってて髪までもとんがってて触ったら痛そうな奴がいた。
「お?な~んかウルフェンの野郎の気配がしたから来てみれば、見ねえ顔だな。」
おいおいどうする、喋ってきたけどどうしていいかわかんねーぞ。
冬先琉斗が戸惑っているのを見たのかウルフェンは、
「ええ、そのとおりです。」
「おお、そうかそうかケケ。じゃあお前ら誰に仕えるんだ?ヴァン様か?ナイトメア様か~?あのお方はいいぜ~、とても恐ろしいお方だ、ケッケッケッ♪」
「いえ・・我らはジェンダー様のところに仕えようかと思っておりますので。」
「ああ?・・・ケケケケケ♪おいおい正気かよ、あのサボリ魔のジェンダーのところか。あそこは負のエネルギーの収集率が、三幹部の中で最下位の落ちこぼれだぜ?」
そんなやり取りが行われている中、冬先琉斗はウルフェンに対してかなりの憎しみを抱いていた。
この野郎、我らが仕えるだと?よくも軽々と言えるなオイ。しかし、まるで噓を言っていないように聞こえるのがさらに腹立つ。
馬鹿かと思ったが、とんだペテン師野郎だぜ。
「ま、お前ら弱いから中々お似合いだぜ・・・・おっと、そこのお前もそんなに負のエネルギーを荒立たせるなよ。」
「・・・俺のことか?ならすまない。次、気を付ける。」
「ケケ♪面白いなお前。おお!いぬっころもよく見たらでかくなって狼になってんじゃね~か♪」
その時ウルフェンのサイズが狼になっていて、ウルフェン自身も、驚いていた。
「!、ええ、ですからジェンダーさんのところで役立つかと思います。」
「そうかい、ま、精々頑張んなあ~ケケケ♪」
そう言い、ゾルゲは歩ていった。
「チッ、ゾルゲの奴、好き勝手に言いやがって。しかし、この負のエネルギーはまさかリュウトから?これが契約の力?」
「なあウル、俺トイレ行きたいです。」
ウルフェンが自身の変化について考えるのを他所に、冬先琉斗はこの城から逃げようと嘘をついた。
ヤバイヤバイヤバイ、ウルだけならいけるかと思ったらコイツなんか本物の狼になってやがる?!
もしかして俺を逃がさないために脅しているのか?!くそ、とりあへずコイツから離れなければ!
「トイレ?何だそれは?そんなもの初めて聞いたぜ。」
「え?いやほら出すものを出す場所だよ。」
「何を出すんだ?」
「え、いやあ・・・・おしっことか。」
冬先琉斗はとてつもない羞恥心に駆られた。
「なんだそれ?人間界はよくわかんねえ事をするな。」
ああああああ?!え?なに?もしかして魔族ってトイレ行く必要とかないの?!じゃあ只々俺が恥をかいただけか?!
いや、別にコイツはそういうのを知らないからいいか?
そういえば、確か食事とかいらなかったんだっけ。
つーかこの歳になると言うのが何か恥ずかしいんですけど?!なぜだろう俺だけが恥ずかしいと感じてるのか?!
「おい、なにやってる。行くぞ。」
「・・・・ああ。」
ウルが狼になって明らかに危険性がでるわ、恥を晒したりでもう誰か殺してくれ。
そうして冬先琉斗は重い足取りで歩いていく。
次はなるべく速く投稿してストーリーを進めていくよう頑張ります。