39 ドッジボールは人間同士でやるから楽しい
就活という地獄があったりスマブラやったりでした。
スマイルハピネスとマイナスランド、両陣営はお互いの信念をかけて対決する・・・ドッジボールのルールのもとに。そこに特にこれといった信念のない冬先もいた。
(あー、帰りてえ~・・・。)
冬先は気の抜けたことを考えているが、そんなのはお構いなしにドッジボールは始まろうとしていた。
「えー、それでは、スマイルハピネスとマイナスランドのドッジボール対決を始めます。」
「ボクもやるキュ!」
ドッジボールの審判は、試合に参加しないウルフェンとアルクがやることになった。
スマイルハピネスのチームはオレンジ、ピンクが内野、イエローが外野をすることにし、マイナスランドのチームはバーラ、マリーが内野、冬先が外野である。
「そんな自己紹介はいいから、さっさと始めなさいよ!」
マリーは速くドッジボールがしたくてウズウズしていた。
「それじゃあ、ボクがボールをあげるから、そこからスタートだキュ!」
アルクはドッジボールのコートのセンターラインでボールを投げる準備をする。
「バーラ!アンタが一番背がおっきいんだから、絶対にボールのシュドウケンを取りなさい!」
「は!お任せください!!」
(めっちゃドッジボールに真剣だなぁ・・・。)
マイナスランドチームのコートからは、バーラがジャンプボールに選出された。
「よーし、行ってくる!」
「後ろは任せて!オレンジ!!」
「が、頑張って!」
スマイルハピネスチームのコートからは、オレンジがジャンプボールに選出された。
「それじゃ!スマイルハピネス対マイナスランドのドッジボール対決!始めるキュ!」
オレンジとバーラがコートのセンターラインに立つと、アルクが2人の間で、ボールを真上に投げた。
「ハアアア!」
「おりゃああああ!」
真上に高く飛んだボールに向かって、バーラとオレンジはジャンプした。
「なめるなァ!」
「くっ!」
お互いにジャンプしたが、バーラの方がオレンジよりも身長が高かったため、バーラがジャンプボールを制した。
「よくやったわバーラ!さあ、行くわよ!!」
マイナスランドのコートに入ってきたボールをマリーがキャッチすると、マリーはスマイルハピネスのコートに向かってボールを投げようとする。
(そういや、外野って何すればいいんだろう?いつも他力本願だったから分からん・・・まあ俺が戦力になるわけないから、ボールは内野のパスするように投げればいいか。)
マリーがボールを投げる直前、冬先は自分が今、この状況でどう立ち回るのが最善かを考えていた。その結果、冬先は裏方、いわゆるサポートに徹することにした。
だがこの時の冬先は自分の戦力を過信していた。ドッジボールという一見、平和なスポーツといえど、参加している選手が一体どれほどの超人的な者たちかを、冬先は忘れていた。
「それえ~~~~~!!」
マリーが真っ直ぐにボールを投げた。ボールは真っ直ぐ、一直線にスマイルピンクに向かう。
「うわあ!」
ピンクはギリギリのところを避け、ボールはそのまま外野の冬先に向かっていった。冬先はボールを取ろうと、ボールの射線上に真っ直ぐ構える。
(さーて、マジメに外野をするのは初めてだけど、今日のドッジボール大会の外野の動きを見た感じ、無理にボールをとろうとしてなかったんだよな、内野から外野って結構距離があるから内野からボールを全力で投げても、よほど力が強くない限り外野の来るボールは減速して取りやすくなっていたから、ボールが減速するのを待てば・・・ちょっと速いな、子供とはいえ、やっぱ人間を超えているな・・・・・てか減速するどか真っ直ぐこっちに向か・・・・!?まず・・・!!)
冬先は弾丸のようなスピードで向かってくるボールに身の危険を感じると、冬先は素早く避けた。
ボールはそのまま体育館の壁に向かっていき・・・。
ドカーーーーン!!!!
ボールはとんでもない爆発音のような凄まじい音と共に壁えお使って跳ね返ると、そのままスマイルハピネスのコート内に落ちた。
「ちょっと!何してんのよ!・・・えーと、名前は・・・・・もういいわ!次はちゃんと取りなさいよ!ゲボク!!」
「・・・・・・。」
マリーは自分が投げたボールを取ってまらえなかったどころか、スマイルハピネスのチームにボールの主導権が渡ったことに腹を立て、冬先を「下僕」呼ばわりとかなり侮辱した別称で呼んだが、冬先は腹を立てることはしなかった。いや、腹を立てれるほどの余裕が冬先にはなかった。
(バ、バカか俺は?!子供向けアニメだからって問題ないと油断した・・・!!ドッジボールとはいえ、コートの中にいるのは俺以外は全員バケモンだった・・・!)
冬先は油断していた。今回はスマイルハピネスと殴り合うわけじゃないから、命の危険はないだろうと油断していた。だが、マリーの子供の見た目とは真逆の超剛速球なボールに冬先の慢心は打ち砕かれた。たとえスマイルハピネスがボールを投げてなかったとしても、冬先は自分とスマイルハピネスのレベルの差を思い出すには十分だった。
「よっしゃ!今度はアタシたちの番だ!おりゃああああ!」
啞然としている冬先をよそに、オレンジは反撃のボールをマリーとバーラがいる内野コートに思いっきり投げた。ボールはマリーが投げた時と同じくらいの速さで、弾丸のように真っ直ぐにマリーとバーラを狙う。
「くっ、速い!」
「キャハハハ!たーのし~~♪」
苦しそうにボールを避けるバーラとは対照的に、マリーは年相応な笑顔で楽しそうに避ける。ボールはそのまま減速せず、外野のイエローに向かっていく。
「ひっ?!」
だが、弾丸のようなスピードのボールにイエローも咄嗟に避けてしまう。ボールはそのまま壁に当たり、大きな爆発音と共に跳ね返ると、マリーとバーラがいる内野に落ちた。
「ご、ゴメンイエロー!!イエローのこと考えてなかった!次はもう少し抑えるから!」
「う、うん、ごめんね・・・。」
オレンジは全力でボールを投げた結果、外野のイエローが取れないくらいの威力を出してしまったことに、手を合わせて謝罪した。
「キャハハハ!イエローのおねえちゃんって、マリーより年上なのにビビりなんだ~♪なっさけな~い♪」
マリーはイエローがボールを取れなかったことについて、自分との歳の差を言い分にしてイエローを煽った。
「む・・・オレンジ!サチのことは気にしないで思いっきり投げて!」
「え?!ほ、本当に?!」
「うん!次はちゃんと取るよ!!」
イエローはマリーに煽られたことで対抗心を燃やし、オレンジに全力の投球を求める。
さて、いよいよドッジボール対決の会場の雰囲気がヒートアップしていく中、1人ドッジボールコートでアウェイな存在がいた。冬先である。
(やべえよどうしよお・・・まだ外野でマシとはいえ、あんな殺人ボールなんか食らうのは嫌だ!死ぬことはないだろうけど、骨折くらいならなんかなりそうだし!!てか、ウルは何してんだよ!)
冬先は自分の身の危険に精神がナーバスになっており、まともな判断ができなくなった影響なのか、珍しくウルフェンに頼ろうとした。
「・・・・・・。」
ウルフェンは冬先と目を合わせようとせず、目に生気は宿ってなかった。その眼には冬先の安否を深く考えないようにする意志があった。
(あのクソ犬~~~~~!!)
冬先は逆恨みした。
そこから冬先の記憶はおぼろげだった。自分とは次元の違うドッジボールのゲームスピードについていくことができなかった。途中、マリーが冬先が外野としての役割を果たしていないことについて激怒していたが、冬先は外野であるにも関わらず、ボールを避けることに必死で聞いてなかった。
一方で、スマイルハピネスチームの外野であるイエローは最初こそボールが取れなかったが、次第にボールをキャッチできるようになっていき、先ほどまで一進一退の攻防を繰り広げていた両チームは、だんだんとスマイルハピネスのチームの方に優勢になっていった。
外野が機能し始めたスマイルハピネスチームは、じわじわとマイナスランドのチームを追い詰めていき、ついにバーラがボールに当たった。
次でドッジボールは終わる予定です




