球技大会 「結」
youtube投稿してて忘れてた、申し訳ない
体育館、それは球技大会の夢の後、いろんな人の思いがそこにはあった、友情、努力、勝利・・・・・。
(そんな少年漫画みたいな三原則をやったんだからもう体育館の出番はなくていいだろ?!)
そんなことを考えながら冬先は体育館前まで足を運んでいた。
体育館内からは、とてつもないマイナスエネルギーが渦巻いている。物語の歯車は予定通りに進んでいる。
(ウルがいなかったら帰ろう。)
そこにはもちろんのごとくいるスマイルハピネスとバーラ、そしてなんとキングサタンの娘であるマリーと・・・・・普通にウルフェンもいた。
「・・・・・・・・・。」
冬先はある程度予想していたのか、そこまで驚くこともなく、その場で様子をうかがうことにした。
「そ、そんな・・・マリーちゃんが、キングサタンの娘?」
「うわあ、あの時の子供っぽいお姉ちゃんって、スマイルハピネスだったんだあ、キャハハ♪すっごい偶然~~♪♪」
一方で体育館の中では、スマイルピンクがマリーの正体が敵であるキングサタンの娘であるという事実に動揺していた。
(何だ?あの2人はお互いに面識があるのか?)
事態の把握ができていない冬先は、会話から事の状況を推理するしかなかったが、どうやらスマイルピンクとマリーは前にも面識があったのだろうと推理する。
「う、嘘だよね?!マリーちゃん!!!」
「キャハハハハハハ♪残念~嘘じゃないも~ん、マリーはパパと一緒に人間を皆マイナスエネルギーにしちゃうんだも~ん。」
「そ、そんな・・・・。」
ピンクはマリーの言葉に段々と顔が真っ青になっていく。
「ピンク!ツライかもしれないけど、マリーは私たちの敵なんだ!!」
「しっかりするキュ!」
「オレンジ・・・。」
今にもその場から崩れ落ちそうなピンクを、オレンジとアルクが大きな声でピンクの気を立ち直らせようとする。
(・・・なんか、雰囲気が重くね?)
体育館の重い空気に、冬先は少し意外だと思った。
(魔法少女のアニメって、子供向けのアニメなのに意外と重たいんだな。・・・まあ、俺はスマハピのアニメなんて3、4歳のころに、たまに見てた程度だったから全然しらんけど。)
冬先は自分の中の先入観によれば、スマハピのアニメは女の子向けの明るい世界観だと思ってたので、自分が思ってたよりもスマハピのアニメは少し大人向けのアニメなのだと、この瞬間に冬先の価値観が変わった。
「キャハハ♪ねえねえ、そんなことよりさ、速くマリーと遊ぼうよ☆」
スマイルハピネス達の雰囲気が重いなか、その重たい空気の元凶でもあるマリーは彼女らの都合などお構いなしに、無邪気な子供っぽくスマイルハピネスに話しかけると、マリーの体から密度の高いマイナスエネルギーが溢れる。
(!、マジかよ、あのクソガキのマイナスエネルギーやばすぎだろ。あの時へんに逆らわなくてよかったぜ。)
幼い容姿からは想像できないようなマイナスエネルギーに、冬先はマリーがキングサタンの娘だということを改めて思い知らされた。
「マリーちゃん・・・。」
一方でピンクは、マリーが自分たちの「敵」であったという事実に落ち込んでいる。
「きららちゃん!サチたちはきららちゃんの味方だよ!」
「・・・さっちー。」
しかし、イエローの言葉にピンクが反応した。
「あ、えと、あの、もちろん!サチはきららちゃんの味方なのは当然だよ!ただ、なんて言うか、そういうことを言いたかったんじゃなくて、えと、その・・・。」
ただ、ピンクを元気づけようと声をかけた当の本人が、思ってたことをうまく伝えることができず、パニック状態になっていた。
「ううん・・・伝わったよ、イエローの思い!」
しかし、ピンクにとってはそれで十分だった。イエローの言葉にピンクは立ち上がった。
まるで主人公のように。
「イエローの言う通りキュ!それにマリーちゃんはお子様だから、アルたちがマリーちゃんに悪いことは悪いって、教えておけば万事解決キュ!」
「ムゥ!ザ~ンネ~ンでした~、マリーはもう立派な大人です~!むしろお子様はアンタなんじゃないの~?そんな小っちゃな見た目だしね☆」
「ムッキー!ボクは子供じゃないキュー!この・・・バーカバーカ!」
「アー!バカて言った方がバカなんだ!バーカバーカ!!」
何故かアルクとマリーは、お互いに語彙力のない口喧嘩をしていた。
(おお・・・なかなか熱い展開になってきてる・・ここから一体どんな死闘が・・・・・。)
それはそれとして、冬先はこの後の展開が気になり、目が釘付けになっていた。だが、この時の冬先は油断していた。今、冬先は自分がさも傍観者のような立ち位置にいると思っているが、それは大きな間違いであったということに冬先は気がついていなかった。
「キャハハ!それじゃあ遊びましょ!この・・・・・ドッジボールで!!」
マリーは子供のように嬉しそうに笑うと、体育館にあったドッジボールを手に掲げた。
(うわ!そういうところは子供向けアニメっぽい!!)
「戦闘」ではなく、ドッジボールという「勝負」に、冬先は心の中でツッコミを入れた。
「フフ、スマイルハピネス!今度こそアナタたちをマイナスエネルギーに染め上げてあげるわ!」
(そして大人っぽいバーラさんも、ドッジボールにノリノリだあ!!)
そしてバーラの悪そうな笑みにも、冬先は心の中でツッコミを入れた。
「すいません、マリー様。ドッジボールの前に1つよろしいでしょうか。」
スマイルハピネス対マイナスランドのドッジボール対決が始まろうとしたその時、ウルフェンがマリーに話しかけた。
「なによ?せっかく今イイところなのに。」
ドッジボールをやる流れを止められたためか、マリーは不機嫌そうにウルフェンを見た。
「申し訳ございません。ですが、俺はこのように4足歩行ですので、ボールをキャッチしたり投げたりすることができないのです。」
ウルフェンはもっともなことを言った。ウルフェンの言う通り、4足歩行では2足歩行の人と違って、飛んでくるボールをキャッチし、投げることなど不可能である。
「なら、ウルはクチでボールをキャッチすればいいじゃない。」
しかし、マリーは無茶な要望を平気で要求してきた。
「マリー様、流石にそれは無理だと思いますけど。」
流石にこれにはバーラもマリーの言葉を咎めた。
「む~~!なによなによ!それじゃあお姉ちゃん達のチームが3人で、マリーのチームが2人になっちゃうじゃない!そんなのフコーヘーよ!フコーヘー!!」
マリーはウルがドッジボールのチームを抜けることで、スマイルハピネスのチームが3人に対して、マイナスランドのチームが2人になることで、チームの人数が不平等になるのを嫌がっていた。
「ええ、ですからそこの体育館の入り口で隠れているヤツに、俺の代わりとしてドッジボールしてもらいましょう。」
ウルフェンは笑顔で言うと同時に、冬先の顔がみるみるうちに青ざめる。
(あ、あのクソ犬~~~~~~~~!!)
冬先は忘れていた、ウルフェンは冬先と契約するために自らのマイナスエネルギーを半分も冬先に与えた。その影響なのかは定かではないが、ウルフェンは冬先が近くにいれば、どこにいるのかがマイナスエネルギーを感じて分かるようになってることを、冬先は失念していたのだ。
(ウルの野郎!俺がスマハピと戦う気なんてないの知ってんだろ!チクショー!心配して様子を見ようとか考えてた俺がバカだった!)
冬先はウルを心配して様子を見に来たことを後悔していた。
(フン、どうせリュウトの野郎、俺に対して何かしら怒ってるだろうがなあ、俺が今までどんな苦労をしてリュウトと過ごしてきたか分かんねえだろ?!毎朝毎朝、お前の母ちゃんに迷惑をかけないよう、学校に遅刻しないようにリュウトを起こしたり!いつも自分の部屋を散らかして、それを片付けるリュウトの母ちゃんに迷惑をかけないように俺が片付けてるんだからな?!たまにはその恩を返しやがれ!!)
だがウルにも思うところはあった。要するに2人はどっこいどっこいなのだった。
「ん?一体だれのことを言ってるのかしら?」
ただマリーは冬先が近くにいることは知らないので、ウルに尋ねた。
「ほら、以前マリー様と遊ばれていた・・・変な仮面の男ですよ。」
ウルフェンは冬先の正体を明かすわけにはいかないので、冬先が変身した時の特徴で教えた。
「あら?マリーのゲボクが近くにいるの!な~んだ、ゲボクはゲボクらしく、マリーのおそばにいるって分かってるじゃない!ホラ、出てきなさい♪」
マリーは体育館の入り口に隠れている冬先を呼び出した。
(え・・・に、逃げるか?いや、後が怖いなチクショー!!!・・・・・まあいいか、よく考えたらドッジボールで対決するだけだしな。命が危険になるわけじゃあるめえし。)
冬先は逃げようかと思ったが、逃げた後が怖いと判断し、やむなく参加することになった。
「・・・・・。」
冬先は変身すると、無言のまま体育館に入る。
「あ!あの時の怪しい仮面の敵だキュ!」
「ああ、だけどアンタの悪だくみも今日で最後だ!」
「ムゥ~~!」
「もう私は、挫けたりしない。皆と一緒に、この世界は守ってみせる!!!」
スマイルハピネスは熱く決意を固める。
(えー、なんで俺そんなにスマハピから警戒されてんの?俺そんな悪いことしてないんだけどな~、というかこの後ドッジボールやるんだよな~、平和よな~~。)
対照的に冬先は冷静だった。なんか熱い展開だけど、この後ドッジボールという平和なスポーツをやるからと思っているためであった。
だが冬先は思い違いをしていた。相手が一体、誰であったということに・・・・・。
次回、ドッジボール




