32 アオハルかよ
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キーンコーンカーンコーンと放課後のチャイムが鳴る。
「よっしゃあグラウンド行こうぜ!」「そうだね。速く行かないと場所取られちゃうから。」「カケルも行こうぜ!」「もちろん。」
チャイムが鳴ると同時に、冬先のいるクラスでは球技大会にサッカーの種目で参加するグループがグラウンドで練習するために教室を出ていく。
(うわあ、マジだよ。マジにやる気だよアイツら。なんで学校の行事で熱心になれるんだよアイツらは。)
だがサッカーのグループの中で1人だけ群を抜いてやる気がない男が冬先である。
(行きたくねえなあ・・・でもなあ、皆が行くから行くしかないよなあ・・・・・。)
冬先は心の中でため息をつくと、誰にもバレないほどにひっそりとサッカーグループの集団の後ろにひっついていく。
そうしてサッカーグループは教室を出て廊下を歩いてる時だった。突然、冬先より前に歩いている集団が立ち止まった。
(ん?なんかあったのか?)
冬先は少し背伸びをすると先頭の方で冬先がいるクラスとは違うクラスの男子生徒3人がカケルとなにか話していた。
「カケル・・・お前は当然サッカーにしているよな?」
「・・・うん。もちろん。」
男子生徒3人のうちの1人が敵意な目でカケルに質問をしており、カケルはなぜか申し訳なさそうに答える。
「なら球技大会でお前らのチームに勝って、俺からエースの座を奪ったカケルは弱いって証明してやる!・・・行こうぜ。」
男子生徒はカケルのいるサッカーグループに宣戦布告をするとその場を立ち去っていった。
「お、おい。カケル、あいつらの知り合いなのか?なんか仲良くなさそうな感じだったけど。」
サッカーグループの1人がカケルに事情を求めた。
「う、うん。ちょっとあってね。」
だがカケルはあまり話したくない様子だった。
「ぼ、ぼくから話すよ。カケル、話しても大丈夫?」
「うん。・・・ありがとう。」
するとカケルの隣にいた男子生徒が代わりに事情を話し始めた。
「ボクとカケルは同じサッカー部に入ってるんだけど、さっきの3人も同じサッカー部に入っているんだ。それでさっきカケルに話してた人は昔は小学校のサッカークラブでエースだったらしいんだけど、ボク達が通っている中学校のサッカー部でレギュラーメンバーを決める試合でカケルに負けちゃって・・・・カケルはレギュラーになれたけど、さっきの人はレギュラーになれなかったんだ。」
「あの時は運が良かっただけだよ。」
カケルと同じ部活の仲間だと言う男子生徒が説明を終えると、カケルは謙虚な姿勢で弁明する。
「なに言ってんだよ、カケルのサッカーのうまさは誰だって知ってるよ。」「そうだよ。むしろ球技大会でアイツらのクラスに勝って見返してやろうぜ!」「そうと決まれば速く練習しに行こうぜ。」
しかしサッカーグループのメンバーはカケルを励ます。
「みんな・・・ありがとう。」
メンバーの信頼にカケルは嬉しそうに答える。
「なに言ってんだよ。友達なんだから当たり前だろ?」
こうしてサッカーグループの集団は思いを一致団結・・・・・したのだが、たった1人だけ思いが一致団結できない人がいた。
(うわー、ベタな展開だなあ。)
冬先である。他の人達は先ほどの3人の生徒いるクラスに勝つことを目標に思いを1つにしている中で、この男だけはまったく別のことを考えていた。
(こんなの前世じゃ絶対にないだろこんな展開。さすがスマハピの世界、子供向けのアニメだけあって展開が分かりやすくなってんな。・・・・・あれ?でもここがスマハピ中心の世界ならこんな分かりやすい場面なら、スマハピが何かしら関わってると思ったんだが、近くにいないよな?・・・まあどうでもいっか。)
冬先は自分のいる世界が子供向けのアニメ「スマイルハピネス」の世界だと思ってるため、「いかにも」と言わんばかりの展開にこれはスマイルハピネスのアニメの1シーンかと予想したが、肝心のスマイルハピネスである夢見きらら達の姿が見当たらなかったため違ったのかと思いそれ以上は深く考えなかった。
しかし実のところ冬先の予想は当たっており、夢見きらら達は物陰から様子を見ていたのであった。
「う~~~~!カケルくん、頑張れ!」
きららは心配そうに物陰からカケルを見守っていた。
「そんなに心配なら直接言えばいいのに。」
「きららちゃんって分かりやすいよね~。」
そんなきららを赤羽りんかと日向さちはやれやれといった感じで見ていた。
「え?!な、ななな、なんのことかな~~~・・・ひゅーひゅー。」
きららは2人に自分がカケルが気になっていることを見抜かれてしまい、必死に誤魔化そうとあまり上手ではない口笛を吹いていた。
「「・・・・・。」」
そんな誤魔化しが通用するわけがなく、2人は互いに呆れながら顔を見合わせた。
そして時が少し経ち、冬先のいるサッカーグループは学校のグラウンドでサッカーの練習をしていた。
「ハァ、ハァ。」(ヤバイ・・・もう走れねえ。)
冬先の顔には疲労が見え始めていた。
「そっちいったぞ!」「よし、くらえ!!」「させるかーー!!!」
それに比べて他のメンバーはまだまだやれそうな雰囲気だった。
それもそのはず、他のメンバーはこの球技大会のサッカーに向けてのやる気があるために全力で取り組んでいるのに対して冬先は一切のやる気が無ければ努力する意志すらないので、他のメンバーより疲労が顔に出やすいのは明白である。
だがそんな冬先を救うかのように帰宅時間を知らせるチャイムが鳴った。
「うわ!もうこんな時間か。」「くっそーあとちょっとでボールが取れたのに!」「まだ練習してたかったなー。」
(た、助かった・・・・。)
皆が練習を終えることを名残惜しそうにしている中で冬先だけは帰宅のチャイムが鳴ったことに初めて感謝していた。
「カケル、帰ろうぜ。」
「あ、皆は先に帰ってて、僕は学校に忘れ物があったのを思い出したからそれをとってから帰るから。」
そして皆が帰り支度を済ませて帰ろうとした時、カケルが忘れ物を取りに行ってから帰ることを言い始めた。
「分かった、じゃあなカケル。また明日な。」
「うん。じゃあね。」
それを聞いたメンバーはカケルより一足先に集団になって帰っていった。
「・・・さてと。」
そう呟くとカケルは誰もいないであろう教室に向かっていった。
「・・・でよー。」「アハハ!」「なんだよそれ~。」
一方でカケルより一足早く下校しているサッカーグループのメンバーは集団で話しながら帰っている。
「・・・・・あれ?そういえばリュウトはどこへ行った?」
だがメンバーの内の1人であるタツキが集団の中に冬先がいないことに気がつく。
「本当だ。今まで気づかなかったよ。」「先に帰ったんじゃねえか?」「・・・それもそうだな。」
ただ皆は特に気にすることもなく、冬先の話題はそこで終了する。一方で忘れ物を取りにいったカケルは自分の教室の前に立つと、1人の人影が見えた。
「?、誰だろう。」
カケルが教室に入って人影の方を見ると、人影は何やら机で探し物をしているようだった。
「あれ~?どこだろう・・・確かこの辺に・・・・・あ、あった!!よかった~なくしたと思ってビックリした~~。」
「・・・夢見さん?」
「?、・・・え?!カ、カケルくん?!!ど、どうしてここに?!!!!」
人影の正体はきららだった。きららもカケルの気配に気づくときららは興味を持っている相手がいきなり現れたためかなりの動揺を見せる。
「ちょっと忘れ物を取りに・・・夢見さんも忘れ物?」
「う、うん!そうなの!バスケの練習が終わった後に教室に忘れ物があったのを思い出して。」
「そっか、実は僕もそうなんだ。」
「ぐ、偶然だね!!」
きららはまだ動揺が隠せていなかった。
「そうだね。・・・・そういえば、夢見さんの家ってどの方角?」
「?、あっちだけど。」
「僕と一緒の方か・・・もうこんな時間だし良かったら途中まで一緒に帰る?」
気づけば陽は沈みかけ辺りも段々と暗くなってきたので、女子を1人で帰らせるのは危険だと判断したカケルはきららと途中まで一緒に帰ることを提案した。
「わ!本当だ。もうこんな時間!それじゃあ一緒に帰る・・・・・えええええ?!わ、私とカケルくんが?!!!」
きららもそれとなく了承したかと思いきや憧れのカケルと一緒に帰ることに一瞬なんのことか理解できず、理解した時には声を上げて驚いた。
「う、うん。夢見さんがよければだけど。」
「えっと、その・・・じゃ、じゃあお願いします。」
「アハハ。夢見さんって面白いね。」
「そ、そうかな?エヘヘ。」
2人の空気が和んだ後、2人は一緒に下校することになった。
最近バトルしてねえじゃねえかと思ってるそこのアナタ!!
バトルはもう少し先になります。
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