29 キングサタンの娘 その④
言い訳 学校の課題が!FGOのアビーが!!!・・・・夏休み満喫してた、すまん!
「それで?マリーはジェンダーに用事があるのだけれど、ジェンダーはどこにいるのかしら?」
マリーは、自分の身長より低い位置で跪いている冬先にジェンダーの居場所を尋ねた。・・・いや、この場合は命令ととれるかもしれない・・・。
「は。ただ今ジェンダーさんはダークネスハートをキングサタン様に届けております。」(うおおおお、怖えええええ!!)
どっちにしろ下手をすれば自分の正体がバレて、自分の身が危ないと考えている冬先にとって、マリーの前では従順な態度で接するしかなかった。
「ジェンダーがダークネスハートを?それはおかしいわ。あんな寝ているだけのナマケモノに、マイナスエネルギーを集められるはずがないわ。」
そんな冬先の考えなど知らず、マリーは冬先の答えに疑問を抱く。マリーにとってのジェンダーは怠け者のイメージがあり、さらにはジェンダーが今までマイナスエネルギーをキングサタンに献上したことなど聞いたことがなかったからだ。
「それは、俺とリュ・・・2人で集めたマイナスエネルギーをジェンダーさんに献上したからです。」
マリーの疑問にウルフェンが、さっきまでとは真逆のような従順な態度で答えた。
「!、あら、あなたたちって、小物っぽい見た目の割には意外とやるのね。少し見直したわ。」
マリーは悪気も無く、本当に意外といった感じで驚く。
「ぐ・・こ、小物・・・ハ、い、いえ!ありがとうございます!」
ウルフェンはマリーに馬鹿にされたように感じ、怒りを露にするが、我に返るとすぐに従順な態度に戻る。
「いやあ、たまたまですって。」(オイ!やめろ!お前の中で俺たちの評価を上げるな!これ以上の面倒事はやめろ!!!)
冬先もマリーに従順な態度をとっているものの、心の中では見た目が可愛らしい少女に向かって罵倒を叫んでいた。
「ふ~ん・・・まあいいわ。マリーにとってはパパの復活のためにマイナスエネルギーが集まるのはいいことだわ。・・・ところで、おまえたちはさっき何をしていたの?」
マリーは先ほど、冬先たちがオフィスチェアで遊んでいたことを質問する。
「えっと、ジェンダーさんの椅子で遊んでました。」
「・・・プフッ、アハハハハ!イスで遊んでたって、まるでお子ちゃまね!アハハハハ!!!」
冬先の答えにマリーは大笑いする。
「はは、恥ずかしい限りでございます・・・。」(ヤバイ、なんかイラッとしてきた・・・いや、それよりも今はこの状況を無事に切り抜けることが大事だ!てか、とっとと帰れよガキが!!)
冬先は命が危ないかもしれないというリスクに、正常な思考ができなくなっていた。
ジェンダーの部屋でマリーの高笑いが響いている中、時を同じくして三幹部の会議場でも高笑いが響いていた。
「アッハハハ!そうかそうか、ジェンダー、そのダークネスハートの中に溜まっているマイナスエネルギーは君の手下の者が集めたものか!まったく、少し驚いてしまったではないか。」
高笑いをしているのは、全身が肌白く、綺麗な白髪、美しい顔立ち、美しい立ち姿の三幹部の1名であるナイトメアだった。
「あら?勝手に驚いていたのはアナタでしょう?ジェンダーがダークネスハートを持って部屋に入った途端に、「そ、それは何だ?!まさか、君が集めたのか?!」って、フフッ、思わず笑ってしまったじゃない。」
ナイトメアを煽るのは、紫色の髪でバラのように美しく、どこかトゲを感じさせるような魅惑がある、三幹部の1名であるバーラだ。
「そ、それは、ジェンダーがマイナスエネルギーを集めるなんて思ってなかったからさ!」
「そう?私にはジェンダーが本気でマイナスエネルギーを集め始めたら、自分の立場が危なくなるから慌てているのかと思ったのだけれど?」
「な?!そ、そんなことがあるわけないだろう?大体、三幹部の中では僕が一番マイナスエネルギーを集めているのだから、ジェンダーが今さら本気をだしたところで負けるわけがないがね?!」
バーラの言葉にナイトメアは姿勢こそ崩してはいないものの、言葉にはどこか動揺が見られた。
「何だっていいけどよ、俺はダークネスハートをキングサタン様に届けにきただけだから帰っていいか?」
そんな2名の言い争いを興味なさげに聞いているのは、気だるそうな顔に、肌色は人間に近い、ボサボサな茶髪のジェンダーであった。
「ハァ、アナタって本当にマイナスエネルギーを集める気がないわね。でもダメよ、せっかくマイナスエネルギーを集めたのだから少しはちゃんとしなさい。」
「だから俺の手柄じゃねえって・・・。」
「だとしても、キミの手下の・・・なんだっけ?確か犬のような者が頑張って集めたものなのだろう?だったら、キミにはちゃんとダークネスハートをキングサタン様に献上する義務がある。」
「・・・ったく、分かったよ。めんどくせえなあ。」
ダークネスハートだけを置いてその場を去ろうとするジェンダーをバーラとナイトメアが真剣に引き留めようとすると、ジェンダーは観念してその場にとどまった。
「・・・・・どうやら、既に三幹部は全員が揃っているようだな。」
突然、部屋の隅で低い声と共に、禍々しいほどのマイナスエネルギーが出現した。
「は、キングサタン様。我ら三幹部、ここに。」
その禍々しいマイナスエネルギーを出していたのはキングサタンであった。だが、その圧倒的なマイナスエネルギーの影響なのか、キングサタンの姿はおぼろげでハッキリとは分からなかった。
「うむ。して今日は何か用があると聞いたのだが、一体どういう要件だ?」
「ええ。それがなんと、今日は初めてジェンダーがマイナスエネルギーをダークネスハートに満タンで集めたので、それを献上するためにお呼びしました。」
「ほう?ジェンダーがダークネスハートを・・・一体どういう心境の変化だ、ジェンダー?」
キングサタンはジェンダーが初めてダークネスハートに満タンのマイナスエネルギーを集めたことを聞き、ジェンダーに尋ねた。
「いえ、これは俺が集めたわけではありません。俺の部下のウルが集めたものです。」
ジェンダーはありのままの事実を言った。
「・・・・・ほう、そうか。なんにせよ、マイナスエネルギーは我の復活に必要なものだ。誉めてつかわす。」
「・・・ありがとうございます。」
そしてキングサタンがジェンダーを褒めると、ジェンダーは表情1つ変えることなく賛辞を受け取る。
「・・・・・ところでジェンダーよ。ウル、と言ったか?お前の新しい手下の名は。」
突然、キングサタンがウルについての話題を始めた。
「は、その通りです。」
「噂では、そいつは他者を洗脳することで人間界に溶け込んでおるのだったな?」
キングサタンは、「ウルが人間を洗脳して人間界に住んでいる」という、以前ジェンダーが三幹部の会議で言ったウソの説明について話し始める。
「・・・ええ、そうですが。」
「ならばウルの洗脳の力を使い、人間をマイナスランドに連れてこい。」
「・・・・・。」
キングサタンの提案にジェンダーは何も答えない。
「すみません、一体どういうことなのか説明してもらってもよろしいですか?」
キングサタンの言葉が理解できず、バーラはその言葉の意味を求める。
「何だ、キミみたいなバラの鞭を振り回すしか能がない者にはキングサタン様の考えは分からないのか?」
「・・・何だと?なら、アンタには分かるとでも言いたいの?」
だがナイトメアがバーラを挑発したので、バーラはナイトメアを睨み付ける。
「もちろんだとも。簡単な話、マイナスエネルギーは人間から集めているのだから、ウルの洗脳で人間どもをマイナスランドに連れてこれれば、後は人間どもから半永久的にマイナスエネルギーを集めればいい。それならバーラだってスマイルハピネスに邪魔されずにマイナスエネルギーを集めれるだろう?」
「ぐ、アンタに説明されるとイラつくけど、確かにスマイルハピネスの邪魔はなくなるわね。」
ナイトメアの説明にバーラは悔しそうに納得した。
「ナイトメアの言う通りである。だが、ウルの洗脳がどの程度のものなのか分からぬ・・・・・そうだな、手始めに現在ウルが洗脳している者で試すか。」
「・・・・・。」
キングサタンの提案にジェンダーは何の反応も示さない。
「ならば、前に1度僕がウルを見た時、隣に人間がいました。おそらくウルによって洗脳された人間でしょう。その者をマイナスランドに連れてきてもらってはいかがでしょう!」
ナイトメアは以前ゴールキーパーのマイナスモンスターとスマイルハピネスの戦いの時に、陰でその様子を見ていたウルフェン、の隣にいた冬先のことを言っていた。
「ふむ、そうだな。できるか?ジェンダー。」
バーラ、ナイトメア、キングサタンの視線が先ほどから一切の反応を示さなかったジェンダーに向けられる。
「・・・・・。」
・・・・・・・・・・しばらく時間が経ち、現在、ジェンダーは自分の部屋に帰っている途中だった。
「はぁああっ、ああ・・・。」
ジェンダーは歩きながら眠そうに欠伸する。
そして、自分の部屋のドアの前まで来ると、そのダルそうな歩みを止め、ドアの前で立ち尽くす。
「・・・ハァ。」
少しため息をつくと、自分の部屋のドアを開ける。そこに広がっていたのは・・・・・。
「アハハハハハ!楽しい!楽しいわ!もっと速く回して!!!」
「え?!はぁ、はぁ・・ハ、ハイ!!!」
「こ、これ以上は・・・!」
そこに広がっていた光景は、ジェンダーのオフィスチェアが動かないようにウルフェンが足場を固定し、冬先が座席部分を力いっぱい息を切らしながら全力で回し、座席部分にはマリーが座っており目まぐるしく回りながら楽しんでいた。
「・・・・・何してんだ、お前ら?」
ジェンダーは目の前の状況がいまいち掴めずにいた。
「ハァ、ハァ、何って、マリー様の遊び相手、ハァ、ですけど・・・・あ、ジェンダーさん。」
冬先はジェンダーの姿を見ると回していたオフィスチェアの座席部分の回転を止める。
「アハハ・・・って何止めてんのよ!・・・って、ジェ、ジェンダー?!。」
マリーはオフィスチェアの回転を止められたことに怒ったが、目の前にジェンダーがいることを目視すると急に慌て始める。
「それはこっちのセリフだっつの。ま、アンタも意外と子供っぽい笑い方するんだな。」
「な?!そそそ、そんなわけないでしょ?!!!」
ジェンダーがマリーを子ども扱いすると、マリーは必死に否定する。
「?、なんで否定すんだよ?別におかしなことは言ってねえだろ?」
「ううう、うるさいうるさい!!これはマリーが子供っぽいとかそういうやつじゃないの!!!これはジェンダーの手下の2人の・・・えと、その~~!!」
マリーの否定にジェンダーが不思議がるので、マリーは必死に弁解しようとするが慌てているのか、上手く言葉が出なかった。
「・・・・・俺たちの忠誠を確認するためのテストとか?」
「!!!そ、そうよ!マリーはアンタの手下がマリーに「チュウセイ」をしているかどうかテストしていたのよ!決して遊んでいたわけではないわ!!!」
すると冬先の言葉に同意するかのように、マリーは早口で言い分を述べた。
「そうかい。ま、別にお前がそれでいいならいいけどよ。」
「・・・・・!!何よその態度は!マリーはキングサタンの娘よ!大体マリーと初めて会った時もそう!マリーに跪いたと思ったら、そのまま寝るってどういうことよ!!」
ダルそうに答えるジェンダーに、マリーはジェンダーと初めて会った時の不満を爆発させる。
「しょうがねえだろ、あん時は眠かったんだからよ。」
「~~~~!!キーーー!何でパパはこんな奴を三幹部にしたのかしら!!もういい!マリーは帰るわ!!!」
マリーは怒りながらジェンダーの部屋を出ていった。
「・・・・・はあ~~~~、やっといなくなった~~~。」
「俺も疲れたぜ・・・。」
マリーが部屋を出ていくのを確認すると、冬先とウルフェンはその場に座り込んだ。
「結局お前らはマリーの遊びに付き合ってたのか?」
「ええ、まあ。マリー様はリュウトがジェンダーさんの椅子で遊んでたのを見て自分もやると言い出したら、この有様です。」
ジェンダーが先ほどまでの出来事を尋ねるとウルフェンが疲れた様子で答えた。
「そうか。ま、2人とも疲れたんなら帰っていいぞ。一応ダークネスハートはキングサタン様にあげたからな。とりあえず、空になったダークネスハートはウルに返すぜ。」
「あ、ありがとうございます。じゃあ今日のところは帰らせてもらいます。おい、行くぞリュウト。」
「ハァ、ハァ、わーってるよ。」
ウルフェンと冬先はヨロヨロと立ち上がりながらジェンダーの部屋を出ようとする。
「・・・リュウト、1つ聞いてもいいか?」
「はい?別に大丈夫ですけど。」
だが、ジェンダーが冬先を呼び止めたので2名は歩みを止める。
「リュウトは、マイナスランドに協力してて大丈夫なのか?」
「?、・・・ああ、別に暇な時とかなら大丈夫ですよ。」(もしかして、俺がマイナスランドに協力してることを不思議に思ってんのかな?まあ普通なら怪しむよな。でもどうせスマイルハピネスが勝つだろうし、俺みたいな人間が関わったって何の影響もないだろうから俺的にはどうでもいいんだよなあ。)
ジェンダーの質問に冬先は自分なりの解釈をとると、正直に答えた。
「そうか・・・いや、すまない、気にしないでくれ。」
「?、じゃあ帰ります。お疲れ様です。」
「リュウトからマイナスエネルギーを集めたらまた来ます。」
冬先とウルフェンはジェンダーに別れの挨拶を済ますと部屋を出た。
「あら?やっと出てきたわね。遅いじゃない。」
だが帰ろうとした矢先、どこからか聞いた覚えのある偉そうな子供の声がした。
「「?!ま、マリー様?!」」
冬先とウルフェンは驚いて声のした方を向くと、そこにはマリーが仁王立ちで腕を組みながら立っていた。
「ええマリー様よ。そこの変なお面をしたアンタ、名前はなんていうのかしら?」
「え?!な、名前は、その・・・。」
冬先はマリーに名前を聞かれたことで慌てる。
「?、まあいいわ。アナタをマリーのお世話係に任命してあげるわ。光栄に思いなさい!」
「お、お世話係ですか?」
「そうよ!アナタはなかなか見所があるから、これから一生マリーの遊び相手・・・じゃないわ、お世話をするのよ!素晴らしいでしょう?」
「・・・・・い、いやあすいません。私はジェンダーさんの手下なので。」(ふっざけんじゃねえぞ?!それって俺がコイツの遊び相手になるってことだろ?!冗談じゃねえ!てかサラッと一生って言ったなコイツ?!それだと俺が家に帰れねえじゃねえか!!!)
マリーの命令に一見冬先は冷静に断っているように見えるが、内心では慌てふためいていた。
「なによ、マリーのことよりあんなだらしない奴の方がいいって言うの?」
「いやあ・・・・・あ、そもそも私とウルってマリー様の父親のために人間の世界でマイナスエネルギーを集めているんですよ。ですから難しいんですよ。」
「う~~~!」
「じゃ、じゃあそういうことで!」
「あ、こ、こら!待ちなさい!」
冬先とウルフェンは逃げるようにマリーから離れていった。
一方、ジェンダーは自分の部屋でガラスのない窓に寝そべりながら、今日の三幹部とキングサタンの会議のある場面のことを思い返していた。
「ふむ、そうだな。できるか?ジェンダー。」
「・・・・・それは難しいです。ウルの洗脳はそこまで強力なものではないので。」
「・・・そうか。」
キングサタンの質問にジェンダーはできないと答えた。
「なんだ、少しは期待したってのに。やっぱりキミの手下じゃ使い物にならないか。」
ナイトメアは残念そうな様子だった。
「ナイトメア、そういう失礼なことは言うもんじゃない。とにかく私たちはいつも通りにマイナスエネルギーを集めればいいの。」
バーラは切り替えてる様子だった。
「バーラの言う通りである。しばらくはスマイルハピネスが邪魔してくるだろうが、お前たちはいつも通り我の復活のためにマイナスエネルギーを集めよ。そうすれば、このマイナスランドに光をもたらそう。」
キングサタンは圧倒的なマイナスエネルギーのせいで表情はよく見えないが、これ以上ウルの洗脳について言及することはなかった。
「「「は。」」」
「我はまた眠りにつく。三幹部よ、更なるマイナスエネルギーを待っているぞ。」
三幹部が返事をするとキングサタンは闇に消えていった。
「何がしたいんだろうな、俺は。・・・・・どうでもいいか、めんどくせえ。」
回想を終えたジェンダーは独り言を呟くと、考えるのがめんどくさくなり、そのまま昼寝する。
これでキングサタンの娘は終わります。次回から新しい話になります。
投稿頻度は・・・ふ、ふふふ、ふ。
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