28 キングサタンの娘
前投稿から1週間以上、ポケモンやってたすまん。
「・・・また来ちまったよ、めんどくせえ。」
「今回はダークネスハートをジェンダーさんに渡すだけだから、少し我慢してくれ。」
「まあ今日は暇だったからいいけどよ。」
「いや、リュウトいつも暇だろ。」
今、冬先とウルフェンはマイナスランドに来ていた。目的は昨日の夜に、冬先の日々のマイナスエネルギーが冬先の持つダークネスハートに大量に集まっていたので、それをジェンダーに渡すためであった。
「いやいや、俺には「休む」という大事な仕事があるんだよ。」
「それは「ダラダラする」の間違いだろ。しかし、リュウトもマイナスランドに平気で来れるようになったよな。最初に来た時なんかは何も喋らねえほど緊張してたくせによ。」
「ぐ・・・あの時は本気でヤバイと思ってたんだよ。まあ、今はマイナスランドにも俺みたいな人間と似たような人もいたから、案外大丈夫かなと思ってる。」
たわいのない会話をしながら、2名はジェンダーがいる部屋のドアの前までやってきた。
「じゃあリュウト、頼んだぜ。」
「え?・・ああ、ウルにはこのドアは開けられないか。」
ウルフェンが冬先に頼み事をしてきたので、冬先は一瞬なんのことか分からなかったが、今のウルフェンは中型犬の姿をしているために、目の前のドアにあるドアノブを使ってドアを開けることができないのだ。
「うっせ、前の俺だったらできてたんだよ。」
「それは俺なんかと契約した自分を恨め。」
冬先は皮肉っぽく言うと、ドアをノックする。
「・・・・・。」
しかし、ドアの向こうから何の反応もなかった。
「あれ?いないのかな?」
「ハァ、やっぱりそうか・・リュウト、入っていいぞ。」
「え?いいのかよ、勝手に入って。」
「ああ。リュウトは早く家でダラダラしていたいんだろ?」
「それはそうだが・・・じゃあ入るぞ。」
なんの返事もなかったので戸惑う冬先だったが、ウルフェンがジェンダーの部屋に入るように促したので、冬先は戸惑いながらもドアを開けて部屋に入った。
「・・・・・・。」
「寝てる・・・前も見たけど、なんであんな危ない場所で・・・。」
部屋に入ると、そこには1つの机と椅子だけがあり、その椅子にジェンダーが座っていた・・・・・わけではなく、横幅が人間1人分のガラスのない窓で寝ていた。
一つ行動を間違えたら落ちてしまいそうな程の危険な場所で寝ているジェンダーを見て、冬先は以前にも見たことがあるものの、開いた口が塞がらなかった。
「そんな気はしていたがな。」
対照的にウルフェンは見慣れているのか、とても冷静に、それどころか呆れているほどだった。
「・・・・・。」
ジェンダーは自分の部屋に誰かが入ってきたのにも関わらず、それに気づくことなく寝ている。
「え?あれって起こさないほうがいい?」
「ん?・・・ああ、起こしても大丈夫だよ、ジェンダーさんはいつもああして寝てるからな。」
ジェンダーを起こしていいのか分からず戸惑っている冬先に対して、ウルフェンはお構いなしにジェンダーを起こすために、横幅が人がちょうど寝れるくらいの幅のガラスのない窓の近くに行く。
「お、おい・・・。」
「ジェンダーさん、起きてください。俺です、ウルフェンです。」
どうすればいいのか分からず、棒立ちしている冬先を無視してウルフェンはジェンダーを起こそうと声を掛ける。
「んあ?・・・なんだよ、もう少し寝かせろよ。」
起きているのか、それとも寝言なのか、寝ぼけた感じでジェンダーは外の方に寝返りをうった。
そう、先ほどまで奇跡的なバランスで寝ていたジェンダーが、寝返りをしたことでバランスを崩したのだ。何が言いたいのかというと、ジェンダーが自分の部屋から落ちた。
「え?」
突然、ジェンダーが真下に落ちていった状況に冬先は頭が真っ白になった。それと同時に、下の方で何かが思いっきり落ちた音がした。
「ハァ、まったく。困った方だ・・。」
ウルフェンは「やれやれ」といった様子だ。
「・・・?!!!、いや!ちょ!!!」
数秒後、我に返った冬先が慌てて窓の外を覗き込む。
「大丈夫だよ、あの程度はいつものことだよ。」
「いや、いつもって・・・・ハァ?!」
至って冷静なウルフェンに対して、冬先は何が何だか分からなかった。
それもそのはず、冬先たちは現在高いところにいる。理由としてはジェンダーの部屋が高いところにあるからだ。マンションの高さで例えるなら、約15階の高さである。
だが冬先にとって、それは問題ではない。問題なのは、つい先ほどジェンダーがマンションの高さでいう15階から落ちたことだ。人間なら即死であろう高さだ。
しかし、落ちたのは人間ではない。
「ふぁああ・・・何だ?誰か俺の名前を呼んでたような・・・。」
「・・・・・は、ははは・・。」
しかし何事もなかったかのように起き上がるジェンダーに、冬先は頭の整理が追いつかず、笑うことしかできなかった。
「ん?あれはたしか、ウルフェンと一緒にいる人間の・・・ダメだ、名前が思い出せねえ。まあいいか。それよりも、アイツ俺に用事があって来たんだろうな・・・・・いつもなら、ここで2度寝するところだが、それだと待たせちまうな・・・・・めんどくせえが、少しだけ無茶するか・・・。」
ジェンダーは自分の部屋の窓から冬先が覗いてるのを確認すると、独り言を言いながら深くしゃがんだ。
そして、しゃがんだ次の瞬間、大きな衝撃音と共にジェンダーは自分の部屋の窓に向かってジャンプした。
「え・・・う、うわああ!」
窓からジェンダーの様子を見ていた冬先は、ジェンダーが突然ジャンプをしたと思ったら、気づけば自分の目の前に現れたので、冬先は腰を抜かしてしまう。
「ああ、悪い、驚かせたか?」
「え?いや、飛んで・・・ああ、ジャンプ?」
「?」
腰を抜かしている冬先を見て心配するジェンダーだったが、冬先はそれどころではなかった。
「ジェンダーさん、お久しぶりです。」
フリーズしている冬先を無視してウルフェンはジェンダーに挨拶した。
「おう。ウルフェンか、久しぶりだな。何か用か?」
「はい、実は・・・・・。」
ウルフェンはジェンダーに今までのことを報告し、なぜ今日ここに来たのかを説明した。
「・・・ほお、凄いな。これをリュウトのマイナスエネルギーだけで集められたのか、もうこれ俺らが頑張らなくてもいいんじゃねえの?」
「いや、流石にそれは・・・というか、ジェンダーさんがマイナスエネルギーを集めてるところ見たことないんですけど・・・。」
「だってめんどくせえだろ。」
「ええ・・・。」
ジェンダーとウルフェンが会話をしている中、冬先は2名の会話を聞く余裕がないほど頭の整理で手一杯だった。
(は、はは・・・いやいやいや、おかしくね?だってよく考えたら死んでるだろ?!高さてきにマンションの15階くらいのところから落ちてんのに生きてんの?!しかもマンションの1階から15階までジャンプして届くとか・・・え?何を言ってんだ?)
冬先にとって、先ほどのジェンダーの一連の行動は常識外れのことなので頭の整理をしようにもこんがらがっていた。
「とりあえず、俺はコイツをキングサタン様に届けてくるからよ、しばらくここでゆっくりしてってくれ。つっても、ここにはなんもねえがな。」
「はい、分かりました。」
「リュウトもそれでいいか?」
「え?・・・・あ、はい。」
「なんだったら、そこにある椅子に座っててくれ。そんじゃ、しばらく待ってろよ。」
リュウトの頭の整理が終わってないまま、ジェンダーはキングサタンにマイナスエネルギーを献上するために部屋を出ていった。
「・・・・大丈夫か、リュウト?」
ジェンダーが部屋を出ていくと、ウルフェンがぼーっとしている冬先を気にかける。
「え?あ、ああ。」
「そうか、リュウト変なお面つけてて、どんな表情してんのか分かんねえけど、なんか今日のお前おかしかったからよ、何もねえならいいわ。」
ウルフェンの視点からすれば、今の冬先は変身しているために無表情のお面をつけてるため表情が見えず、何を考えてるのか分からなかったが、今日の冬先はジェンダーの部屋に入ってからは明らかに口数が少なかったために違和感があったのだ。
「お、おう。少し驚いただけだからな。・・・とりあえず、ジェンダーさんが戻ってくるまで、そこの椅子でくつろぐわ。」
「お、おう。」
冬先はそれとなくごまかしたつもりで、ジェンダーの椅子に座った。しかしウルフェンはまだ違和感を感じてたのだが、これ以上の追求はやめることにした。
(はあ、なんか気づいたらジェンダーさんとウルフェンの間で話が進んでたな。まあ、だからといって興味があるわけでもないし、しばらく座ってるとしてだ・・・・・ジェンダーさんヤバすぎるだろ・・・あんな高いところから落ちても無傷とかおかしいって、もしかしたらジェンダーでスマハピに勝てるんじゃないの?・・・・・あれ、よく見たらこの椅子・・・。)
冬先が椅子に座りながら考え事をしていると、自分が座っている椅子にとある発見をした。
「・・・しかし、まさかリュウトがダークネスハートを持ってるだけでマイナスエネルギーが集まるとはな。なあ、リュウト・・・・・何してんだ?」
ウルフェンが冬先の方を見ると、冬先が座りながら自分ごと椅子を回転させていた。
「ん~~?回っている。」
「見りゃわかるわ。」
そう、冬先は椅子に座った時にあることに気づいた。その椅子は人間界にもある会社などでよく見かける、椅子に車輪が付いており、なおかつ椅子の座席部分を回転させることができるオフィスチェアであった。
「いや~~こうしてると心が落ち着くんだよね~~~。」
「楽しいのか、それ?」
今だに冬先が回っているのを見て、ウルフェンは何とも言えない感じだった。
「ん~~~、子供のころは楽しかった気もするけど、今は「落ち着く」って感じかな~~。・・・あ、そうだ。」
冬先は急に回転を止めたと思いきや、自分の足とオフィスチェアの車輪を使い、オフィスチェアを壁の近くまで滑らした。
「今度はなにすんだよ。」
「こうやって、壁を蹴ると・・!」
壁の近くまで寄ると、冬先はオフィスチェアに座ったまま膝を曲げた状態で足の裏を壁に密着させると、思いっきり壁を蹴った。
すると壁を蹴った力の作用でオフィスチェアが蹴った方向に座ったままの冬先ごと滑ったのだ。
「・・・それ、楽しいか?」
しかし、ウルフェンの反応は淡々としたものだった。
「・・・まったく、ジェンダーときたらいつもいつも迷惑かけて・・・もう許さないわ!」
冬先がオフィスチェアを使って遊んでいる時、1人の少女がジェンダーの部屋に向かって歩いていた。
その少女は、黒を主体としたドレスに金色の髪のポニーテールの先端を左右に揺らしながら、キングサタンと同じマイナスエネルギーを出していた。
「・・・ここね。」
少女はジェンダーの部屋の前に来ると、叩きつけるようにドアを開けた。
「ジェンダー!!いい加減にするのだわ!!!」
「「・・・・・・。」」
「・・・・誰?」
少女は自分の目を疑った。なぜならば、ジェンダーがいると思って入った部屋には、無表情なお面をつけた男と中型犬サイズの犬がオフィスチェアで滑って遊んでいるように見えたからだ。
「・・・あの、どちら様ですか?」
しかし、無表情なお面をつけた男、つまるところ冬先が反応したことで、少女は自分の目に映る光景が幻覚ではないことを理解し、すぐに頭を落ち着かせ2名に対して上から目線な態度になる。
「フ、フン!マリーに対して「どちら様」とは失礼な奴ね?マリーはキングサタンの娘、つまりはマイナスランドの女王様よ?分かったならさっさと跪きなさい。」
「・・・・・はっ、申し訳ございません。先ほどの無礼をお許しください。」
「!・・・そ、その通りよ!まあでも、今回は許してあげるわ。」
少女の正体はキングサタンの娘のマリーだった。
マリーが冬先に跪くよう命令すると、冬先はかなり丁寧な言葉で対応しながら跪いた。その対応にマリーは一瞬だけ驚くも、冬先の従順な態度に感心する。
「バ、バカな?!キングサタン様に娘がいるなんて聞いたことがないぞ?!」
一方でウルフェンはマリーの存在を疑っていた。なぜなら、ウルフェンは今までキングサタンに娘がいるなどという情報は、聞いたことがなかったからだ。
「あら?それに比べてアンタは生意気ね。アンタもさっさと跪きなさい。いや、お座りかしら?」
「俺は犬じゃねえ!」
ウルフェンは目の前にいる少女の偉そうな態度が気に入らず、反抗的な態度をとる。
「あら?マリーにそんな態度をとっていいと思ってるの?」
ウルフェンの対応にマリーは不敵な笑みを浮かべる。
「キングサタン様の娘だっていう証拠があるならな!」
変わらずウルフェンは反抗的な態度である。
「これでどう?」
そう言うとマリーの体から禍々しいマイナスエネルギーが溢れだした。
「こ、こいつはキングサタン様の・・・!!」
ウルフェンはキングサタンと同じマイナスエネルギーに驚愕した。
「さ?ワンちゃん、お座り。」
「・・・・・。」
マリーの言葉にウルフェンは黙って従う。そして今、ジェンダーの部屋で一番頭が上にあるのはマリーの頭になる。
(クソ!まさか本当にキングサタン様の娘だったとは・・・しかし、リュウトの奴はよく見知らぬガキに跪けたな。)
ウルフェンはさっきから一言も喋らない冬先をチラッと見る。ウルフェンから見て、冬先はとてもおとなしそうに見えた。・・・・・しかし当の本人はそんなことはなく、
(だあああああ、あっっぶねええええ?!え?なんでここにマイナスランドのボス的な奴の娘がいるんだよ!誰だよさっき「バレないから大丈夫」とか言ったやつ!やべえよバレたら捕まるってジェンダー言ってたし!とりあえずプライド捨てて命を優先した俺はグッジョブ!!!)
心はとても叫びたがっていた。
多分次でキングサタンの娘の話は終わります
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