27 キングサタンの娘 その②
タイトル考えるのがめんどくさくなったので、その1 とか その2 で誤魔化すことにしました。許してください何でもしますから!!
「ハァ、ハァ・・・なんとか逃げれたな、ハァ、ハァ。これで一安心。」
「なわけねえだろうが、ハァ、ハァ。」
「いいんだよ、ハァ。ウルが疲れてんなら、ハァ、逃げれたってことだ。」
「なにわけわかんねえこと言ってんだ・・ハァ。」
冬先とウルフェンが戦線から離脱した後、2名は全速力で追いかけっこしていたため、お互いに走る体力は残されていなかった。
「とりあえず変身できなかったことは謝る、すまん。だけどあのままだったら、俺たちは足手まといだろ。」
「わかってる。だが、バーラ様はどうなる!!」
ウルフェンは、今でもスマイルハピネスと戦っているであろうバーラのことが心配で気が気でない様子だ。
「大丈夫だって、どうせ今回もスマハピに負けてバーラは無事に逃げれるだろ。」
しかし冬先は対照的に、これっぽっちも心配している様子はなかった。
「なんでそんなことが言い切れる。今日は無事じゃ済まないかもしれないだろ。」
「なんだ?ウルもバーラ様が負けると思ってんのか?」
「な・・・べ、べつにそういうことを言ってんじゃ・・・・・。」
なんの根拠もない冬先の理屈にウルフェンが反論するも、冬先の質問に何も言えなくなってしまう。
「悪かった、別に責めるつもりはない。正直「スマハピ」とかいうバケモノパワーをもつやつらには勝つのが難しいからな。ただ今までのパターンからして、ばいきんくん法則でバーラは無事だろ。」
「そう、か・・・・は?「ばいきんくん法則」?」
ウルフェンは「ばいきんくん法則」というキーワードに耳を疑った。そんなものは今までに聞いたことがなかったからだ。
「そうか、ウルは知らねえか。前・・・いや、この世界のアニメに「ミスターアンパン」っていうアニメがあって、その悪役に「ばいきんくん」って奴がいるんだよ。」(ぶっちゃけ前世のアニメにも同じのがあってビックリしたけど、どうせ前世のことなんて信じないしバカにされるから黙っとこ。)
「アニメって言やあ、「テレビ」がやってる「バングミ」ってやつか?初めて知ったんだが。」
ウルフェンは初めて知るアニメに首をかしげる。
「まあ、子供向けのアニメだから見ないってのもあるが、日曜の朝だから。」
「ああ・・・リュウト、土曜日と日曜日はいつも昼飯の直前に起きてくるからな。」
だが冬先の説明にウルフェンは納得する。
「そんで話を戻すが、「ばいきんくん」ってのはいつも「ミスターアンパン」に戦いを挑んでは負けて逃げかえるんだよ。俺は魔法少女のアニメなんて見たことないが、同じ子供向けのアニメだし、今までのスマハピとの戦いのパターンから「ばいきんくん法則」でバーラは無事だって。」
「おう、さっきまで話を理解できていたが、一気に分かんねえわ。」
冬先の説明にウルフェンは辛辣に返答する。
「まあ、この理論は俺でなきゃ理解できないと思うから、しょうがないけどな。」
「ああ、一生な。」
「ま、バーラは無事だって。」
「例え無事でもリュウトの頭は無事じゃねえけどな。」
「お?言うねえ。はっはっは。」
「事実だろ?はっはっは。」
「「アッ八ッ八ッ八ッ八ッ八ッ・・・。」」
2名はお互いに笑いあった。
「ぶん殴ってやろうか?!この犬が!!」「かみちぎってやるぜ!このイカレ人間が!!」
そして2名はまさに一触即発だった。
「・・・いや、やめよう。疲れた。」
「・・・そうだな。帰るか。」
しかし2名はさっきまで全速力で走っていたため、喧嘩する体力など残っているはずもなかった。
こうして冬先とウルフェンは自分たちの家に帰って行った。
一方でバーラとスマイルハピネスの戦いは、決着がつこうとしていた。
「ハピネス、ショット!!!」
「ミシミシミシ、ミシンガーーーーー!!」
「くっ!マイナスモンスターが・・・・・まあいいわ、目標のマイナスエネルギーは手に入っている。覚えてなさい!次こそは、お前たちをマイナスエネルギーのどん底に沈めてあげるわ!!」
バーラは冬先の言う「ばいきんくん法則」の通りに、負けたものの無事にマイナスランドに帰っていった。
その日の夜、冬先が自分の部屋で寝ようかなと思った時だった。
「あ、今なら変身できるかも。」
「そうか。思ってたより時間かかるな。」
冬先とウルフェンが家に帰ると、2名は今回の出来事について話し合った結果、冬先の変身は一回解いてしまうと次の変身まで時間がかかるという結論に至り、どれほど時間がかかるのか冬先が常に変身しようと意識することで時間を計測していたのだ。
「これじゃあ一回変身したら、次の変身には期待できねえな。」
そう言いながら冬先は無表情なお面を着けた上は紺色のフードパーカーに黒色のズボンという、お面以外はいたって普通の姿に変身する。
「カタナは持ってるか?」
「あるぜ。なんにも切れねえクソみてえな刀がな。あーあ、これじゃ1日に1回しか投げられねえな。」
文句をいいながら冬先は自分のベッドに飛び込んだ。
「なあ、リュウト。」
「ん?」
「今さらなんだが、スマハピの奴らは派手な格好してんのにリュウトはなんつうか、その薄気味悪いお面以外、あんま変わんねえよな。」
ウルフェンはスマイルハピネスの格好を思い出しながら冬先の格好と比べていた。
「そういやそうだな。なんでだろうなあ・・・まあ俺みたいな人間がスマハピのように派手な姿なんて想像できねえけどな。」
冬先は気にする様子もなく自分のベッドでだらける。
「そう・・か?」
「そんなもんだって・・・つうかよく考えたら不公平だよな。」
「何の話だ?」
冬先が急に話題を変えたのでウルフェンは質問した。
「スマハピだよ。アイツらとんでもねえ力でいつもマイナスモンスターをぶっ倒してんのにさ、対して俺は何ですか?コソコソ隠れて刀をぶん投げるだけって、俺は脇役ですか?というか脇役でも、もうちょっと頑張るわ。」
冬先は自分とスマイルハピネスとの圧倒的な「力」の差に長々と文句を言う。
「だったらコソコソしてねえで、俺みたいに戦えばいいだろ。」
ウルフェンは冬先の駄々っ子さに呆れていた。
「は、俺に命がけで戦えってか?無理だね。俺なんかが頑張ったところで無駄だよ。っつーか、なんで俺は戦うことになったら命がけなのに、スマハピは命がけじゃなくていいんだよ、不公平だろチクショー。」
「別にそんなことはないと思うが・・・。」
「いいや、スマハピには圧倒的なチート能力もってるから、命を失うリスクとか考えていないから、偶然手に入った力で「俺TUEEEEEE」みたいな「私TUEEEEEE」してるようなもんだから、自分が強くなったと錯覚しているただのイきってるだけの人間だよまったく。」
冬先は文句を言うたびに怒りのリミッターがどんどん外れていった。
「後半なに言ってんのかサッパリだが、リュウトはスマハピの強さが羨ましいってことはよく分かった。」
「そうだよ、俺だって「俺なんかやっちゃったんすか?」とか言って」みてえよーーー!」
冬先は叫んだ。すると突然、冬先の胸が紫色に光始めた。
「うお?!な、なんだ?!」
まるで冬先の叫びに反応したかのように冬先の胸が紫色に光ったので、ウルフェンは困惑する。
「ま、まさか、これって「覚醒」ってやつか?マジで?!」
一方、冬先はとても期待に満ちた表情を見せる。すると冬先の胸から、触れるものを傷つけてしまいそうなトゲトゲしい茎が巻かれたハート型の容器が浮かび上がってきた。
「こ、こいつは、ダークネスハートじゃねえか?!」
「あれ、ダークネスハートって確か・・・。」
ウルフェンの「ダークネスハート」という単語に冬先は嫌な予感がした。
「マイナスエネルギーを集めるための道具だ。だが、なぜこれほどのマイナスエネルギーが?」
ウルフェンは今の状況に驚いていた。なぜならダークネスハートには大量のマイナスエネルギーが貯まっていたからであったのだ。
「あ、ああ。そ、そうだな。」(いや、なんとなく分かった。分かったが・・・く、口に出したくねえ・・!)
だが冬先は何かを察していた。
しかし、冬先自身はそれを口に出したくなかった。もしも冬先の考えが当たっていたら、それは先ほどまでに期待していた自分の願いを否定することになるからだ。
「だ、だが俺たちは八百屋の事件の後、一回もマイナスエネルギーなんて集めてないのに、どうしてダークネスハートにこれほどのマイナスエネルギーが?!」
ウルフェンは興奮と困惑が入り混じりながら、今の現況を推理する。
「・・・・・。」
対照的に冬先は一言も喋らない。
「別に誰かのマイナスエネルギーを集めていたわけでも・・・・いや、そうか!八百屋の事件の後、1人だけマイナスエネルギーを集められる人間がいる!!」
「・・・・・。」
ウルフェンが全てを理解すると、冬先の表情が固まる。
「リュウト!お前だよ!リュウトのマイナスエネルギーをダークネスハートが集めてたんだぜ!!」
「あ、ああ、さっきもさんざんイライラしてたしね、うん・・・。」
「リュウトのマイナスエネルギーをダークネスハートが集めていた」つまりは、常日頃から冬先が感じることがある「妬み」「怒り」そして「自虐」という負の感情をダークネスハートが集めていたのだ。
それが日に日に積み重なることによって、ダークネスハートには大量のマイナスエネルギーが貯まったのだ。
「マジかよ!こいつはすげえ!これでマイナスエネルギーを安全に集められるじゃねえかよ!」
「そうだな。・・・な、なあ、ウル。」
「ん?何だよ?」
「結局のところ、これってマイナスエネルギーが集まっただけで、俺が強くなる覚醒イベントではないのか?」
「・・・・・・・・明日、魔界に行くから、諦めて寝るんだな。」
そう言うとウルフェンは寝始める。
「・・・・・。」(ふ、ふざけんなあああああ!!!)
こうしていつもの平和な1日は終わっていく。だが冬先の知らないところで、定められた物語の歯車は「ひび」が入りながらも確実に進んでいた。
時間はバーラがスマイルハピネスとの戦いに敗れ、マイナスランドに避難した時のことだった。
「ハァ、ハァ・・クッ、次こそはスマイルハピネスを倒さなければ、キングサタン様に示しがつかない!」
マイナスランドにある巨大な城でバーラが満身創痍になりながら、曲がり角を曲がろうとした時だった。
「キャッ!!」
バーラの腰に何かがぶつかった。そして声の主はぶつかった衝撃でしりもちをついていた。
「あ、ごめんなさい。大丈夫?」
バーラは突然のことで驚いたが、下の方を見ると幼い8~9歳くらいの身長の女の子がしりもちをついてたので、バーラはその娘に謝罪する。
「痛った~~。何よいきなり!失礼なやつね!このマリーに対してマナーというものがなってないんじゃないの!!!」
自分のことを「マリー」と名乗る娘は、黒色のドレスに金色の髪のポニーテールをなびかせると、立ち上がったかと思えば、お互いの不注意が原因だというのに謝罪をしたバーラに対して罵倒を浴びせた。
「ご、ごめんね。」
だがバーラは怒ることはせず、冷静に謝罪する。
「フン!・・・あ、あなたバーラでしょ、パパからアナタのことは聞いてるわ。「マイナスエネルギーは集めれるのに、スマイルハピネスは倒せれない役立たず」だって。」
「・・・・・悪いけど、世の中にはね?言ってもいいことと悪いことがあるのよ?」
しかし「マリー」と名乗る少女にバカにされると、さすがのバーラも怒り始めた。
「悪いけど、そんなルール、マリーには通用しないもの。」
「通用しないですって?」
だが少女はバーラの言うことにまるで気にする様子はなく、上から目線で話しているので、バーラは少し困惑していた。
「だってマリーのパパはマイナスランドで一番偉いんだから。」
「一番偉い?」
「ここまで言ってるのに、まだ分からないの?プークスクス。」
「・・・誰なのか早く言いなさいよ。」
上から目線の言い方に腹が立ったのか、さすがのバーラも苛立ちを隠せないでいた。
「キングサタンよ。」
「・・・・・え?」
しかし「マリー」と名乗る少女の一言でバーラの思考が一瞬停止する。
「あら?聞こえなかった?もしも~し。」
「ありえない・・・キングサタン様の娘なんて聞いたことがない。」
バーラは「ありえない」と言いたげな表情を見せる。なぜならキングサタンに娘がいるなどと、バーラは1回も聞いたことがなかったからだ。
「じゃあ、これを見ても信じられない?」
少女はニヤリと笑うと、自分の身体からマイナスエネルギーを出し始めた。
「な?!そ、それは・・・キングサタン様の!!まさか、本当に?!」
少女のマイナスエネルギーにバーラは驚きを隠せなかった。それはキングサタンのマイナスエネルギーと同じだったからだ。
「だからそう言ってるでしょ?パパがマイナスランドの王様なら、マリーはマイナスランドの女王様よ?さ、跪きなさい?」
面白かったらブックマーク登録と評価ポイントよろしくお願いします。あと感想もくれると嬉しいです。




