17 雨は降らず雷が降るも地は固まる
ポケモン剣やって遅れました、お久しぶりです。
「ッ・・!新しいスマイルハピネスですって?」
バーラの表情が曇る。その者は明らかに戦いに向いているような印象は入らず寧ろその逆、気が弱そうな印象だった。
だが彼女は今、魔界の者達の最大の宿敵であるスマイルハピネスとなって目の前に立っているのだ!!
「これ以上、友達をいじめるなら私が相手になります!」
日向さち、・・・またの名をスマイルイエローはバーラと負のモンスターに向かって大声でハッキリと言いながら指をさす。
「ああああん?!」
「・・・ア、あ、相手に・・なる・・・・よ?」
だが負のモンスターの威圧に負けたのかスマイルイエローはオドオドし始めた。
「まあ、スマイルハピネスが1人増えたけどやるしかないよね。」
「めんどくさ・・・。」
「オラ!止まったままくらいやがれ!!」
黄、青、赤の順番に喋りながら負のモンスターはスマイルイエローに攻撃する。
「うわわわわわ!た、助けてーーー!!」
最初の覚悟を決めたような顔とは打って変わってスマイルイエローは恐怖心まるだしの顔で精一杯に逃げる。
「あ、あれが新しいスマイルハピネスなの?」
このスマイルイエローの「逃げ」の行動に先ほど新たなスマイルハピネスの誕生で焦りを感じていたバーラは狐につつまれたような困惑した表情になる。
「うぅ・・・さっちー!」
「くっ、アタシ達が頑張らないといけないのに・・・!!」
スマイルイエローのおかげで負のモンスターの矛先がスマイルピンクとオレンジからスマイルイエローに向かい窮地を脱することができたものの、2人の目の前にはバーラが立ちはだかり、激しい戦闘により2人の体力は限界に等しく、スマイルイエローの援護ができない状態でいた。
「へぶっ!」
そこに追い打ちをかけるかのように、スマイルイエローが逃げている途中で、突然スマイルハピネスになって冷静ではなかったのか、何もないところで転んだのだ。
「止まりやがれ!!」
「イッタタタ・・・あれ?動けない?!」
「なんだコイツ?弱っちいじゃねーか。」
そしてスマイルイエローが起き上がろうとするも、その隙を負のモンスターが見逃すはずもなく、赤信号のライトによってイエローは起き上がる途中で動けなくなってしまう。
その情けない姿に、いつも何かしら怒っている赤信号も困惑するほどであった。
「・・・・・まぁいいわ、ウルは彼女を危険と見なしていたけど、どうやら向こうのお仲間さんは戦力にはならなさそうだし、私達の勝利のようね。」
「くっ・・・!」
バーラは気持ちを切り替えると共に、スマイルハピネスを追い詰めていく。
「じゃあ、これで終わりだ!」
「ど、ど、ど、どうしよう!!!」
そして信号機の負のモンスターも黄信号になり、スマイルイエローに攻撃しようとするも、未だにイエローは動けず慌ててしまっている。
「ヤ、やめるんだキュ!!」
しかし、どこからともなく聞こえた声に負のモンスターは攻撃を止めた。
「誰だい?僕は長く光れないんだけど?」
「そ、その前に僕がコテンパンにやっつけてやるキュ!!」
「その声・・・もしかしてアルちゃん?!」
イエローは顔が下に向いている状態で周囲の状況がよく分からなかったが、「キュ!!」という口癖は聞き覚えのある声だった為に、その声の主がアルクだとすぐに分かった。
「ボ、ボクだって皆の役に立つんだキュ!」
「アルちゃん・・・。」
アルクは精一杯に自身を鼓舞するも声には「震え」が・・・体には「怯え」が付いていた。
「まあいいや君から片付けるとするよ!!」
信号機の負のモンスターが長い機械のような腕を大きく振り上げた。
「キュ?!!!!」
アルクは思わず目をつぶって身構えてしまう。だからといって負のモンスターは先程のように攻撃の手を止めるようなマネをする気はゼロだった。
「フフ、これで目障りなエンジェルランドの者もお終いね。」
「「アルちゃん!!!」」
スマイルピンクとオレンジはアルクを助けたくても激しい戦闘によって素早く動けず更にバーラが目の前にいることで助けに行くことができず、絶望の表情を見せるしかなかった。
「やめてええええ!!!」
だがイエローが叫んだ瞬間、今にも雨が降りそうな曇り空から雷が落ちた。
「「「ギャアアアアアアアアア!!!」」」
その雷は信号機の負のモンスターの機会のような手から閃光のように一瞬で全身に電撃を浴びせ負のモンスターを爆破させた。
「な・・・!!」
「ス、凄い落雷。」
「これって・・・さっちーが?」
周りの者達も驚きを隠せなかった、あんなに気弱そうで敵から逃げてた少女が一撃で負のモンスターを倒したのだから。
「くっ、仕方ない。ここは退くしかないわね。」
「!、待って・・・。」
バーラが逃げようとするのをピンクが止めようとするも前の戦闘のダメージが回復しきれておらず、それは出来なさそうだった。
「フン、これで終わりだとは思わないことね。」
そう言ってバーラは魔界へ通じるゲートを作り魔界へ帰ろうとする。
「・・・なんで?どうしてあなた達は皆に嫌な思いをさせてまでアンハッピーを与えるの?」
しかし魔界へ逃げようとするバーラにピンクが自分の中にある疑問を問うとバーラは足を止める。
「なんで?、ですって?・・・そんなの、キングサタン様の復活の為に決まってるわ。」
「そんな・・・。」
ピンクの問いにバーラは少しの間だけ言葉を詰まらせたが、ピンクの質問に答えると再び歩み始めて暗闇のゲートの中へ消えていった。
「きららちゃん!りんかちゃん!」
「2人共~~~!大丈夫だったキュ?!」
「さっちー・・・ううん、今は悩んでいてもしょうがないよね。」
夢見きららはバーラの答えに少し残念そうな顔をするが日向さちがこっちに向かって来たので、いつもの明るい様子に戻った。
「アタシ達は大丈夫。それよりも、さちちゃんって凄いね!アタシなんか手も足もでなかった敵を一瞬で倒しちゃうんだから!!」
「そ、そんなことないよ!!あれはりんかちゃんが悪いモンスターを弱らせてくれたお陰だと思うから・・・。」
「それでも、あの雷はすごかったよ!ワタシなんておへそが取られちゃうんじゃないかなって思ってたくらいだもん!!」
「きららちゃんまで・・・で、でも、2人の力になれたらな嬉しいかな・・・・。」
日向さちは自分が負のモンスターを倒したことに謙虚な態度をするも2人の笑顔を見ると、まんざらでもないような様子になる。
「ボクだって頑張ったキュー!」
そこに割り込むようにアルクが大きい声を出した。
「アルちゃん・・。ごめんごめん頑張ってたよね・・・。」
「ムーーー!りんか本当に分かってるキューー?!」
「大丈夫だよ!アルちゃんが頑張ってたのは皆知ってるから。」
「きららちゃんの言う通りだよ。アルちゃんのお陰で私も助かったんだから。」
「!!!。そ、その通りだキュ!」
皆に褒められてアルクは上機嫌に胸を張る。
「アルちゃんって分かりやすいねー。」
「りんか!それってどういう意味だキュ!!!」
「アハハハハ!」
そうして4名の間には明るいムードが出来上がり、こうして今日も人間界の平和は守られたのであった。
「・・・くっ、なんなのよあの娘は!私が人を不幸な目に合わせているのは魔界に負のエネルギーがいるからよ!その為にも今はキングサタン様に負のエネルギーを与えなくては・・・・?!、・・・・いいえ、そんなはずはないわ。だってそれが今の魔界のためになるはずだもの。」
バーラはある矛盾に気がつくのだが、それを認めたくはなかったのか、それ以上、考えるのを止めた。
「・・・・ハァハァハァ。・・・ここまで、来れば、大丈夫だろ。」
時は少し前に巻き戻り、スマイルイエローが信号機の負のモンスターを倒す手前になる。
その頃、冬先はスマイルハピネスから逃げ切った所で自分の変身を解いて一息ついているころだった。
「・・・ハァ、そんなに逃げることはねーだろ、リュウト。」
「!、・・・・ウル。」
冬先が後ろを振り向くと息一つ乱れていないウルフェンがいた。
そして遠い方向からドカーンッとした心臓にまで響きそうな衝撃音と共に雷が落ちて、今にも雨が降りそうな曇り空は少しずつ晴れようとしていた。
「あれが新しいスマイルハピネスの力か。」
「ああ、多分な。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
2名の間に沈黙が続く。
「・・・なあ、あのさ・・。」
「説明不足で悪かったな、リュウト。」
「!」
冬先が何かを言おうとしたところにウルフェンが謝る事で遮った。
「正直リュウトの負のエネルギーは弱いが、他の人間と比べると規格外みたいなもんだ。そこからは魔界がリュウトを狙ってるってのは予想はしていた。・・・まあ、なんだ、利用していたのは間違いじゃなかったな。」
「・・・・。」(ああクソ!、なんで言葉が出てこないんだ。確かに俺の今の現状はもしかしたらヤバイのかもしんねーけどよ。だったらジェンダーやウルは俺を魔界の為に利用しようとはしなかっただろ!!俺の方こそ謝れよ!!!)
冬先は心の中では必死に謝りたくても何故か謝れない自分に腹を立てていた。
「だけどよ、最初の俺は人間なんてどうでもよくてよ、人間界を侵略することしか考えてなかった。だが、契約したせいで人間の温かみに触れちまった。」
「・・・!」(もしかして・・・。)
「だからよ、人間も意外といいもんだなと思っちまった。まあ、負のエネルギーを集めるのを止めるわけにはいかねーから、それを邪魔してきやがるスマイルハピネスやエンジェルランドの連中は憎たらしいがよ。」
「・・・なあ、ウル、あのさ・・。」
冬先は意を決して喋ろうとした。
「やっぱ人間も悪くねーわな、・・・特にリュウトの母ちゃん。」
「・・・・・え?」
しかしウルフェンの言葉で冬先は狐につつまれたような顔になる。
「あの人はな、俺によく「ドッグフード」をくれてよ、俺は犬扱いされるのが嫌で絶対に食おうとはしなかったんだ。」
「・・・・。」
ウルフェンは嬉しそうに喋り続ける。
「だがある時、家にある「昼飯」の余り物を興味本位で食っちまった時よ、その旨さに声には出さなかったが喜んぢまってよ、それをリュウトの母ちゃんに見られてしまってな、マズイ!!と思ってたんだけど、それからは逆に俺に昼飯を作ってくれてよ、いやー嬉しいもんだぜ。」
「・・・・あの、ウルさん、俺は?」
冬先はたまらずウルフェンに質問した。
その質問の返しがウルフェンとは多少の付き合いがある冬先にとっては、ある程度の予想がついており、しかもそれが確信に近いものであったとしても聞かずにはいられなかった。
「・・・・人間のゴミ?」
「!、ふ、そうか・・・・人に飯をタダでもらってるニート犬が。」
「あ?」
「やんのか?」
2名の表情が戦闘態勢に入った。そして・・・・
「大体何だ?!お前人の家でおりこうさんに飯を貰ってるってもうニート犬だろ!!」
「ああ?!てめえだって家でゴロゴロしてるだけのニート人間だろうが!!」
「いいや違うね!俺は学校行ってるからニートじゃないでーす。ハイ俺の勝ち!」
「俺だって家でリュウトの父ちゃんと母ちゃんと一緒に掃除の手伝いしとるわ!!」
「それウルの正体バレねーの?!」
「なんかいけたわ!!!」
「俺の親心配だーーー!!!」
それは2名の間では割と日常的なことであり、周りが見ればそれはとても低レベルな口喧嘩で本人達も自覚している。
だけどいつもとは違う点を上げるとすれば、2名は少し楽しそうに口喧嘩をしていた。
そして気づけば空は晴れ、太陽が2名を照らしていた。
なんだかんだブックマーク登録が20人もいてビックリしました。
ただ投稿頻度は諸事情により遅れるかもしれませんので気長にまってくれると嬉しいです(ポケモンやりまくりたい)
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