14 それは雨が降りそうな曇り空だった
この小説を待っててくれた方へ、久しぶりの新作ですが、暗い話になったことを謝罪します。
「・・・と、いうわけなんです。・・・もしかしたら魔界はスマイルハピネスによって滅ぼされる危険もあるかもしれないので逃げた方がいいと思います。」
三幹部の会議から翌日、冬先琉斗はウルフェンがジェンダーに人間界での出来事を報告する為に魔界に行くゲートを作る為の手伝いをし、そのついでにジェンダーにスマイルハピネスの危険性を伝え、更にはスマイルハピネスがあと2人は増えるだろうと予言し、もしもの時の為に逃げる準備をするべきだと伝えた。
幸いな事に、ウルフェンも冬先琉斗と同じ事を考えており、琉斗の意見を後押ししたので、琉斗はジェンダーが自分の意見を聞き入れてくれると確信に近い手ごたえを感じていた。
「まあ、別にそこまでしなくてもいーんじゃねーか?俺はどっちみち、ここで寝ているだけだからよ。」
しかし琉斗の思いとは裏腹にジェンダーは、特に何かをしようというわけでもなく、今の状態をただ静観するだけであった。
「え?!」
これには琉斗も意表を突かれたのか、思わず驚きの声を出してしまう。
(嘘だろ?!もし、さっきの意見が人間の俺だけだったら信じてはもらえないだろうけど、ウルも俺の意見と同じだったから少しは聞き入れてもらえると思ったんだけど?!)
琉斗はチラリとウルフェンの方を見たが、ウルフェンも琉斗と同じ事を考えていたのか、戸惑いを隠せないでいた。
「ど、どうしてですかジェンダーさん?!このままではジェンダーさんも危ないんですよ?!」
ウルフェンは必死になってジェンダーに訴えかける。
「まあ落ち着けって。別に俺達だってなんも手を打ってねえわけじゃねーし。それにスマイルハピネスがここまで攻めてきたって、ここから逃げられねーしよ。まあ、最悪そうなったとしても、お前だけでも逃げられるだろ。」
「それは・・・・・!!そうですけど!」
ジェンダーの冷静な対応にウルフェンは落ち着くも、納得できない感じではあった。
そんな中、琉斗はある疑問を抱く。
「あの、何か空気が読めない感じで申し訳ないんですけど、どうしてジェンダーさんは魔界から逃げれないんですか?」
琉斗は思った。
もしもジェンダーがキングサタンに忠誠を誓っており、そのせいで魔界から逃げるわけにはいかないというのなら多少納得するが、琉斗がジェンダーの言い分から感じたのは、逃げたくても逃げれない、そんな印象だった。
「なんだ、ウルフェンから聞いてねーのか?」
「あ、すいません。色んな事がありすぎてリュウトの奴に説明し忘れました。」
「なら、しょうがねーな。・・・俺たちは負のエネルギーで生きてるようなもんでな。これが厄介なんだが、負のエネルギーは人間界から魔界に供給されていくが、俺たちは生きているだけでも常に負のエネルギーを少しづつ消費していかなきゃ生きていけねーんだ。ただし、今の人間界は負のエネルギーが全然なくてな、魔界ならともかく今の人間界じゃ俺たちの力も出せねーんだ。」
ジェンダーはダルそうな口調だが、琉斗に対してきちんと説明した。
対して琉斗は何がなんだか分からない様子である。
「えっと・・・・つまりは、魔界の人達はここから出られないってことですか?」
「厳密に言えば、人間界には俺達魔界の連中も行けるが、長くは持たねえ。持って1日ってところだ。」
(なんか、ちゃんとした理由があって意外だな。・・・最近の子供向けのアニメってこんな細かい設定なのか?最近の子供は知能が高いな~、下手したら俺より頭いいよね。)
そんな自虐的な事を思いながら琉斗は魔界の事情について少しだけ理解する。
「・・・そう言えば、ウルは何ともないんですけど、それって契約のおかげですか?」
しかし琉斗は新たに思いついた疑問を確認した。
もしもジェンダーの言うことが本当ならば、ウルフェンは人間界で最長1週間は過ごしているので矛盾が生まれるのだが、ウルフェンは他の魔界の者とは違い、冬先琉斗と契約しているのである。
もしかしたら、そこに何かあるのかと思い琉斗は自分の憶測を質問した。
「そうだ。契約した魔界の者は契約者の人間に人間界にいる事を繋ぎとめてもらえるらしい。」
琉斗の質問に今度はウルフェンが曖昧な答えを出した。
「ん?「らしい」って事はウルも最近知ったのか?」
「ああ。俺は契約なんざ知らなかったからな。だがリュウトと契約した時のから、お前の負のエネルギーが俺の存在を保っている感じがするんだ。」
「よく分からんけど要するに俺がウルに首輪をつけて、さらにウルのリードを握っている感じか。」
「リュウトの例えが分かんねーが、なぜかお前を噛み千切りてえと思ったのは何故だろーな。」
「ハッハッハッ。キット、ツカレテルンダヨー。」
ウルフェンの睨みつけるような視線を、琉斗は感情のこもってない言葉をウルフェンから目を逸らしながら言う。
「あー、そういやお前に言わなきゃいけないことがあったわ。」
突然ジェンダーが思い出したようにウルフェンに言った。
「何ですか?」
「あーー、まあ最初に言っておくが・・・・わるかった。」
「「?」」
琉斗とウルフェンはきょとんとした。しかしジェンダーが三幹部の会議の経緯を説明すると、どんどんその表情が崩れていった。
「な・・・・・・!!それじゃあ俺は今、嘘っぱちの情報であのキングサタン様にも目をつけられてるって事ですか?!」
「まあ、すまねえとは少しだけ思ってるよ。一応、ウルフェンが実は生きてました、なんてことを知ってる奴は今のところ俺らだけだからな。」
「これからどうしたらいいんだ・・・・・。」
ウルフェンはうなだれてしまう。
「ところで、どうしてそんな噓をついたんですか?」
琉斗は不思議に思った。どうして噓をつく必要性があったのか分からなかったかので、ジェンダーに質問した。
しかし次の瞬間、ウルフェンが怒ってはいるが、何も言い返せないような顔で琉斗を睨みつけてきたので、琉斗は一瞬気圧される。
「え?!な、なんだよウル。」
するとジェンダーが手で頭を掻きながら気まずそうに言う。
「あーー、それは琉斗が人間だってバレるのを防ぐためだ。」
「え?」
琉斗は驚きの表情を見せる。
「知ってると思うが、魔界の奴らは負のエネルギーが欲しくてな、そうなると琉斗が今魔界にいるなんて知られたら・・・・そうだな、監禁されて負のエネルギーを出し続けられるな。」
ジェンダーが説明していく度に琉斗の顔が青ざめていく。
ジェンダーの説明をまとめると、琉斗に死ぬまで負のエネルギーを出し続けられる、すなわち魔界の連中が琉斗を拷問して負のエネルギーを出し続けるということになるからだ。
(は?嘘だろ?!このアニメの世界ってそんな物騒な話だったっけ?!・・・・いや、よく考えてみたら魔界の奴らは悪い奴ってことに変わりはないから、そういう事なのか?!いや、でも・・・・・あ?え?)
琉斗の頭の中はパニック状態になり、正常な判断ができる状態ではなかった。
「え、で、でもあれですよね。人間なんて沢山いるし、その・・・人間を誘拐とかしてるから・・・その・・・俺なんていらないんじゃね?!」
パニック状態のせいか、それとも自分は何としても生きたいと思ったのか、琉斗は後から振り返ってみると自分でも嫌気がするほどのゲスな意見をしてると思った。
「リュウト・・・お前・・・・・。」
「・・・・・・。」
ウルフェンは琉斗の変わりように言葉を失い。ジェンダーもいつも通りのダルそうな様子ではあるものの、何も言わない。
「・・・・・あ。」
少し冷静さを取り戻したのか、冬先琉斗は「やってしまった」といわんばかりの表情を見せる。
「普通の人間は、ある程度の負のエネルギーを出されると気絶しちまうから、魔界に連れ込んだところで意味がねえ。だから最近は負のモンスターを作って負のエネルギーを集めることにしてんだ。・・・ほぼ無限に負のエネルギーをだす奴なんて、俺はリュウトしか見たことがねえ。」
「そッッッ!」
ジェンダーは魔界側が人間を連れ去ることができない理由を説明するも、琉斗はどうしても反論したかった、いや・・・今の琉斗は屁理屈を言ってでもジェンダーの説明に反論する事で自分の気持ちを少しでも落ち着けたかった。
・・・・落ち着けたかったが、ジェンダーの説明の中にあった「人間は負のエネルギーを、ある程度集めると気絶してしまう」という言葉で、以前スマイルハピネスがサッカーゴールのような負のモンスターを倒した後に、学校の校舎の入口付近で気絶していた少年の姿が頭から離れないでいた。
(ちくしょう・・・!あんなんでジェンダーさんの説明が証明されるわけじゃねーだろ!・・・・クソ!なんで納得してんだ俺は?!)
琉斗は絶望のどん底に落ちたような顔をしていた。
「ま、魔界の奴らはそんな連中じゃねーから・・・・多分な。」
「ハ、ハハ。そっすか。」
ジェンダーは琉斗をなだめるも、琉斗には気休め程度にしか聞こえなかった。
「・・・・お前ら今日はもう帰っていいぞ、一応お前達の提案は、暇だったら伝えとく。」
「はい。・・・いくぞ、リュウト。」
「ああ。」
ウルフェンは琉斗に、それ以上言葉をかけなかった。
「一応、気をつけとけよ。なんなら、お前は今変身を解いているから、常にマスク着けてる状態にしとけよ。」
琉斗とウルフェンがジェンダーの部屋を出ようとした時のジェンダーの提案で琉斗は今自分が人間の姿のままだという事を自覚する。
「・・・あ、本当だ、ハハ。これじゃあバレますね。でも知ってますか?変身すると俺の服装ってパーカー付きの紺色の上着に黒色のズボンになるんですよ?マスクだけかと思ってたら服も変わるんですよ。まあ、今日は変身した時の服装なんで、変身してもお面くらいの大きさのマスクが顔に装着されてるだけなんですけどね、アハハ。」
琉斗は長々と喋るも、声に感情がまるで入ってなかった。
「そうか。」
ジェンダーは黙々と琉斗の話を聞いた後、ただ一言そう言った。
「そうなんすよ。・・・・そういえば、どうしてジェンダーさんは人間の俺なんかに対して助言とかしてくれるんですか?魔界の幹部なんですよね?」
琉斗は自分の中で一番疑問に思っていた事を聞いた。
なぜならば、ジェンダーは魔界の幹部であるにも関わらず、いくら自分の部下と契約した者であろうとも、魔界が侵略する人間界の人間を助言をするメリットがないと琉斗は確信していたからだ。
ただそれでも、自分が危険な立ち位置にいる時に、悪であろうという者に踏み入った質問はそうそう出来ないものだ。
しかし今の琉斗は「自暴自棄」もしくは「失うことのない勇気」になっているせいか、割とすんなりと質問することが出来た。
「そうだな・・・・俺は別に魔界が何をしようが興味がねーからな。」
「・・・・そっすか。」
(それは「答え」になってるのか?)
琉斗は疑問に思うも、それ以上追求するのを止めて、さっきから何も喋らないウルフェンと一緒に部屋を出た。
部屋にはジェンダーだけになった。
「・・・はあ、めんどくせー事になってきたなー。」
それは何に対してなのか、ジェンダーは誰もいない部屋で愚直をこぼす。
「しかしまあ、天界・・・いや、今はエンジェルランドだっけか?そいつらが人間と契約するなんざ、まあ少し驚きもしたが、やっぱウルフェンと契約したリュウトの方が驚きだな。」
ジェンダーは椅子に座ったまま、顔を天井の方に向けながら思った。
ジェンダーからすれば、人間がエンジェルランドの者と契約、しかもそれがエンジェルランドの女王とされているクイーンミカエルならば、驚きこそすれど言われてみれば、「なるほど、ありえる」と思った。
しかし人間が魔界の者と契約したなんて事は、ジェンダーにとって有り得ない事であった。
「ったく、アイツは一体何者だ?まるでこの世界の人間じゃねーみてーだ。・・・ま、俺には関係ねーか。」
ジェンダーは自分の言った言葉を馬鹿馬鹿しく思い、リュウトについては深く考えるのを止めた。
「つーか、ウルフェンには悪いことをしちまったか?ハァ、後で謝っとくか。」
このジェンダーがさりげなく言った一言がジェンダーの表情を曇らせた。それは頭の中にナイトメアが、ジェンダーに向けて放った「部下を馬鹿にされて怒っているのかい?」という言葉を思い出したからだ。
「おいおい何言ってやがんだ俺は。俺は別に・・・・・・。」
ジェンダーは頭の中では言うべきセリフはあった。しかしそれを口に出そうとするのをためらった。
言おうとしようとしても言えなかったのだ。
「・・・・ま、どうでもいい。」
少し考えた後、ジェンダーは考えるのを止めて、椅子から立ち上がり一歩、二歩、三歩と歩いた後、ガラスの無い大人一人がギリギリ寝れるくらいの横幅と縦幅がある、落ちたら常人では生きてはいられない危険な窓で寝たのだった。
ジェンダーが熟睡した頃、お面のような無表情なマスクをつけている変身した後の冬先琉斗とウルフェンが人間界のいつもの公園に帰ってきた。
「「・・・・・・。」」
琉斗とウルフェンはその場から動かず、ただ沈黙していた。
その沈黙を破ったのは琉斗だった。
「なあ、だましていたのか?」
その一言はとても暗く、怒りに満ちていた。
「・・・ああ。」
ウルフェンは琉斗の質問が余りにも具体性がないのにも関わらず、まるで全てを察したかのように、表情を一切変えずに、ただ一言返した。
「ハ、随分と簡単に言うな、おい。こちとらお前なんかと契約しちまったから、こんな目にあってるのによー。なんだよ?魔界に狙われるって?俺は何かしたのか?ああしたさ!こんな奴と契約しちまったことさ!」
琉斗は大きな声でウルフェンに煽るように言う。琉斗はかなりイライラしている。
それが、ウルフェンと契約したことなのか、魔界に狙われるかもしれないことなのか、琉斗自身にも分からなかった。
分からないのに、ウルフェンに大きな声で煽るように言った。遠目から見ると、琉斗がウルフェンに八つ当たりをしていると言っても過言ではない。
「ああ。そうだな。」
ウルフェンは琉斗とは目を合わせることはなかったが、表情を変えることはなく、琉斗の言ったことを肯定する。
「・・・・!!!けっ、適当に返事してんのか?さすがは「負けが確定している悪役」だな!!」
琉斗はウルフェンが怒ってくると思った。いや、正確にはウルフェンを怒らしたかった。
琉斗が抱えているどうしようもないイライラをウルフェンにも味合わせたかったのか、ただ八つ当たりをしたかっただけなのか、琉斗にはそれを考える心の余裕が無かった。
そのせいか、琉斗は自分自身にしか分からないような事をウルフェンに向かって叫ぶ。
当然ウルフェンには琉斗の言った言葉の意味は知る由も無いが、もしもウルフェンがその言葉の意味を知っていたなら、それは最低な侮辱である。
「・・・すまん。何を言ってんのかよく分かんねーけど俺のせいだってことは確かだ。」
勿論ウルフェンには何のことだかさっぱりなため、冷静に正論を言うが、その際に謝罪をした。
「・・・・・!!!!」
琉斗は何か言い返したかった、言い返したかったが何も言えなかった。だが、琉斗の訳の分からないイライラは胸の中から消えなかった。
「こ、こんなことならよー!あの時に死にそうだった、お前なんかと・・・!!」
そこまで言いかけて琉斗は我に返った。それと同時にウルフェンが一瞬、悲しそうな顔をしたからだ。
それを見た琉斗は、自分の表情がマスクによって隠されている事を幸運だと思えるほどに、今の自分がどんな表情をしているのかなんて考えたくなかった。
「なあ、リュウト・・。」
ウルフェンが何かを言おうとした時、でかい負のエネルギーと別のエネルギーの反応をこの場にいる2名が感じ取った。
その負のエネルギーとは別のエネルギーは2名にとっては知っているエネルギーだった。
「!、リュウト・・!!」
「行くならウルだけで行けよ。」
ウルフェンが言い終わる前に、琉斗はウルフェンが何を言うか知っているような感じで、ウルフェンを冷たく突き放す。
「だが、俺はリュウトがいねえと!!・・・・いや、何でもねえ。」
ウルフェンは負のエネルギーの正体は負のモンスターであろうと直感した。
ならばもう1つの、前に感じたことがあるエネルギーの正体はスマイルハピネスであるだろうということに。
ウルフェンは、それならば自分も加勢に行くべきと思ったしかしウルフェンは冬先琉斗と契約しているため、彼の近くにいないと十分な力を発揮できない。
しかし琉斗は行く気が無かった。だからといって普段のウルフェンだったらそんなことで納得できる者ではない。
しかし、今のウルフェンに琉斗を説得しようという気持ちはなかった。
「そうかい。じゃあ俺は家に帰るわ。」
そんなウルフェンの心情を考えようともせずに冬先琉斗は負のエネルギーと別のエネルギーの反応した場所とは真逆の方向に、ウルフェンに背を向けて歩く。
「ああ。・・・俺が死んだ場合、契約はそこで終わるが負のエネルギーの力は、お前の中に宿ったままだ。・・・だから、安心しろ。」
「・・・・!」
ウルフェンの言葉に、琉斗は自分が変身をする時にウルフェンとジェンダーの目の前ではしゃいでいた事を思い出し、足を止めた。
「じゃあな。」
ウルフェンの、「別れ」とも言える言葉に琉斗はウルフェンの方を振り向くも、そこにウルフェンの姿はなかった。
(何だよ。魔界の奴らは悪役だろ?!しかも俺が思ってた以上にヤバイ奴らかもしれないだろ!そうだよ俺は被害者だ!何も悪くねえ!・・・・ならどうしてジェンダーさんは俺にあんな事を・・・・それにウルだって・・・・・ああクソ!何だってんだ!!!)
琉斗は自分の頭がパニックになり、胸がとても苦しくなるのを感じた。
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