表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/59

53:唯一の救い

 その智の背中から金色の煙が薄っすらと立ち昇っている。


その下にいるカプリッオの体からも金色の煙が昇っている。


「智さん。その金色の煙……」


 今の知子なら、金色の煙が何を意味しているのか分かる。知子が目の前の状況を信じたくないと思っても、知子の脳は智の状態を冷静に判断してしまう。


 智は竜巻の青い光りを浴びてしまったのだ。


「イヤだ、智さん」


 智に飛びつこうとした知子の腕を圭介が掴む。


「智に触ったらいけない。触れば、知子さんの体も分子レベルで崩壊してしまう」


「圭介さん、手を放して」


 知子は泣き出す。


「智さん、消えないで」


 智に言ってもどうにもならない事くらい知子にも分かる。でも智を思う気持ちは止めどなく口から出てくる。


「圭介さん、教えて。どうしたら智さんは助かるの?」


 圭介は首を横に振る。


「智はもう助からない。目に見えるほど濃縮された時間エネルギーに直接触れてしまった者は、体の細胞が分子分解を起こしてしまう。痛みがないのが唯一の救いと言うしか……」


 智は知子に言う。知子の王子として。ヒーローとして。


「知子さん、泣かないで。これは僕が望んだ事だから。僕は、2008年に来る前に、未来の知子さんから、絶対に死ぬから過去へ行ってはいけないって言われたんだ。僕もそのつもりだった。でも、どうしても時の摂理(せつり)は変えられなかった。時間は人という代理人を僕の下へ送り「過去に変化があると時空がうねって(ひず)みが生じて未来に悪影響が出る」と言って、僕を執拗(しつよう)に過去へ行かせようとする。疲れて時の摂理に逆らう事を(あきら)めた僕は、自らの意思で2008年の過去へ行くことを選択してしまったんだ。過去へ行くって言ったあと、後悔したよ。2008年へ行くと返事をしてしまうなんて自分自身が信じられなかった。死ぬのは怖いし、逃げたいとも思った。でも、それを知子さん、君が変えたんだ」


 智は気づいて、急に呆れ顔になって笑い出だす。


「あははは。そういえば知子さんは10歳だったね。時の定めに(なげ)き悲しむ僕を救ってくれたのは、15歳の知子さんだったよ。15歳の知子さんも、今の君と同じように、かわいい人だったよ。怒ったり、泣いたり、笑ったり」


 今の智は、10歳の知子を通して、15歳の知子を見ているようだ。


「智さんの言ってる事、分かんない」


 知子は圭介の手を外そうとしながら泣きじゃくる。


「ごめん。僕の言ってる事、10歳の知子さんには難しいよね」


 智の体は金色の煙となってどんどん消えていく。


 その下で気絶しているカプリッオからも金色の煙が昇り、体が消え始めている。


 カプリッオが、智を生かそうとしたのは、タイムマシンで移動した時に、自分の死に智が関係している事実を知ってしまったからだろうか。


 タイムマシンに乗り、自分の死を知っても変える事が許されない、悲しく(きび)しい時の定め。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ