52:干渉
だが、知子は愕然とする。
カプリッオが倒れている芝生に半球が見える。カプリッオもバリアシステムを持っているのだ。
カプリッオは体を起こした。右手にはレーザー銃を持っている。智に殴られたせいで目が回っているのか、しきりに頭を振って立ち上がろうとしている。
智は、知子を抱き上げて走り出す。
「パパさん、知子さんを。絶対に放さないで」
「分かった」
智は、知子を父に委ねるとカプリッオに向って走り出した。
「智さん!」
父にきつく抱きとめられている知子は身動きができなくて、智の死が予告どおりにならないように、祈ることしかできない。
カプリッオは立ち上がる。智に気づきレーザー銃を撃つ。しかし智のバリアはレーザー光線を無力化してしまうため智に当たらない。
カプリッオもそれは知っている。だが追い詰められたという焦りがカプリッオの状況判断を狂わせる。
「チッ」
カプリッオは舌打ちをしてレーザー銃を智に投げつけた。智は飛んできたレーザー銃を避けてからカプリッオに飛びつく。
「もう、お前の好きにはさせない!」
「畜生!」
智のバリアとカプリッオのバリアが干渉しあって稲光が起きている。
カプリッオは懐からナイフを出して智の前で振り回す。
ナイフを避けてばかりいる智。その智の足はリズミカルにステップを踏み、上体をしなやかに動かしながらナイフから逃げ回りカプリッオの隙を誘う。
その隙ができた僅かな瞬間を狙って、智はカプリッオの懐に入った。ナイフを持った手を掴んで動きを封じる。カプリッオの足を引っ掛けて、カプリッオの体を芝生に叩きつけた。
うつ伏せになったカプリッオの背に跨って乗り、智は完全にカプリッオを押さえ込んだ。
カプリッオはもう動かない。声を上げたりもしない。気絶したようだ。
青い竜巻は縮小を始めどんどん小さくなっていく。
トロッキオもその子分も金色の粒子に変わってしまい、知子たちの命を脅かす者はもう誰もいない。
竜巻が完全に消え去った時、ガルネオ島に静寂が訪れた。
知子は父の腕から下ろされた。走ってカプリッオを押さえつけている智の所へ行く。
智は顔をあげて知子を見る。笑顔になって知子に言った。
「これでやっと日本へ帰れるよ。知子さん」