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47:心の繋がり

 知子が(うつむ)いて考え始めた時、圭介が叫んだ。


「智が死ぬのは困る。ここにいる全員がそう思っている」


「父さん!」


 智から久し振りに聞いた圭介を呼ぶ言葉。


 知子から見て、本当の親子なのか分からないが、圭介と智はタイムマシンのエンジニアとSPという立場の違いがあるものの、二人はなんらかの心の繋がりがあり、親子にも等しい関係のようだ。


 圭介はなおも叫ぶ。


「私も未来から来た。だから、智が死んで、智以外の全員が助かるのは知っている。本来、時の摂理(せつり)に逆らう事は許されない。第三者が、これから起こるべき事実を変えると、それから先の未来にどうのような悪影響が及ぶのかも知っている。だから時間エネルギーの流れを安全に未来へ導くためにも、智は死ななければならないのは分かっているつもりだ。それでも、私は智を助けたい」


「父さん。少なくともあなたは、機械工学の博士号を持つタイムマシンの技術者だ。そのあなたが時の摂理に逆らうなんて、絶対にやってはいけない事だよ」


 圭介は智を見る。


「それでも私は、智を助けたい」


「僕を助けたら未来の法律を犯す事になる。あなたが犯罪者になってしまう」


「もし私が智を助けたら、智は時間警察の人間として、犯罪者になった私を逮捕するのか? 智?」


 父が知子の前に歩み出て圭介の隣に並ぶ。


「だったら、智君を助ける事に同意した私も犯罪者だ」


 もう二度と仲間を売ったりはしないと心に決めている父に迷いはない。


 智は(こぶし)を握り締めて言う。


「二人ともおかしいよ。間違ってるよ」


 智は玄関の扉を拳で叩いてから大人しくなった。首をうな垂れて泣いているようにも見える。


 圭介はカプリッオに言った。


「智を助けるには、どうすればいい? お前の交渉に応じようじゃないか」


 カプリッオの口の端が吊り上る。


「簡単な事さ。智を俺たちに引き渡せばいい。俺はタイムマシンで時空間を渡り、智の戦いを見てきた。智は強い。戦いの神マルスのようだ。性格は生意気みたいだが、未来の手術で脳をちょいと(いじ)れば、有能な俺の子分になる。これで智は死なずにすむ。命が助かるんだ。安いだろ?」


 知子の思考が止まった。その代わりに、ガルネオに連れて行かれた圭介の姿を思い出す。今度は智が連れていかれてしまうのか。しかも智の脳を弄る!? 頭に穴を開けるって事? カプリッオの言葉は知子に新たな衝撃を与える。


 知子は考えている場合じゃないと思った。その時。


「だめぇぇぇぇ」


 知子はいきなり叫んだ。考えるより先に感情が口から出てしまう。


「絶対にダメ! 智さんは、あんたにあげないんだからぁぁぁ」


 圭介は、知子の大声に体をビクつかせて驚く。


 智も玄関の扉に手をついたまま知子を凝視している。智は、知子の大声のせいで、自分が死に直面している事を忘れているようだ。


 母は急いで知子の口を手で(ふさ)いだ。


「知ちゃん! 静かにして。撃たれるじゃないの!」


 母の声も大きい。父はビックリ仰天状態(ぎょうてんじょうたい)になっている。


 カプリッオの目つきが怖くなる。日本語が分からないトロッキオは心配になって聞く。


『カプリッオ、どうした? 交渉が決裂したのか?』


『爺ちゃん、それどころじゃねえ。もっと最悪だ。一体あの娘はなんなんだ!? 俺の調子が狂って仕方がねえ。どうして子供って奴は、ああもバカな生き物なんだ』


 カプリッオは何かに(おび)えている。少なくともトロッキオにはそう見える。


 カプリッオは手を振り下ろした。


『全員殺せ。俺たちが生き残るには、もうあいつらを殺すしかない』


 圭介は知子に覆い被(おおいかぶ)さる。


「知子さん!」


 智は玄関の扉を閉めて走り出す。


「逃げて! リビングへ走るんだ!」


 知子たちは来た道を戻ってリビングへ走り出す。


 智が閉めた玄関扉から無数のレーザー光線が貫通して飛び出す。壁からも無数のレーザー光線が貫通して飛び出してくる。


 智は体を張って、知子の両親の盾になる。圭介も知子を抱きかかえた。


 知子の目に、智の背中に命中するレーザー光線が映る。


「智さん!」


 きっと自分を抱きかかえている圭介の背中にもレーザー光線が当たっているに違いない。


 父と母は振り返って智を見る。


「大丈夫か? 智君」


「防御バリアがありますから、ちょっとぐらい当たっても平気です。僕がレーザーの盾になります。さあ、早く中へ逃げましょう」


 知子は智がレーザー銃で撃たれて死んだと思い(きも)を冷やした。智の元気な姿を見る限り、まだ智は死ぬ時ではないらしい。では、智が死ぬ時はいつなのか?

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