29:ブローニング・ベビー
ガルネオはフキンで口元を拭いてテーブルの上の金色の銃を手に取る。銃のグリップを握り近くの壷に狙いを定めて引き金を引いた。
銃口から赤い光線が出て壷に穴が開く。
知子も、父も母も金色の銃が普通の銃でないのを知る。
ガルネオは横目でトロッキオを見る。
『1丁だけか?』
『はい、1丁だけです。ほかはナイフやライトなどで、大した物は持っておりませんでした』
ガルネオは銃を反対の手に持ち替えた。
『こいつは俺たちが持っているレーザー銃よりシンプルでスマートだ。あいつから話が聞きたい。日本語ができる奴を呼べ』
『それは必要ありません。あの男二人はイタリア語が話せます。先ほど車の中で確認をしました。なあ、そうだよな?』
トロッキオはガルネオに説明をしたあと、智と圭介の両方を見る。
『ああ』
『ええ』
智と圭介は返事をした。
ガルネオは金色の銃を前に出して聞く。
『この銃をどこで手に入れた?』
圭介が答える。
『別に手に入れるってほどでもない。お前たち全員が銃を持っているように警察も軍人も普通に持っている』
『普通に持っているだと!? マフィアもか?』
『マフィアも。多分。見た事はないが』
圭介の返事を聞いてガルネオは立ち上がった。パジャマの裾を捲る。出っ張った腹のパジャマズボンのゴムに金色の銃が差し込まれている。ガルネオはそれを抜いて圭介たちに見せた。
両手にある銃はどちらも金色だがガルネオの腹にあった銃は少し大きい。その大きいほうの銃を圭介たちに見せた。
『これは10億アメリカドルもするそうだ。こっちの小さいのはいくらだ?』
圭介と智は顔を見合わる。10億アメリカドルの高額に驚いているようだ。
智がガルネオに言う。
『小さいほうは2000アメリカドルくらいだったと思う』
『2000アメリカドルだと!!』
ガルネオは素っ頓狂な声を上げて続けて言う。
『俺をからかうんじゃねえ。こいつはレーザー銃だ。そんな安くねえだろ。ああ?』
ガルネオは銃を振り最終的に智に銃口を向けた。
今回の智は手を上げずに銃口を見ている。
圭介はガルネオに言う。
『大きいほうのレーザー銃は旧式だ。S&WM39をモデルにアメリカ軍が開発した当初のもので製造数はとても少ない。だから高額なんだと思う。小さいほうは、その後ブローニング・ベビーをモデルにして開発された量産ものだから、価格はそれよりずっと安い』
ガルネオの眉毛がピクリと動いた。
『お前、ひょっとして未来から来たのか?』
圭介は頷く。
『ああ。未来から来た』
ガルネオは大きく頷く。
『ほう。どうやって来た?』
圭介が答えないのでガルネオは銃を突きつけてもう一度聞く。
『どうやって来たか答えろ!』
それでも圭介が答えないので、ガルネオは知子たちに銃を向けた。