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20:反省

 圭介は知子の頷きを見て急に立ち上がる。


「長居し過ぎた。智、そろそろ帰ろう」


「そうですね、父さん」


 バイクの運転のマネをして遊んでいた父が圭介を見る。


「ジョゼフさん、もっとゆっくりしていって下さいよ」


 母も圭介を引き止める。


「パパもああ言ってますし、そんなに遠慮なさらないで」


「ご好意は嬉しいのですが、夜も遅いですし、知子さんもそろそろ寝ないと」


 両親と話をしている圭介の後ろを、智は無言で歩いて玄関へ向う。


 知子は智の横に並んで歩いた。


「ねえ、智さん」


「ん?」


 智は知子を見る。


 知子は智ともっと話をしたいと思う。でも、何を話せばいいのか分からない。今の知子は、急に帰ると言い、歩き出した智の笑顔が欲しかった。


「また、遊びに来てね」


「うん。知子さん、そんなに寂しそうな顔をしないで」


 今はとても優しく接してくれる智王子。


 その智の表情がノーベル学者の話をしたとたん消えてしまったのはなぜだろうか。キング圭介の表情も。


 知子はとても不安でたまらなくて、玄関を下りようとした智の手を掴んだ。


「だって、明日は土曜日で智さんと一緒に学校に行けないから」


「ゴールデンウィークが終わったらまた一緒に学校へ行けるじゃないか。明日だって庭で会うかもしれない。父さんとは毎日会っているでしょ?」


「そうだけど」


 智は知子の手を放して玄関に下りた。靴を履く。


 圭介も後ろからやって来て知子の横を通り過ぎて行く。


「知子さん、ご馳走様でした。また明日会いましょう」


 圭介も玄関で靴を履く。


「うん」


 知子は寂しそうに智と圭介を見送って手を振った。


 智と圭介が出て行ってから、母が知子を呼ぶ。


「知ちゃん。毛ガニが2つ余ったから、相馬さんちに持っていってあげて」


「はい」


 また王子智に会える機会が到来する。知子は毛ガニが入ったボールを受け取ると玄関を下りた。靴を履いて家を出て、小走りで相馬家に行く。


 相馬家の玄関前にたどり着いた時、ドアの向こうから圭介の声が聞こえてきた。


「小学生相手に何をやっているんだ?」


「分かってるよ。だから、こうして反省してるじゃないか」


 智の声もする。


 夕食の途中で抜け出して隣の部屋で遊んでいたから、圭介が智を叱っているのだろうか。


 知子は、一緒に遊んでいた自分も同罪だと思い、急いで玄関ドアを開けた。ノックもなしに。


 会話をやめて知子に注目する圭介と智。二人は靴も脱がずに玄関に立っている。


 知子はドアを開けてすぐ目の前に立っていた二人に驚いて硬直した。


 智の手はベルトを掴んでいる。


 そのベルトには金色に光る金属が差し込まれている。光る金属は知子がよく知っているものだった。


 テレビドラマでよく刑事や犯人が持っている。おもちゃ屋にも売っている。同級生の男子から借りて遊んだ事もある。


 知子が知る金色の金属は、銃だった。

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