プロローグ1
月が上り夜となった日本で北海道に位置する札幌すすきのは今日も沢山の人が行き交っていた。
そんな夜のすすきのには似つかわしくない高校生くらいの少女がメモ用紙を手に取り歩いていた。
その少女は髪の毛の一部が犬の耳のようになっていて目立つ容姿をしていたため、街を行き交う人々はチラチラと少女を見ていた。
その理由のなかには少女が立っている場所も関係していたかもしれないが。
「えっと、ここかな?」
少女はそう呟くと暗い路地裏に入っていった。
その路地裏には大柄な男とひょろっとした体型の人物がいた。
その二人は少女を睨みつけてニヤリと笑いながら近づいた。
「おお、良い女じゃあねぇか」
「俺たちと一緒に来ないかい?」
その少女は一瞬ビクッとしてどうしたものかと思い、目を凝らしてみると後ろにも数人同じような顔をしている人たちがいた。
少女の後ろからも二人に囲まれ逃げ道が少女はなくなった。
(アレを使うしかないか)
だが少女はこの状況がどうでもいいのか呆れ半分にため息をついた。
すると、少女にはこちらに近づいてくる足音が聞こえた。
「グハァ」
「グヵ゛ァ」
その足音がその路地裏の前で止まると、二人の悲鳴が聞こえた。
何事かと後ろを振り向くと、レジ袋を肘にかけた青年が呆れ顔で二人の男の顔と顔とをぶつけていた。
二人の男は勢いよく顔がぶつかったからか、そのまま倒れこんでいた。
「全く」
その青年は疲れきった顔で呟きながら、その少女を通りすぎ前にいた二人を殴ろうとすると、
「お、お前はぁ」
「くそっ、コイツらのアジトだったのか!」
「や、やべぇ殺される!」
後ろにいた三人がそう言うと青年にロックオンされていた二人の男以外はそそくさと逃げていった。
だがその二人は青年を前にして逃げる事が出来なかった。
その為その二人はそのまま青年に殴られ気絶した。
青年が少女を見ると少女はピンっと背筋を伸ばした。
「あぁ、いや。緊張は解いてもらっていいよ」
青年がそう言うと少女は嘘が無いのを確認して気を緩めた。
「でも、何でこんな所にこんな時間で?」
すると青年が当然の疑問を抱き、少女に聞いた。
少女はどう言えばいいかと考えていると、青年が頭を掻き言った。
「あぁ~。おそらくだが、ここに来たと言うことは依頼と言うことでいいんだな?」
青年が言うと少女は頭を大きくふった。
「てことは、殺しか?運びか?それとも匿うのか?」
青年が言うと少女は首を横に降った。
「え、と。人探しです」
少女がいうと青年はなるほど、と呟いた。
「まぁ、立ち話もなんだ。中に入ってくれ」
青年が言うと少女は頷き、青年の後に続いた。