第0話 嵐の中で瞬いて
――雨。
全てを無に帰す大粒の滴が、ただただ土壌に叩き付けられている。
そこに無残に横たわる、一人の少女。彼女の涙や身体から流れる血液すら、雨は痛みを消すかのように洗い流していく。
少女の傍らには、2人の少年が傘も差さずに立っていた。
「――本当に…この子をアシミレイターにするつもりなの?」
一人の少年が口を開く。歳は中学生くらいだろうか。幼そうな風貌だが、その黒髪には歳には不釣り合いな紫のメッシュが入れられている。
「確かに、この区域にイーターが出現するのは想定外だったよ。でも…」
そう言いながら、幼さが少し残る声の持ち主は、不安そうな目で隣のもう一人の少年をちらっと見る。
もう一人の少年が、着ているライダースジャケットのファスナーを半分上げながら、静かに口を開く。
「イーター相手に普通の人間がここまで応戦出来ると思うか?事実、俺達が駆けつけた時には、お互いほぼ相打ちの状態だった。」
少年…にしては落ち着きすぎている。真っ直ぐに少女を見つめる目は、全てを飲み込む深淵のように冷たく、それでいて見つめていれば無限の刃で引き裂かれるような鋭利な眼光をしている。
「でもでも…怪しいよ!僕がアシミレイターになってから、イーターとまともにやりあった人間なんて見たことも聞いたこともないのに!」
精一杯の主張だろうか。羽織っているフード付きコートのフードを被り、両端のポケット手を入れて翼の様にばたばたさせながら、幼い少年は言った。
「いや…いる。」
少女から目を逸らすことなく、深淵の目をした少年が言った。
「かつて1人だけ…ただの人間ながら、"ユニゾン"無しでアシミレイトし、イーターを殺した女がいる。」
曇り空が一瞬、瞬いた。
「その女の名前は…」
刹那、雷鳴が虚空に鳴り響く。
まるで獣の咆哮のような轟音は、声や雨音すら全てを無に帰すように包み込んだ。
その名前を拒むかのように――
どうも。
初投稿させていただく柿野檸檬と申します。
投稿日がゆっくり&短文になってしまうかもしれませんが、頑張って書いていきたいのでよろしくお願いします。
「最近、ご都合主義な異世界モノばっかでつまんねぇ!!!!」
と感じている人のガス抜きにでも見てもらえると嬉しいです。