俺の妹がこんなに俺を好きになるわけがない。【新訂版】
登場人物
山森健一・山戸川高校生徒会会長
山森結香・川嵜中学校生徒会会長兼図書委員会委員長
山森紗輝
俺の名前は山森健一。山森財閥の御曹司だ。今回は、俺の妹の結香に関することだ。俺の兄弟姉妹について説明しておこう。俺には三人の姉妹がいる。一人目は山森家長女の山森莉沙。現在は、大学二年生である。因みに、彼氏はいない。と言うよりも、あまりにも姉が美人過ぎるあまり付き合おうとする男がいないだけだ。性格は二女と変わらない。二人目は、今回の話のメインとなる二女山森結香。中学三年生で生意気、兄である俺を見下すが、姉やもう一人の妹には優しい。モデルをやってるとか。そして、三女の山森凛。最近甘えるようになった末っ子だ。好奇心旺盛で我が家の天使と言ったところだ。
さて、話を元に戻そう。俺の妹の結香は、生意気で兄である俺のことを見ると見下す様な奴だった。今では良好な兄妹関係だ。今から、半年ぐらい前の話かな。まぁ、聞いてくれ。俺と妹のちょっとおかしな兄妹愛を。
俺の名前は、山森健一。山森財閥の御曹司だ。
俺は、学校から帰ると、飲み物を飲もうとリビングに入ると、妹の結香が居ましたよ。スマホ片手に誰かと、会話をしてるようだ。
「ただいま。」
俺は、そう言うが電話に夢中で気付かない。俺は、飲み物を飲もうと、冷蔵庫を開けて、麦茶をコップ一杯分の飲みコップを片付けて、部屋に戻ろうとすると、結香と目が合ってしまった。
「何?」
「別に。」
「あっそう。」
俺は、リビングから出て部屋に戻ろうとすると
「ちょっと、待ってよ。」
「何だよ。」
結香に呼び止められた。
「アンタにお願いがあるんだけど。」
「後でも構わないか?」
「ん……分かった。」
俺は、部屋に戻ってもやることがないので、ベットの上でぼーっとする。それから、時間が経ち、ふと時計を見ると6時25分を回っていた。俺は、下に降りて食卓に入る。親父の姿は無くお袋と莉沙姉と結香と凛が既に席についていた。
「あれ、親父は?」
「仕事で遅くなるって。」
「そう。」
「それより早く席について。」
「へいへい。」
その後五人で夕食を食べた後に風呂に入って俺は、部屋で本を読んでいた。すると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「開いてるから、入っていいぞ。」
扉を開けて入ってくるのは、我が妹の結香だった。
「夕方言ったこと覚えてる?」
「ああ。」
「あのさ、明後日って暇かな?」
「明後日?土曜日か。」
「うん。」
「暇だけど。」
「それで、その、私の彼氏になってくれない?」
「…………………は?」
「だから、明後日の一日だけ彼氏のフリしてほしいの。」
「何で?」
「友達に、その、彼氏がいるかいないか、聞かれちゃって、ついいるって答えちゃって。それで、明後日にデートしてるところを、見たいって言われちゃって。」
この妹は、何で後先考えずに突っ走るのかね。いや、家の女連中は全員一緒か。お袋も莉沙姉も凛はまだだろうけど、いずれはこうなるのかな。
「やれやれ…仕方ねーな…」
「えっ?」
「彼氏のフリしてやるよ。」
「本当に本当に本当?」
「本当に本当に本当に本当だ。」
「じゃあ、忘れないでよ!明後日の午前9時に駅前で待ち合わせだからね。」
「分かった。」
「遅れたら、許さないから。」
「分かってる。」
俺は、そう言った後部屋に戻り、カーテンを開けて夜空を眺めていた。
「何時もと変わらなく美しく綺麗な夜空だよ……………結衣。」
俺は、夜空を眺めながらそう呟いていた。俺はここで、結衣、という名前の人物について語る気はない。いつの日か話そうと思う。俺は、カーテンを閉めて、ベッドに横たわるとそのまま目を閉じて眠りについた。
翌日は何時もと変わらない一日を過ごした。
そして、土曜日になった。俺は7時に起きると、着替えてリ
ビングに向かう。リビングには、お袋がテレビを見ていた。
「おはよう、お袋。結香は?」
「さっき出掛けていったけど…」
「ふーん、そう。」
「アンタも着替えてるけど、どっか行くの?」
「まあ、ね。」
「あ~もしかして、白岩さんとデートかな?」
「ま、まあ、そんなところかな…」
「じゃ、そういうことにしとくわ。」
なんだか全てを見透かされているような気がするのは、何でだろう?でも、俺は一生親には逆らえない、と悟ったよ。
「まぁ、それじゃ行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
俺は、家から出て待ち合わせの時間にはまだ早いので、家の近くのコンビニに入る。朝飯を食べてなかったので、朝飯を買うことにしたのだが、店内に入ってビックリしたぜ。妹の結香がいるじゃねーか。見つかると面倒なので、雑誌を立ち読みするフリをしてやり過ごそう。と思っていたのだが、
「アンタ、何してんの?」
はい、見つかりました。早速失敗。てか見つけんの早いよ。ここは、他人の振りをすべきか、しかし、後が怖い。ここで、無視するのは得策ではないと思うのだが、バレてしまった以上隠し通すことは、不可能であろう。仕方がない。潔く、話しますか。
「朝飯食べてねえ──」
「まさかとは、思うけど、朝飯買いに来たなんて言わないわよね?」
俺の言葉を遮って、そう釘を刺されちまった。おいおい、俺は弁明することも出来ねえのかよ。全くとんでもねえ妹だ。こんな妹の一日彼氏なんて、先が思いやられる。てか、絶対無理。誰がなんと言おうと、絶対無理。無理なものは無理。
仕方がなく、俺は
「雑誌を読みに来たんだよ。」
そう言っちまった。言った後に気付いたんだが、朝飯を買う口実が無くなった。
俺は苦笑しながら、店内を出て駅前まで行くことにした。
何でコンビニから一緒に行かないかって?
それは、ムード的な何かかな。というより、そうしないと結香が一々うるさいので、駅前で待つことにする。
駅前のロータリーで待つこと5分先程見た結香が笑顔で近付いてくる。
「お待たせ。」
「おう。」
「んじゃ、行こっか。」
そう言うなり結香が左腕に自分の腕を絡ませてきた。
「なっ、お、おい。」
俺が戸惑っていると、
「シャキッとしろ。友達が見てるから。」
そう言われて
「えっ、ど、何処に?」
俺は、キョロキョロすると
「キョロキョロすんな!前向いてろ!」
小声でそう言われた。
その後俺たちは、喫茶店に入りそれぞれ飲み物を頼んだ。
俺は、ブラックコーヒーを、結香は、紅茶をそれぞれ頼んだ。俺と結香は、あくまでも恋人というわけで、恋人らしい会話をしていたのだが、時折結香が激しく怒ることになったのを、なんとか宥めて、店を後にする。
店を出た後結香は愚痴をこぼす。
「アンタって本当にデリカシー無いよね。」
「そんなんで、彼女と上手くいけると思ってんの?」
「大体ね、アンタは、いつもそうなのよ。」
とかなんとか色々と愚痴をこぼしていた。最終的には、俺への愚痴をこぼしていた。
そんな結香のご機嫌を取るために、何か買ってやることにした。妹であり、今は一日だけの彼女に。
俺と結香は、某有名洋服店に入った。
それから結香は、店内を歩き回り、自分に似合う服を選んでいた。俺は結香が見える場所で、服を見ていた。
(べベベ別に女性物の服をみみ見ていた訳じゃないぞ。男性物の服を見ていたんだからな!かかか勘違いするなよ!)
俺が頭の中で思考が完全にパニックになっているところで、結香が戻ってきた。左手には、どれも結香に似合いそうな服と右手には明らかに結香の物ではない服を持っていた。
「それ買うのか?」
「………うん。」
結香は頷いてレジに向かう。俺もその後についていく。値段は、そこそこの値段で買えた。
俺と結香は、帰路についていた。
「ところで、友達は近くで見ているのか?」
「えっ?」
「えっ?じゃねえよ。友達が見てるんじゃなかったのか?」
「ああ、もう平気見てないから。」
「そっか。」
「…………。」
「…………。」
俺と結香は、無言で家に帰宅する。玄関には靴が無かった。家族のものと使用人の靴が無かった。俺は、腕時計を見ると時刻は7時30分を回っていた。
いつもなら、親父が帰ってきていて、お袋と莉沙姉と凛と結香と親父が食卓の椅子に座って、俺を待っているのに、今日は違った。
迎えに出てくるものは誰一人いないで、リビングからも食卓からも気配すら感じない。
俺は、靴を脱いで家に上がり、リビングに入るとテーブルの上に置き手紙が置いてあった。
まずここで、第一に考えるのが家族が夜逃げしたかどうか。しかし、それは有り得ない。
第二に考えるのが、何処かに行ったかどうか。それは、充分考えられる。
第三に考えるのが、俺と結香を驚かせようとしていることだ。しかし、それは無いだろう。となると、考えられるのは第二の何処かに行ったかということだろう。
何処に行ったかは、置き手紙を見ればはっきりするだろう。
俺は、置き手紙を手に取り内容を一瞥する。
『健一と結香へ
お父さんとお母さんは、友達の結婚式に呼ばれているので、明日の昼まで帰ってきません。凛は一緒に連れていきます。莉沙は、大学のサークルで明日の朝まで帰ってきません。なので、今日は、健一と結香だけの寂しい夜になります。健一は結香の面倒をしっかり見ること、結香はお兄ちゃんの言うことを良く聞くこと。 母・紗輝より。』
朝に言っといてよ。置き手紙じゃなくて、ちゃんと言っといてよ。そんなことを考えている場合じゃないか。夕飯を作らないと。いつのまにか後ろにいた結香を見て、
「結香、ちょうど良いところに、夕飯作るから手伝ってくれ。」
「………分かった。」
やけに素直だな。服を買った辺りから素直だな。そんなことを考えたが、直ぐに忘れてしまった。
それから、2人で夕飯を作り終えると、親父がいないからか、夕飯を食べながら他愛もない会話に花を咲かせていた。
お風呂を沸かしておいたので、先に結香が入りその後に俺が入った。俺が、風呂から出るとリビングで結香がパジャマ姿でテレビを見ていた。
「珍しいな、こんな時間にテレビ見てるのも。」
「うん。お父さんがいないからね。」
「何見てんだ。」
「ドラマ。」
「そっか。」
「あ、あ、兄貴も見る。」
「え、ああ。」
「ん。」
結香は、視線で自分の隣を差した。どうやら隣に座れと言ってるようだ。俺は、結香の隣に腰を降ろすと、結香が肩にもたれ掛かってきた。
ドラマが、終わると、俺は欠伸をして立ち上がり
「さて、寝るか。」
そう言ってリビングのドアに手をかけたところで、袖を引っ張られた。結香が俯きながら袖を握っていた。
「どうした?」
「……い、い、一緒に、その、ね、ね、ね、寝て良い?」
「どうして?」
「一人じゃ怖いから。」
「良いよ。」
結香の顔が笑顔になる。
俺の部屋に入ると結香は両手で持っていた紙袋を差し出してきた。
「これ。」
「俺にか?」
「うん。」
俺は、結香から紙袋を受け取るとその中には、綺麗に包装された包みが入れてあった。
「………これ開けて良いか?」
「うん。」
俺は中の包みを開けると、今日買った洋服が入っていた。
「これ今日買った奴だろ。」
「うん。」
「これ最初から、俺にプレゼントするつもりだったのか?」
「うん。だって。」
「だって?」
「私が、だ、だ、大好きな、お、お兄ちゃんのだから。」
「結香、ありがとう。」
「ねえ、お兄ちゃん。」
「何だ?」
「私、お兄ちゃんのことが、世界で一番好き。」
俺の妹が、俺の妹がこんなに俺を好きになるわけがない。