昔っからの癖
「・・・・なんだか気まずい。」
真琴は窓拭きをしながら溜息を付いていた。一昨日起きた変態騒ぎでいろんなことが起きすぎて真琴の頭の中は混乱していた。
初音さんと一緒に小崎の元へ行けば、役に立たないといわれるし・・・でもそれは小崎さんがちゃんと謝ってくれたし・・・私を離したくないようなこと言ってたけど、それ程ここは人手が不足しているんだろうな・・・・。そして変態は現れるし・・・でもそれは自分の不注意で・・・。小崎さんに助けてもらったからよかったんだけど・・・・寝顔や泣き顔を見られたし・・・・あの時はもう安心しちゃって・・・。
その上、慧兄とは犬猿の仲・・・しかも小さい頃にお世話になっているのに私気づきもしないで・・・・。
「はあ・・・。」
最悪だ・・・・。
「どうしたの?」
「ひっ!!!!!!!!」
真琴は考え事している中、話し掛けられ体が強張った。恐る恐る振り向くとそこには初音の姿があった。
「どうしたの?そんな声出して。おどろかせちゃったかな。」
初音の言葉に真琴は両手を振り、
「いえいえ!!私が考え事してたもので。びっくりしちゃって。」
初音は少し考え込み、笑顔で
「小崎さんのことだね。」
「え!!!!」
なぜわかるのか不思議な顔をさせている真琴に初音はくすくす笑いながら、
「だってずっと考えてること口に出てるよ。ちなみに僕は全部聞いちゃったんだけどな。」
「!!!!!!!?」
初音の言葉に真琴の顔色は変わっていった。
初音は真琴のころころ変わる表情を楽しみながら
「大丈夫。誰にも言わないから。安心して。」
「・・・・・はい。」
初音は腕時計を見ながら、
「そうだ、そろそろ時間だからお茶でもどうかな。」
「お茶ですか・・。」
真琴は少し考え込む。本日、小崎とは一回も顔をあわせていない。でもあの事件があった日帰り際、明日は休むように、後、明後日は仕事が終わったら私が帰り送りますから。っといわれたのだ。
後ろで慧が叫んでいたが小崎が連れて行ってしまったので何を言ってるかわからなかった。
そんなことよりもここでお茶をしたら小崎のいったことを無視するかたちになってしまう。
でもかといって会いづらい・・・。
「だめ?せっかくおいしいお菓子が手に入ったのにな・・・・。」
初音の優しい甘えた顔に普通の人ならいちころだが真琴はお菓子という言葉に我に帰り、
「もちろん、行きます。」
はっ!!!!!
やってしまった・・・・。
真琴は茶菓子に釣られ迷うことなく即答するのだった。
母さん・・・・私はばかです・・・・。
だって・・・・。
またお菓子に釣られました。
「だね。」
「とほほ。」
初音の笑顔に段々自分自身が情けなくなってきた真琴であった。
考えてることがずっとさっきから口に出ていることなど真琴に知る由もなかった。
それはそれでと聞いている初音は最初はちゃんと口に出ていることをいったがその後はその後で、それはそれでおもしろいと本人に伝えることはなかった。
真琴の落ち込みように初音は、
「大丈夫、小崎さんにちゃんと僕から伝えたから。」
「本当ですか。」
「もちろん。」
「なんだ〜。」
真琴はほっとしたのかお茶を口にした。
「なんていいましたか。」
小崎の目付きが鋭くなった。その理由は初音の一言、
「真琴さん、預けさせてもらいますね。」
繰り返し、初音は小崎に伝える。小崎はこほんっとせきをすると、
「どうしてですか?」
初音は笑顔で答えた。
「あの子、考えてることが口に出ちゃうんだね。」
「・・・・・・。」
小崎は嫌な予感がした。
「今日の彼女はずっと悩みを口にしているもんだからね。」
「・・・・・・。」
やはりか・・・・。
小崎は深い溜息を漏らす。彼女の事だ、何か気にするだろうとは思っていたが、むかしっから考え事が口に出る癖が直っていない。
「普通そんな癖ないだろう・・・。」
「?」
「いえ、独り言です。」
小崎は気分を入れなおし、口を開く。
「初音様・・・いくら悩んでいるとはいえ、メイドに気を使う必要はないのですよ。」
小崎の言葉に初音は目を細める。
「おや、そういう小崎さんもあの子のことになると感情的になってると思うけど。」
「・・・・・・。」
「それに・・・彼女・・・小崎さんに会いたくないって・・。」
「え・・・・。」
小崎の顔が青白くなっていく。初音はくすくす笑いながら、
「じゃあ、これから僕は、彼女とおいしいお茶をしにいくから。」
っというと部屋から出て行った。
小崎は呆然として言葉も出ないのであった。
「やりすぎたかな・・・。」
「えっ?」
初音の言葉に真琴は反応する。
「いや、なんでもないよ。」
「・・・・・。」
でもこれくらいいいですよね。ちょっとは反省してもらわないと・・・。
初音がそのように言っていたことなど真琴には思いもしなかった。
二人はおいしいお茶の時間を過ごせたのであった。