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怒り
「ぶっ殺してやる」
河本は胸の鼓動を早めながら怒鳴った。
公園のベンチを一つ占領するように寝転がっていた酔っ払いが、のろのろと顔を上げる。
だが、その目はすぐに閉じかけ、再び夢の中へ沈もうとしていた。
「ふざけんな。ぶっ殺すぞ」
河本は拳を振り上げ、もう一度怒鳴った。
その時、どこからともなくスーッと一人の老人が現れた。
「人を殺しちゃいけない」
「何言ってんだ、ジジイ。誰でもいいからぶっ殺したいんだよ。ってか、コイツ邪魔だろ。」
老人は酔っ払いをチラッと見る。
「邪魔ではあるな。…でも、人を殺したら、長い長いムショ暮らしだ。そんなことより、そのイライラを発散できる場所へ行きたくないか? あんたの願いが叶うぞ」
「“あんた”はないだろ。“あんた”は。失礼じゃねえか」
「じゃあ、そこのあなた」
「それもなんか気持ち悪ぃな。まあいい。それで?」
「人を殺したら罪になる。だから楽しいところへ行かないか、と誘っているんだ」
河本は眉をひそめた。
「確かに……でも、そんな場所があるのか?」
「あるんだよ」
老人はカバンの中からリストバンドのようなものを取り出した。




