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第8話 恋の相談と母のぬくもり

ライズ家が自領に帰った後、課題の刺繍をしていたら隣でレースを編んでいたお母さまが遠慮がちに話しかけてきた。


「リリア、キース君と何かあったの?」


今までは家族が領に帰ってもうちに残ってウィル兄さまと遊んだりしていたのに今回は一緒に帰っていったし、そもそも私たちの間に以前のような無邪気なコミュニケーションが無かったのだから、さすがにお母さまたちも変だと思ったのだろう。

事情を説明してもいいんだろうか。言ってしまうことで取り返しのつかない方向に進んでいってしまったりしないだろうか。


「お父さまには内緒にしておいてあげるから、悩みがあるなら教えてちょうだい。リリアの辛そうな顔、見ていられないわ」


「私の、気のせいかもしれないから・・・」


「そう?でも気になっていることがあるんでしょう?ウィルもなんだか変だし」


お父さまに内緒なら大きく動くことはなかろうということで思い切って相談してみた。


「あのね、お母さま、もしキース兄さまと結婚できなくなったらどうする?」


「喧嘩でもしたの?別に、まだ二人とも若いんだし今から他の相手だって探せるんだから嫌ならやめてもいいのよ?」


「でも、ライズのおじさまたちと気まずくならない?」


「大丈夫よ、ちゃんとお互い納得して解消するなら。そもそもお母さまたちが盛り上がって決めた婚約だもの。あの頃は二人ともまだ子どもだったんだし、気持ちが変わることだってあるわよ」


「・・・キース兄さま、お好きな方がいらっしゃるみたいなの。はっきり聞いたわけじゃないんだけど」


「・・・そう。キース君も年頃だからそういうこともあるかもしれないわね。でもはっきり何かを言われたわけじゃないんでしょう?」


「そうなんだけど、学校で噂になっていて・・・それにキース兄さまと同じ学年の伯爵家のご令嬢だからそちらの方がライズ子爵家としては良いでしょう?」


「そうねえ。こんな田舎に嫁いでくる気があるのなら伯爵家との縁は欲しいかもしれないけれども、そんな望みがあるなら最初からリリアとの婚約を結ばないと思うわよ」


「それに、それに、キース兄さまは私に会いに来てくれないの。ウィル兄さまは来てくれるのに。私から会いに行くのも上級生の教室だから行きづらいし、中庭で見かけることはあるんだけど、その伯爵令嬢といつも一緒にいて・・・それで、ウィル兄さまが怒っちゃって、キース兄さまと喧嘩したみたいなの」


話しているうちに涙が出てきた。お母さまが私の頭を撫でながら甘やかしてくれるから涙は止まることなく頬をつたっていく。


「・・・キース兄さまがね、一度ばったり中庭で会ったとき、その伯爵令嬢に私のことを紹介したの。その時、昔から妹のように可愛がっていて、家同士の仲がいいから、それで婚約したって言っていて・・・。伯爵令嬢はキース兄さまに婚約者がいるってこと知らなかったみたいで、それで言い訳みたいに妹みたいなものって言われて・・・その伯爵令嬢はとても大人っぽい綺麗な人で、きっとキース兄さまはああいう大人っぽい方がお好きなんだわ」


「・・・16歳と12歳ではちょっと年が離れているから妹みたいに思えるのかもしれないわね。でも、あと数年もしたらそれくらいの年の差はあまり関係なくなるものよ。お父さまとお母さまなんて6つも離れているわ」


「キース兄さまが他の方をお好きなまま、結婚生活なんて送れるのかしら」


「リリアはキース君に恋をしているのね」


「わからない・・・わからないわ。これが恋なのかどうなのかわからないんだけど、でもキース兄さまが他の方を好いているのが辛いし、キース兄さまと結婚できなくなるかもしれないと思うと怖くて。恋ってもっと幸せなものだと思ってたわ。こんな苦しいなんて」


「そうね、恋って楽しいだけじゃないわね。苦しいこともあるわ。

・・・ねえ、おうちのこと、お母さまたちのことは何も考えなくていいからそこは気を遣わないで。それで、少し離れてみたらどうかしら。今までが近すぎたのよ。

そうね、期限を決めて、1年くらい。その間に気持ちも整理できるでしょうし、キース君も妹ではないって気が付くかもしれないわよ。リリアもキース兄さまって呼ぶのをやめないとね。兄さまって呼ばれてたら妹って思っちゃうのも無理はないもの」


「そうね・・・そうしてみようかしら。キース兄さまじゃなくて、キース様、にするのね。ちょっと呼びづらいけれど、確かに妹じゃ嫌って言いながら兄さまって呼ぶのは矛盾してると私も思うわ」


1年。長いようだけれども、意識を変えたり、今後を見極めたりするにはそれくらいの時間は必要なんだろう。とりあえずの方向が見えたからか、期限が決められたからか、それとも一人で色々考えていたことを吐き出したからなのか、涙はいつの間にか止まっていた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです^^

明日からは20時更新になります。

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