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第33話 お義姉さまと試練

情熱的な恋とはいえなくても、グレッグ様と私の間はうまくいっていた。高学年になってからは長期休みのたびに辺境伯領で領についての教育を受け、二人で領内を見て回ったりした。

この土地を守っていくんだという気持ちはますます強くなり、婚姻後の自分の役割、責任についても前向きに考えている。それを二人で共有する時間は未来への希望とお互いへの信頼に満ちていた。


ただ、一番上のお義兄さまに嫁いできたエリザベス義姉さまだけが少し当たりが強かった。辺境伯様や夫人が温かく迎えてくださったので少し気を抜きすぎていたのかもしれない。都会の侯爵家から嫁いできたお義姉さまが微笑みながらも厳しい目を向けていたことに気が付かなかった。


時を同じくして二番目のお義兄さまが領軍の部隊長の娘さんと結婚することになったのだが、部隊長はもともと伯爵家の次男だったのが家を継ぐことなく軍に入ったため今は正式な身分は貴族ではなく平民である。その娘さんも当然平民なわけで、それもお義姉さまは気に入らない。


辺境伯領を治めるのに軍の存在は大きい。国軍との合同訓練もあるため強くなければならないのだ。それもあって高位貴族の次男という立ち位置であるにもかかわらず、お義父さまもお義母さまも特に反対することもなかった。「平民でもいい」のではなく、「部隊長の娘ならば問題ない」ということなのだと思う。


二番目のお義兄さまは辺境伯家が持っている伯爵位も継げるのだが、自分は軍に身を捧げるんだとか言って拒否している。領軍は多くを平民が占めるため爵位はかえって邪魔なのだそうだ。それでもせっかく継げる爵位があるのに平民になるなんて、とお義姉さまは眉をひそめていた。


お義母さまは都会の流儀も北方の流儀もわかって使い分けているのでそのうちお義姉さまも慣れるのかもしれないが、娯楽も少なく煌びやかな社交もほとんどない北方の生活、そして価値観の違いに苦労しているようだ。その鬱憤を晴らすように、というのは言い過ぎかもしれないが、スパルタ教育を受けることになってしまった。


「男爵家の令嬢ね。グレッグさんは子爵位を継ぐとはいえ辺境伯家の分家。いくらお勉強ができるとはいっても、分家の当主の妻としてはマナーも社交術も甘いんじゃなくて?」


正直マナーについては学校で一応叩き込まれたものの、幼少期から男爵家相当の教育しか受けてこなかったせいで細かい癖がなかなか抜けない。お義母さまは、特に社交をする必要もないのだからと及第点をくれたが、お義姉さまは納得しなかった。


「リリアさん、まず立ち方、歩き方から始めるわよ。・・・あら、立ち姿は問題ないわね。田舎育ちで体幹がしっかりしているのかしら。でも歩幅が大きいわ。頭も動いているし。そこの廊下を、まずはこのハンカチが頭からずれないように3往復しなさい。そのあとはこの本を乗せてね」


ハンカチは何とかなったが、本となるとなかなか難しい。お義姉さまがお手本を見せてくださったが、本が頭に吸い付いているのかと思うほどの安定感で長い廊下の端から端まで歩いて見せた。


「私が連れてきた侍女たちはみんな貴族出身だから見てもらうといいわ。あなたたち、廊下でこの子の歩き方の指導をお願い。私は仕事があるからよろしくね」


そう言って執務室に戻っていった。彼女は彼女で次期辺境伯夫人としての仕事をお義母さまの手伝いをしながら学んでいる。

高位貴族の侍女は子爵家や男爵家出身であることが多い。ある程度のマナーを身に着けていなければならないし、貴族社会のしきたりに慣れていないと行き届いた世話はできないからだ。また、行儀見習いとして期間限定で預かることもあるという。

北方まで共にきた侍女たちは主と共に辺境に骨を埋める覚悟で来たのだと思う。娘が多い家だと多額の持参金が用意できず、王宮や高位貴族の侍女として働きながら自力で結婚相手を見つけなければならないことも多いそうだ。本人を見染められての結婚なら持参金が少なくてもなんとかなるらしい。


私がキース様と婚約した時は親同士の話し合いで持参金も支度金も無しということになっていたらしいので、貧乏男爵家の娘でも何も気にしたことはなかった。今回のグレッグ様との婚約も、辺境伯様から男爵家が出せる範囲で良い、支度金も余ったら私の資産として持参金に含めても良いという破格の条件を提示していただいたようで、そのおかげで爵位はだいぶ離れているものの何とか恰好がつく形に納まった。


そういうわけで、お義姉さまが連れてきた侍女は3人だったが、全員が子爵家の娘で私よりも爵位が高いのである。洗練されているとは言い難い男爵家の娘が主の義妹になることに思うところがあるようだった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです^^

明日も20時更新になりますのでよろしくお願いします。

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