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第32話 きちんとした婚約

持参金やら支度金やらの話の他、ついでにウィル兄さまの卒業後の進路については当主同士で話し合うということで、グレッグ様と私は待ちわびているだろうお母さまたちのお茶会に合流することとなった。サロンではいつの間にそんなに仲良くなったのか、マナーの授業なら先生にこってりと叱られそうなほどの笑い声が響いていた。


「母上、どうしたのですか、そんなに」


「だってメロー夫人ったら面白いんだもの」


「まあ、アイーシャ様こそ、私の知らない武勇伝ばかり披露なさるから。そんなお話、いつものお茶会でも伺ったことありませんわ」


「それはそうよ、あんな大勢いる中ではできないわ、こんな話」


最初にご挨拶した時はキリっとしていたのに、実際は華やかで朗らかで、少女のようで何とも魅力的な人だ。黒髪に青みがかった瞳、背が高くスレンダーな美人が目の前で笑い転げているのにぼぅっと見とれていると、グレッグ様がため息を付きながらソファにエスコートして下さった。


「なんのお話をしていたのですか」


「メロー夫人は辺境領の北の端の出身なんですって。ここよりも寒いのよ。色々なエピソードが面白くって。南と全然違うんだもの」


「メロー夫人は辺境伯領のご出身なのですか?」


「もうずっと昔に辺境伯領に併合していただいた領ですわ。わたくし一人しか子どもがおらず、維持が難しくなったものですから、わたくしが嫁いだ時に併合していただいたんですの。爵位も両親が亡くなって返上いたしましたわ」


「そうやってどんどん大きくなるのよねえ、辺境伯領って。北の方ほど厳しい土地ですからね。どうにかしようにも自然相手だと難しいわよねえ」


「先代の辺境伯様が快く引き受けてくださって。今はもうほとんどあの土地に住んでいる人はいないでしょうけど、当時はまだ土地に愛着のあるお年寄りが多くて、そのまま受け入れてくださって本当に安心したものです」


「厳しい土地ほど愛着が湧くのかしら・・・出来の悪い子ほど可愛いみたいな?」


「まあ、アイーシャ様ったら!うちの長男なんて出来も悪いし憎たらしいですわよ、なんだか急に大人びてしまって」


さらに盛り上がるお母さまたちに、私たちは話に加わるのを早々に諦めた。これはどうにも会話にならない。そういえばキース様のお母さまともこんな風に盛り上がって話していたな、と思い出す。北方の気質なのか、うちのお母さまのコミュニケーション能力なのか。とりあえず両家の相性が良さそうで良かった。


「リリア嬢、さっき父上が言っていた話なんだけれども、そんなに気負わなくていい、といいたいところだけれども、もし婚約が発表されたら、また色々言ってくる有象無象がいると思うんだ」


「そうですね。捨てられたのにすぐに辺境伯令息と婚約だなんて今度は何て言われるのか、もはや楽しみになってきました。釣り合わない、身の程を知れ、図々しい、身を引け、グレッグ様がお可哀そう、の他に何か無いのかしら」


「なんか散々聞いたセリフだね。まあ、今回は事情も事情だし、うまいことやるよ」


公爵家も早いに越したことは無いと思ったのか、それからすぐ令嬢の婚姻の日取りが決まった。公爵令嬢は初婚ではないが、次期伯爵に嫁ぐということでそれなりの結婚式を行うということで少し先の予定だ。それでも日取りが決まったということはこちらも動けるということ。

辺境伯様の采配で同日に婚約の届け出をし、公爵令嬢の結婚の日取りと共に二組の婚約が調ったことを新聞で発表することになった。ほぼ事務的なことしか書いていないシンプルな記事だが、私たちについては「辺境伯領にて子爵位を継承する予定の三男に北方出身の男爵令嬢が嫁ぐ」という書き方になっていた。辺境伯家の三男、とだけ書くとまた周りがうるさかろうと気を遣っていただいた形だ。


長期休みが終わり学校に戻るとクラスメイト達は少しからかいながらも祝福してくれた。以前突っかかってきた人たちの一部は相変わらず嫌味を言ってくる。釣り合わないだの身を引けだののセリフに今度は「捨てられたくせに」というのが加わった。

男爵令嬢や子爵令嬢にしたらグレッグ様はとんでもない好条件の相手だ。手が届く子爵家を継ぐ。後ろ盾は辺境伯家。ごたごたがあった私を排除してそこに収まりたいと思うのはわかる。

だが毎回グレッグ様の「辺境伯家が望み、決まったことです」の一言で追い返されているのに本当に暇な人たちだ。


それでも諦めの悪い人というのはいるもので、二つ上の伯爵令嬢がグレッグ様に執着して色々と仕掛けてきた。私に嫌がらせをしたり、グレッグ様に色仕掛けで迫ったり。果ては母親を巻き込んで私の家に圧力をかけてきた。さすがに辺境伯家が激怒して当主に激しく抗議したところ、彼女は学校をやめ母親と共に領地で謹慎となったらしい。当主は何も知らず、ご令嬢の婚姻相手も同じ伯爵家の次期当主に目星をつけていたところに、突然の辺境伯家からの抗議なのだから可哀そうな話である。

それを見てようやく私たちにちょっかいを出す人がいなくなった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです^^

明日も20時更新になりますのでよろしくお願いします。

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