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第30話 グレッグ様の求婚

お読みいただきありがとうございます。

ここから第二章、ミア視点固定になります。

ミアが少しずつ大人になる物語をお楽しみいただけると嬉しいです。

変わらず、一日一話、20時更新になりますのでゆっくりお楽しみください。

予想通り、グレッグ様は私に会いに来た。会いに来て、いきなり頭を下げられた。


「数か月様子を見るって言ってたのに父が介入してしまって申し訳ない。言い訳にしかならないんだが、エリス嬢にも批判が向いたことで、彼女個人が暴走したらしいんだ。それで家を通さずに無理矢理ライズ殿に迫ったらしく、困ったライズ子爵に相談されて口をはさむことになったんだ」


「いいえ、ありがとうございます。伯爵家からのお話かと思っていたんですがエリス様の独断だったんですね。なんとか丸く収めてくださって助かりましたわ」


「サウスフィールド伯爵もエリス嬢をかなり叱ったらしいよ。順序が違うと。エリス嬢を子爵家に嫁がせるとしても、時期的に今動くのはちょっと早すぎるからね」


「エリス様はそこまでキース様をお好きだったんですね・・・」


「まあ、噂の責任をきっちり取らせたいというのもあるだろうけどね。悪評が立ってさらに縁遠くなったら困る」


「本当に私たちが未熟なばかりにいろんな方にご迷惑おかけして申し訳ありません」


「リリア嬢が謝ることじゃないよ。ライズ殿が迂闊だったのは確かだけど、君がどうにかできるわけじゃなかっただろう。それに辺境伯家と僕にとっては思いのほか早くチャンスが回ってきて有難いくらいだよ」


「まあ・・・でも、本当に私で務まるのでしょうか」


「この前も言ったけど、僕は君がいいと思っている。能力や条件だけじゃなく、君の人柄も好ましいと思っているんだ。二人で辺境伯家を支えて、北方全体を盛り上げる。そのパートナーが君だったら最高だ。

・・・うちは叔母が陛下に嫁いでいるだろう。王妃様と仲が良すぎるのはいいんだが・・・」


「良すぎると何が悪いんですか?」


「王妃様がすごく良くしてくれるものだから、北方を抑えるための人質として機能していないんだ・・・」


「それは・・・」


何だろう、仲が良いことはいいことなんだけれども、王妃様の後ろ盾があることで北方がさらに幅を利かせているように見えるのかもしれない。


「それでパワーバランスを取るために、次期辺境伯の上の兄のところには南方出身の侯爵令嬢が嫁いでくることになっている。何度か会ったが悪い人ではない。悪い人では無いんだが、王都の社交界で華やかに過ごしているご令嬢だから、辺境伯夫人として采配を振れるかどうか不安でね」


「そういうわけで下支えができる北方出身の私ということですね」


「僕としては君の人となりを好ましく思っているというのが一番の理由だよ!でもそれだけじゃなくて、家としては君の優秀さとか、領土愛とか、僕が継ぐ子爵位と釣り合いの取れる爵位なんかがもう理想的で」


ちょっと焦ったようにフォローの言葉を挟むのが面白くて思わず笑ってしまう。貴族の結婚は、高位になればなるほど恋愛感情だけで出来るものでは無い。キース様との婚約はどちらも特に他家と縁を結んで成し遂げたいような事業がなかったから、親同士が盛り上がって決まったという、どちらかというと特殊な例だ。しがらみが無かったからこそ、簡単に解消となったともいえる。

年齢や爵位などの条件が揃っていて、期待される役割がある。その上で人として好意を持てるのなら、それが一番ではないだろうか。フワフワとしていたキース様との婚約よりよっぽど輪郭がしっかりしているように思えた。


「父とも相談しますが、私もグレッグ様は素晴らしい方だと思いますし、卒業したらこの地に帰ってきたいと思っておりますから、前向きに考えたいと思いますわ」


「ありがとう。君は優秀だし王都で仕事を持ったりするかもしれないと不安だったんだ」


「王都は・・・私には合わないようですから」


思わず渋面を作ると、グレッグ様はおかしそうに声を上げて笑った。いつも落ち着いていてさすが高位貴族と思えるような振舞いしか見たことが無かったし体格も良いので、クラスメイトにも関わらず何となく年上のような感覚で話をすることが多かったが、初めて見た屈託ない笑顔は、彼もまだ13歳の少年なのだということを思い出させてくれて何だか胸の奥がじんわり暖かくなったような気がした。


お父さまに前向きに考えているということを伝えると、普通は婚約解消から少し時間を空けるものだが、今回のケースについては公爵家や伯爵家に合わせて早めに婚約したほうがいいだろうということだった。


「公爵様もこれ以上ごねるのは無理だとわかっているだろう。もともとご令嬢の横恋慕でサウスフィールド家の長男が婚約を解消しているのだ。自分たちの我儘で2組の婚約が解消されるなんて醜聞もいいところ。もうさっさとご令嬢を伯爵家に嫁がせるしかないだろうな・・・本当に迷惑なことだ」


最後はボソッと吐き捨てるようだった。私は本当にとばっちりを受けたとしか言いようがない。我が家のことなんて頭の片隅にもなかったんだろうな。まあ仕方ないけど。そもそも北方の弱小貴族同士の婚約なんて知らなかっただろうし。


「まあ、辺境伯様がうまく取り持ってくれるだろう・・・では、辺境伯様にそうお返事をしてもいいんだな。早ければ早いほど全員のダメージが少なくて済むから、返事をしたら下手したら休暇中に決まって後戻りは無理だぞ」


「ちゃんと考えたから大丈夫。グレッグ様は頼りになるし、私が嫁いだ後どういう立ち位置で何ができるのか、そういうこともちゃんと言ってくださるの。キース兄さまに嫁ぐよりよっぽど将来の展望が見えるのよね」


「子爵位といっても辺境伯家の令息だ。他の家に嫁ぐより責任も重いかもしれないが」


「それも大丈夫だと思うわ。その辺も学校でちゃんと見て私をと言ってくださっているんだもの」


「お前に覚悟があって、それで良いなら私たちは問題ない。これ以上無い良い話だしな。ではそのように手紙を出しておこう」


そして、本当に素早いことに、お返事後すぐに辺境伯様から夫人にも会わせたいとお呼びがかかった。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

楽しんでいただけましたら、ブックマークや高評価をいただけると嬉しいです^^

明日も20時投稿になります。

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