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第29話 子どもから、少し大人へ

ここで第一章はいったん終了です。

明日からは第二章(リリア視点固定)が始まりますので、

これからもお付き合いいただけると嬉しいです。

そんなこんなで婚約解消が決定し、王宮に届けも出した。あとはライズ子爵家と伯爵家の話し合いになるのだろう。

どうも秘密裡に辺境伯様が間に入っているそうなので今以上にこじれることはないと思うが。辺境伯様は、北方をまとめる立場として、寄り子の問題を解決する、という理由での介入だそうだ。

秘密裡に、というのはどうも私のことを慮ってくれているらしい。まだ私がグレッグ様との婚約を決めかねているから。

それによってエリス様とキース様の立場はさらに悪くなるが、それはそれで仕方なかろう、というお考えらしい。

私がさっさとグレッグ様と婚約を結べば、大人の事情による交通整理と受け取られるが、私に次の縁談が無いと、彼らは私を捨てたということになる。それは私にも捨てられたという評判は立つのだが・・・北方から出なければ何とでもなる。


婚約の解消が発表されて、私は腫れものに触るような扱いをされている。特に寮の皆さんは色々思うところがあったらしい。気まずそうな人もいたり、労りの視線だったり、嘲るような雰囲気だったり、様々である。学年が上がるほど、爵位が上がるほどに無関心を装っていた。おそらく、裏も含めてほぼ正確に状況を把握しているんだろう。


当事者でいながら何も考えていなかった私にはやはり王都の生活は厳しそうだと改めて感じた。男爵家とは言え一応貴族なのだが、次元が違うと感じざるを得なかった。


グレッグ様は教室では今までとあまり変わらなかったが、嘲るような言動をする人に居合わせた時などはすぐに庇ってくれる。北方の辺境伯家の者として、という立ち位置ではあるが、ちゃんと見ていてくれて、ちゃんと守ってくれるというのがまっすぐ伝わってきて、この人なら大丈夫なのかもしれないとだんだん思うようになってきた。


さて、去年とは違う前期。色々身辺が大きく動いて少し勉強に割ける時間が減ったとはいえ、クラスの皆の向学心溢れる雰囲気に支えられて何とか調子を取り戻すことができ、成績も維持することができた。逃げるように机にかじりついていた去年を思うと、本当に1年しか経っていないのか不思議な気持ちになってくる。感慨深く思いながら今年もウィル兄さまと同じ馬車で帰省することになった。去年はこの帰りの馬車の中もピリピリしていたが今年は去年よりものんびり時間を使って途中の町で散策を楽しんだ。こうやってウィル兄さまと一緒にのんびり帰省できるのも今年で最後だ。兄さまは今年卒業なんだけど、進路決まっているのかしら。


「ウィル兄さまは、卒業したらどうするの?」


「あー、色々バタバタしてたから言ってなかったけど、卒業後は辺境伯様のところで領地管理の手伝いだ」


「えっ、そんなのできるのウィル兄さま」


「いやー、成績も中の中だし、多少体は動かせるけど騎士になれるほどでもないし、でも父さんはまだ現役でそんなに手伝いもいらないしって悩んでいたら先日辺境伯様が、じゃあ辺境領の中でもうちに環境が似ている町で補佐をやらないかと言われて。家を継ぐまでの修行だな」


「いつのまに・・・」


「北方出身者で進路決まっていない人は辺境伯様に相談するといいって言われてたから」


「本当に面倒見がいいのね」


「厳密に主従関係があるわけじゃないけど、辺境伯様の傘下のようなものだから。派閥ともちょっと違うけど・・・なんなんだろうな。皆のお父さん?」


「なにそれ」


思わず笑ってしまう。働き手の確保のためにも北方出身の人は北方に帰ってきてもらいたいというのもあるのだろう。山越えが大変で社交界にもほとんど出ないし煌びやかな王都からわざわざ北方に来ようとする人は少ない。なんなら別の国と思われている可能性まである。多少成績が揮わなかろうと北方出身で土地柄をよく知り、根付いてくれる人は貴重である。


「グレッグ様さ、休み中、お前に会いに来るだろうな」


「・・・そうね、きっと」


「まだ考えたくないだろうけどさ、今回のことで俺は都会には合わないなと実感して、それで辺境伯様のところで働くことにしたんだ。リリアもたぶん、北方で生活したほうが性に合ってるんだと思うんだよ。だからグレッグ様はいいんじゃないかなと思うんだ。同じ年だし嫌いじゃないだろう?・・・キースよりよっぽど大人だし」


「そうね。私もそう思うわ。クラスでもさりげなく守ってくれるし。それこそ辺境伯家として北方の人間を守るという理由だけだったとしても、とても頼りになるわ。だからとても良いご縁だとは思うんだけれども・・・ねえウィル兄さま、結婚ってどういうものなのかしらね」


「俺たち、うちの両親とキースの両親しか知らないもんなあ。当然、物心ついたときから夫婦なわけで。だから他人同士が家庭を作るっての、俺もよくわかんない」


「兄さまが分からないなら、子どもの私なんてもっとわからないわね」


「・・・きっと、今回のことでリリアの方が大人になったと思うけど。あーあ、俺もそろそろ決めろって言われるんだろうな」


そう、これは一つの経験。子どものままではいられない。それを知るきっかけになっただけなのだ。そしてウィル兄さまも私も、これからどんどん大人になっていく。特に女の私は適齢期が早い。グレッグ様とのお話も今回のことに辺境伯様が介入していることを考えると、2年を限度にという話だったがもっと早まりそうだなと、これからのことを面倒に思う反面、少し楽しみにも感じるのだった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


明日からは第二章、リリアの新しい一歩が始まります。

更新は引き続き20時ですので、これからもお付き合いいただけると嬉しいです^^

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