第24話 噂とキース様とのやり直し
休み中に噂を聞いたらしいクラスメイト達は、謝ったり憤慨したりと色々だった。特に親友ともいえるイザベラは、私がイザベラにも何も言わなかったことも含めて半泣きで怒っていた。が、あの流れでは言えないだろうと理解もしてくれた。
「なんか、ライズ先輩、クラス委員で優秀だし、見目もいいし、下位貴族の星!みたいに思っていたのにガッカリね」
同じく下位貴族の男爵家出身のイザベラが言えば、他のクラスメイト、主に女生徒たちも口々にキース様を悪く言い出してしまった。
「そもそも、お二人のことだって、同じクラス委員同士、優秀で見目の良い上品なカップルだと思って憧れていたのに、それがまるで幻想だったなんて」
「知らなかったとはいえ、その幻想に憧れていた自分が許せないわ」
「エリス先輩もお可哀そうだわ・・・」
「あら、エリス先輩はリリアのこと知っていたのよね、リリア?」
「え、ええ・・・入学してすぐくらいに・・・あの、もうそれくらいで・・・」
「知っててそれならエリス先輩も酷いじゃない!すごく落ち着いていて綺麗なお姉さまだと思っていたのに!」
「いや、あの、そろそろその辺でやめておいた方が・・・」
ヒートアップして声も大きくなっていっている。まずい。二人とも上級生だし、伯爵家の令嬢と子爵家の嫡男だ。いくら私のために怒ってくれているとしても、あまり悪く言うのは危険だ。が、止めようにも皆止まらない。おたおたしていたら、グレッグ様がパンパンっと手を叩いた。
「みんな、そこまで。相手は上級生で、一人は伯爵家を継ぐかもしれない令嬢だ。表立って避難するのは避けた方がいい」
騒いでいた女生徒たちが一斉に口をつぐむ。北方とはいえ辺境伯は侯爵相当。グレッグ様はクラスメイトの中では一番身分が高い。高位貴族に言われて、自分たちが言っていたことが不敬にあたるかもしれないことに気が付いたようだ。クラスメイトには伯爵令息もいたが、主に女生徒が騒いでいたし、あまり興味が無いようで我関せずと言った感じだった。改めてグレッグ様は同年代の男子生徒、なんならキース様よりも大人びているなと感じた。
昼休みにキース様が教室に私を誘いに来た時、クラスメイト達は遠巻きに見ていた。貴族とはいえ、私たちはまだまだ子どもで、表情を取り繕うこともできず無礼とも思える視線を飛ばしていた。キース様はそれをひしひしと感じながら、これでもかと小さくなって食堂で一緒にランチを取らないか、と誘った。
「食堂・・・ですか」
だいぶ注目されると思うのだがそこは承知の上なのだろうか。クラスメイトの視線以上のものが突き刺さると思われる。私としても少し気後れするが、ここは堂々と私たちの婚約に何も問題はないという体にしないといけないだろう。覚悟を決めて連れ立って教室を出る時、イザベラは心配そうにこちらを伺ったが、一つ小さくうなずいてそのまま食堂に向かった。
食堂に着くと、そこにはウィル兄さまもいた。キース様が助けを求めたのか、ウィル兄さまが気を利かせたのかはわからないが、とりあえず二人きりよりは視線がきつくなくて助かった。それでも何だか胃がキリキリしそうで、定食のメインは好物のローストビーフを横目に見ながら白身魚の蒸し料理をオーダーした。肉よりは消化に良いだろう。
「えーっとリリア、その、教室まで行ってごめん。みんなの目が気になったよね」
「気にしてないわ。そもそも来てもらわないと会わないじゃない。上級生の教室には行きにくいし・・・」
「ウィルが迎えに行ってこようかと言ってくれたんだけど、そこはちゃんと自分で行かないとと思って」
「そうね、それがいいと思うわ」
キース様は、あんなに一生懸命やっていたクラス委員を今保留にされていると聞いた。だからだろうか、なんとなく自信なさそうに俯きがちで、おどおどしているように見える。たった1年。生まれてから10年以上一緒にいたのに、たった1年が彼を、私を、二人の関係をここまで変えてしまうなんて入学前の私に想像ついただろうか。
長期休みに帰ってくるキース様はいつも明るく朗らかで、でもウィル兄さまよりも落ち着いていて、頼りになる優しいお兄さま、未来の私の旦那さまだった。私もこの1年でずいぶんと変わったと思う。前はもっと子供らしく、無邪気に飛び付いていけていたのだ。あの日、初めてキース様とエリス様が並んでいるところに居合わせたあの日からすべてが予想しなかった方向に動き出して、私たちも、そして周りも迷子になっている。
「リリア、次の週末、街に行かないか」
「街へ?」
「南の隣国のスイーツが食べられるレストランがあるんだ。北方では見ないような珍しい果物がたっぷりで美味しいからリリアもどうかなと思って」
「まあ、南国のフルーツって色鮮やかでとても甘いと聞いたわ!」
「種類もいっぱいあるんだよ」
「楽しみだわ!」
微妙な気持ちは持ちながらも、やはりお出かけは嬉しい。学校にいるよりも人の目を気にしなくて良さそうで、関係の修復に街でのデートはちょうど良く思えた。
「街なら俺は遠慮するから二人で楽しんで来いよ。護衛は手配しておく」
「ありがとう、ウィル兄さま」
私たちのように王都にタウンハウスを持たない貴族は、専属の護衛も侍女もいない。寮生活はだいたいのことは自分でやるので侍女は特に必要が無いが、街に出るとなると貴族の子女には誘拐などの危険が常に付きまとうため、申請すれば学校が雇っている護衛がつく。というか、護衛がいない状態での私的な外出はほぼ認められない。
週末の約束をして、少しウキウキした状態で教室に戻る廊下を歩いていると、何人かの上級生に呼び止められた。
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