第23話 新学期と呼び出し【キース】
結局考えてもよくわからないうちに学校についた。
馬車止めのところでウィルに続き僕が降りてリリアをサポートしていたら、同じように学校に戻ってきて馬車から荷物を降ろしていた同級生が驚いたように一瞬こちらを見て、そのまま顔をそらせてしまった。きっと噂が広まっているんだろう。今まで学校の中だけで完結していた子どもの戯言に近い噂が大人に伝わり、それが長期休暇でさらに広がった。
休暇前は、悪いことはしていないんだから、と思って放っておいたが、自分の至らなさを思い知らされた今は、刺さる視線がすべて僕を責めているように感じられる。実際、責めているんだろう。
「キース、ちょっと生徒会室まで来てくれないか」
なんとなく俯きがちに教室までの廊下を歩いていたら、書記の侯爵令息に呼び出された。
生徒会室には会長と副会長が揃っていた。
「我々も君の事情を知らなくてね、こんな事態になるまで指導できなかったのは高位貴族として悪かったと思っている。優秀な君のことだからと私生活にまで気を配っていなかったのは申し訳なかった。子爵家の次期当主とは言え、王都の貴族と北方とは色々違うだろうに、その辺を我々も理解していなかったようだ」
嫌味のようにも聞こえるが、その口調と表情は本当に申し訳ないと思っているようにも見える。僕には貴族のそういった言い回しは慣れなくて真意が良くわからない。こういったところも、いくら背伸びをしても所詮は未熟な田舎者ということなのだろう。どちらにせよ、自分の評価が恐ろしいほど下がったのは確かだ。
「それでなんだが・・・どうなりそうかい?君が優秀なのはわかっているが、いかんせんこれだけ否定的な噂が立っている状態で、その噂の相手であるエリス嬢と共に任命するというのは難しいことはわかってほしい」
全身から血の気が引いた。家族やリリアに責められていた時以上だ。今まで頑張って得て来たものを、こんなことで失うのか。
「まあ、エリス嬢に非がまったく無いわけでもない。王都の伯爵令嬢なのに迂闊なことを、と非難する声があるのも確かだ。ただ・・・彼女の場合は公爵家に振り回されているという事情があること、実際には不貞の事実はないことで同情的な声の方が大きいんだ。不憫な状況で君に付け入られたとね」
「そんな・・・!ご存知でしょう、彼女と僕は同じクラス委員として協力しあっていただけだと。行動を共にすることは多かったですが、ほとんどが仕事の関係です!」
副会長が呆れたようにため息をつく。
「我々だって君たちに不貞の事実は無いと信じている。
だけどね、こういうのは噂ひとつで命取りになるんだよ。婚約は、家同士の契約だ。君たちの婚約だって国に届け出ただろう?それを蔑ろにするというのは、契約を反故にするのと同じことなんだ。
まあ、社会に出る前に羽を伸ばそうと恋愛ごっこをする者はいるが、そういうのはうまくやるものなんだよ」
「いや、そもそも恋愛ごっこというわけでは・・・」
「だから余計に駄目なんだ。最低限の節度は保ちながら期間限定で遊ぶなら若いからということで大目に見てもらえることもある。相手も期間限定であることを承知の上で、さらに婚約者の理解があれば、の話だが。君の場合は、それが無いだろう」
「・・・」
「とにかく、公爵家と伯爵家がどう出るかまだわからない。一旦、クラス委員は君のクラスについては保留とさせてもらう。長くは待てないが、何かしらの結論が出て、二人一緒に任命できる状態になれば任命する。・・・正直、入学式を来週に控えた今、二人が抜けるのは痛手なのだが、入学式は来賓の方々にもご臨席いただくことになっているから、君たちはいない方がいいだろう」
「はい、わかりました」
登校時よりもさらにどんよりした気持ちで教室に入る。
少しざわっとしたが特に何かを言われるわけではない。ただ、僕とエリ・・・ス嬢とを交互に見て興味深そうに囁き合っている集団がいくつかあった。その中で、エリス嬢は机について教科書を広げ、静かに予習をしていた。その凛とした姿勢、時々髪を耳にかけるしぐさに、僕は性懲りもなく、ああ綺麗だな、と思ってしまった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけると嬉しいです^^
明日も20時に投稿予定です。




