第17話 叱責【キース】
家に帰ると、母さんは腰に手を当て仁王立ち、父さんは難しい顔をして腕を組んでいた。
「・・・ただいま戻りました」
「おかえりなさい。荷物置いてすぐここに座りなさい」
着替えも休憩もさせてくれない勢いだ。これでも4日、馬車に揺られてきたのに。しかしとにかくああなっている母さんに逆らうと後が怖い。荷物を置き、すこし汚れをはたいてすぐにリビングに向かう。
「あなた、何をしているの?王都にいらっしゃるドーム男爵の姪御さんから手紙をいただいて、本当に恥ずかしいやら情けないやら。夏の休暇の時の様子がおかしかったのはそのせいね」
「わざわざ、そんなことをドーム男爵が?」
「王都の子爵家に嫁いだ姪御さんから直接お手紙をいただいたのよ。北方の二家と王都の伯爵家が揉めるようなことがあっては面倒、特に今回は公爵家も絡んでいるから心配している、そんな文面だったけれども、明らかにあなたの不誠実な態度に対する非難も含まれているわ」
「いやでも、クラス委員として仲良くしていただいているだけで、常識的な距離は保っているし、二人きりになるようなことも無い。何か約束してるわけでもない。確かに噂はあったけど、僕は何もしていない。そんな責められるようなことは・・・」
「おだまり!何もしていないのが問題なのよ!ちゃんとリリアちゃんを婚約者として大事にした上で、噂を否定すればまだよかったものの!
リリアちゃんをさんざん放置して、さらに婚約者であることも周りに言わない、伯爵令嬢との距離を見直すことも無い、否定もしない。これのどこが責められないって言うのよ!」
母さんに責められてみると、今更ながら「否定をしない=肯定」と取られる可能性に考えが至った。特別な関係があるわけでもないのだから、面白おかしく噂されているだけなら放っておいても良いだろうと思ったのが間違いだったようだ。
「リリアちゃんがどれだけ傷ついているか、想像もできなかったの?あんなに可愛がって、仲良くやっていて、リリアちゃんもあなたのこと大好きだって言うから婚約させたのに、リリアちゃんに申し訳なくて・・・」
「・・・リリアも噂を知っている・・・?」
「当り前じゃないの!そんな噂、女性の間なら飛ぶように広がるわよ!それに・・・それに!あなたその伯爵令嬢とやらにリリアちゃんのこと、妹のようなものって紹介したんですって?!まず会わせるのが許せない、たまたま会ってしまったとしてもきちんと婚約者として紹介しない!不誠実以外の何物でもないじゃないの!本当に、本当に!婚約させなければよかった・・・!」
とうとう母さんが泣き出してしまった。僕は僕で、そんな細かいことまで母さんが知っていることに驚いていた。確かに褒められた行動じゃないとは分かっていて、後ろめたくて、ウィルのこともリリアのことも避けていたけれども、そんなに、母さんが泣くほどのことなのか?
そういえばウィルにも殴られた。リリアを避けていて、会いにもいかないことを責められているんだと思っていた。それに対して悪いとは思っていたけど言い訳もできないし、言う権利も無いと思ったんだ。自分のこともわからなかったから、何も言えなかった。
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