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挑戦


「メティちゃん!」


「アネモス・ドゥレパーニ!」 ビュゥンッ!


風魔法を纏った双曲剣から放たれたのは鎌状の大きな風刃だった。


キィィンッ! 「ブオォ…!」


ミノタウロスが怯んだ隙にミミルは懐に潜り込んだ…ってあの構えはまさか。


「サンダーショットガンッ!」


バチィンッ!! 「ブフォーッ!」


圧縮され勢いよく放たれた雷撃の散弾をくらったミノタウロスは一瞬で黒く焦げ、硬直していた。


ザァンッ!


ドサッ。


そして容赦なくメティが双曲剣で鎧の隙間を狙い首を落とした。見事な連携と魔術だった。


2人はハイタッチしてから駆け寄って来て俺の手から自分の荷物を取った。


主を倒したお陰でダンジョン内の重い空気が霧散した、これで任務完了だな。


「ミミル、あの技はイヴに教わったのか」

「そうだよ〜、強力だけど魔力消費が激しいし相手に近付かないといけないから使い所が難しいんだ。教え始めにイヴ姉が『これは特別な技ゆえ心して身に着けよ!』って言ってたよ」

「ふふっ、なるほどな」

「ところでメティちゃん、こいつの装備って高く売れないの」

「そうですね…重装鎧なのでドワーフなら喜んで買いそうですが…どのみち大きな町まで運ぶことになりますよ」

「却下だな、戦斧と鎧は重すぎる。兜だけなら運ぶのに問題なさそうだが」

「この兜テッサの町で売れるかな」

「売れそうですよね。取り敢えず持って帰りましょうか」


それから俺達はボス部屋の奥にあった宝物を持てるだけ持って外に出た。


順調に思えたがここで問題が発生。


こんな物を駆け出し冒険者の俺達が持って帰ったらかなり目立つ。とは言えどうしても売ってお金を手に入れたい…あの手でいくか。


「メティ、初めて会った時フードを被っていたよな」

「はい。それがなにか…?」

「あっ、なるほどね~。素性を隠して売るつもりだねミウくん」

「ああ。商売は信用が命、買い取りの際に無闇に詮索をしてくる商人はいないだろ。いたとしたらそれはろくな商人じゃない」

「確かに、その通りですね」


ということでテッサの町の入口付近で変装開始。


背格好を誤魔化す為にホブゴブリンが着けていた鉄のプレートやら胸当てを重ねて装着して太っているように偽装してからローブを纏った。


「それなら大丈夫だねっ」

「そうですね」

「よし、じゃあ行って来る」

「待った。声も変えるの忘れないでね~」

「んんっ、分かってる」


低い声を出し2人に笑われた後、変装した俺は雑貨屋に向かって歩いた。


ミミルとメティは俺から離れて歩くようにして着いて来ている。それにしても重いな、さっさと済ませたい。


「いらっしゃい」

「…どうも。買い取りを頼みたい」

「かしこまりました。では早速ですが品を見せてもらいましょうか」


ガシャン。 「これを全てだ」


台の上に件のダンジョンから持って返った戦利品を全部置くと、店主は少し後退りして言った。


「ここ、こんなに…しかもこの辺りではなかなか見られない物ばかり…お客さんまさか…」

「なんだ?」

「高ランクの冒険者ですか」

「えっ…ゴホン、その通りだが、事情があって内密に買い取りを頼みたい。もちろん盗品等ではなく全てダンジョンで入手した物だ」

「承知致しました。商売は信頼が全て、お客様を信じて責任持って取り引きさせていただきます」

「…よろしく頼む」

「しかしこれだけの量と質の品々なので正規の鑑定士に依頼して価格を提示させていただきたいのですが…」

「構わない、どれくらい掛かる?」

「3日もあれば充分です」

「分かった、3日後にまた来る」

「あの、お名前だけ窺っても宜しいでしょうか」

「えっと…ルシガルだ」


許せルシガル。


「ルシガル様ですね。ではお待ちしております」


店を出て人気の無い場所に向かった。辺りに誰も居ないことを確認し、身に着けていた変装防具を全て外した。


「お疲れ様でした」

「大丈夫そうだったね〜」


2人には店内での俺と店主のやり取りを見聞きしてもらっていた。


「3日後にまたあの格好をするのは気乗りしないがな。それに嘘ついたり他人の名を語ったりするのもあまり気分がよくない」

「あはは、それは仕方ないよ〜。確かにあの格好は見るからに重そうだね」

「それらはどこに隠しますか?」

「ウチらの部屋は駄目だね。ギルドで見られたら終わりだよ」

「では私が預かりますよ」

「重いから宿まで持って行くよ」

「ありがとうございます」

「じゃあウチは先に戻ってるね」

「ああ」

「えっ…」

「大丈夫だよメティちゃん。ミウくんは急に襲うなんてことしないから」

「わわわ、わかってます!」

「メティ、無理しなくてもいいぞ」

「平気です!さ、さあ行きましょう」


ミミルと別れ、俺とメティは宿屋に向かって歩いている。彼女は相変わらずそわそわしている。


「まだ俺と2人きりになるのは慣れないか」

「は、はひっ」


ガチガチだな。毎回2人きりになった途端にこれだとちょっと困る。


うーん…少し強引な手を使うか。


「メティ、荷物を置いたあと時間をくれないか」

「じ、時間ですか…あの、それはどんな意味で…それってもしかして…」

「まあ取り敢えずこの荷物を置いてからだ」

「わわ、わかりましたっ」


メティの泊まっている宿に着き、部屋に変装道具を置かせてもらった。


「行こう」

「へっ!?あ、はいっ!」


そうして俺とメティは町の中央広場にやって来た。

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