表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/188

提携


「いやぁ、助かったよ。ミウ達に頼んで良かった、縁があったらまたよろしく頼む。酒と布もありがとな」

「気にしないでくれ。お礼ができてよかったよ」

「おじさん、帰りは護衛要らないの?」

「ああ…本音を言うと頼みたいくらいだが、往復で依頼すると高くつくんだ」

「村にはいつ帰るのですか」

「明日の朝には出発するつもりだよ」

「ねえミウくん」

「分かってる。ハティスさん、帰りも送るよ。もちろん無償で」

「いやぁ、それはさすがに悪いだろ」

「私たちも森の方に用事があるのでついでみたいなものです。どうか遠慮なさらずお任せ下さい」

「そうなのか、でも…本当にいいのか」

「もちろんだよ〜」

「ああ。任せてくれ」

「じゃあ御言葉に甘えてよろしく頼むよ。しかしお前達はどこまで良い奴なんだ」


俺達は顔を見合わせてから笑った。


確かにギルドに居る同業者を見てると無償で任務を請け負う様なお人好しはいなさそうだ。


一先ずハティスさんと別れて俺達は昼食を取ってからダンジョン攻略の準備に取り掛かり、余った時間は鍛錬に費やした。


キィーンッ!!


「くっ、いいな~その剣。酷いよメティちゃん」


「ご、ごめんなさい」


「次の報酬でミミルの槍も新調するからメティを責めるな」


「本当に!?約束だよミウくん」


「ああ、約束だっ!」 ガキィンッ!!


「ぐっ!」 ドサッ。


「いたた、メティちゃん交代〜」


「はい。よろしくお願いします」


キィーン!!


舞う様な流麗な剣技、良い太刀筋だ。速力もなかなか高い。しかし…。


ガキィーンッ! 「きゃっ!」 ドサッ。


メティの攻撃には殺意が少し足りない。まあそれは相手によるものか。


「交代だね〜」

「まだやれますっ」

「無理するなメティ」

「大丈夫です!お願いしますっ!」


数時間経ち、日が落ちてきたので今日は切り上げて夕食を取った。さすがに2人が相手だと疲れるな。


「ミウは剣術をどこで学んだのですか」

「恋人の1人、イヴカロンって高位の吸血鬼に学んだ」

「ああ、以前ミミルに御名前を聞きました。偉大な方だと。それにしても吸血鬼とは…」

「ウチの師匠の1人だよ〜」

「あれっ、1人って…他にも師匠が?」

「うん、ウチの師匠は3人。皆美人でミウくんと同じくらい強いんだよ」

「そうなんですね…私も頑張らないとっ」

「その熱意には感心するが無理は禁物だぞ」

「はいっ」


俺達はメティと別れ、部屋に戻って身体を清めた後眠りに就いた。


翌朝、ギルドの食堂で座っていると荷物を背負ったメティがやって来た。


「あ、メティちゃーん」

「おはようございます」

「おはよう。朝食を済ませたら出発だ。ハティスさんとは町の出口で合流する」

「りょーかい」

「了解しました」


ハティスさんと合流し荷馬車に乗ってツデルカ村まで行った。


道中何も起きなかったので昨日より短時間で村に着くことができた。


「いやぁ、本当にありがとう。この恩は決して忘れないよ」

「気にしないでくれ。それじゃあ俺達は行くよ」

「おじさん元気でね〜」

「失礼します」

「ああ。頑張ってな」


ツデルカ村から数時間歩き、件のダンジョンに到着した。


「あ、あれって」

「ホブゴブリン達が迷宮外に出ている!?」

「始末するぞ」

「りょーかい!」

「はいっ!」


どういうことだ?まさかダンジョン内で湧いているのか、だとすればこのダンジョンの主を倒す必要があるな。メティに聞いた話では主が存在するダンジョンは魔物を生み出すらしい。なので魔物がダンジョン外に出現するのはそんなに珍しい事ではないとか。それでもいきなり出現し始めたということは俺達が原因の可能性がある…先日中途半端にダンジョン内で暴れたせいで活性化させてしまったのかも。


「それじゃあ最深部を目指すんだね」

「ああ。主を無くしたダンジョンは力を失うんだよなメティ」

「その通りです、さあ行きましょう」


俺達は魔物を狩りながら奥へ奥へと進んだ。すると明らかに異様な雰囲気を纏った大扉を見付けた。


「この先に居るな」

「だね」

「ですね」


3人で大扉を開くと中に居たのは牛頭の巨漢、ミノタウロスだった。見るからに重厚な鎧を身に纏い手には巨大な戦斧を持っている…絵に描いたようなパワータイプだ。速力はなさそうだがそれなりに硬そうな鎧…魔法は通じるのだろうかと色々考えているとミミルが俺の肩をつついた。


「ミウくん、メティちゃんが言うには討伐クエストだとランクCくらいだってさ」

「そうなのか」

「うん、そこであいつはウチら2人で倒したいんだけど」

「もちろん油断も容赦もしませんっ」


俺が口を開く前にメティが先に言ってきた。


「本当に大丈夫なんだな?」

「うんっ」

「はいっ」


2人は顔を見合わせてから親指を立てて頷いた。随分と仲良くなったものだ。ここまで自信に満ちているんだ、口出しは無用だな。


「分かった、任せる」


俺は2人の荷物を受け取って部屋の隅に移動した。


「ブフゥ〜…」 ズゥンッ。


ミノタウロスが2人を見て戦闘態勢をとった。


「やるよメティちゃん」

「はいっ!」


ダンッ!


2人が同時に素早く先制攻撃を仕掛けた。槍と双曲剣で幾度も打ち込んだがやはりあの鎧は砕けない様だ。


「アネモス・レピーダ!」 キィンッ!


「ブウォー!」


ガキィンッ! 「ぐっ」


メティの風刃も通らない。戦斧の一撃を防いだミミルの反応からしてそれなりに重い攻撃の様だ。


「ショックタッチ!」 バチィッ!


「ブフォッ!」


ミミルは素早く距離を詰め、電撃を纏った掌でミノタウロスの鎧に触れた後再び距離を取った。


「電気通りますね」

「うん、いけるね。よろしくメティちゃん」

「了解ですっ」


そう言うとミミルは槍を地面に突き立ててから右掌に魔力を集中させ始めた。


すると魔力を感知したミノタウロスが戦斧を振りかぶって向かって来た。


「ヴフォーッ!」


ガキィンッ! ギィィンッ!


メティがミミルの前に出て攻撃を双曲剣で捌き続けている。


反撃はしない…恐らくメティはミミルが繰り出す大魔法の時間稼ぎに徹しているな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ