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用事


「おはようございます」

「おはよう」

「メティちゃんおはよ〜」

「メティも何か食べるか?」

「そうですね、軽く食べておきます」


3人で食事を済ませてから俺達は出発した。


「そういえばメティ、他種族同士の交際に問題はないのか?」

「あまり善くは思われません…ですが私は周りの反応よりも自分の気持ちを大事にするべきだと思っています」

「そうか。確かに自分の気持ちは大事なものだな」

「はいっ」

「ねぇメティちゃん、この世界って他種族に対しての偏見や差別とかあるの?」

「その様なものはありませんよ。階級や身分でならありますが…。ミミルは不思議なことを聞きますね」

「あ、あはは。ウチって変わり者だからさ、時々変なこと聞いたりするけど気にしないでっ」

「わかりました」


そうなのか。人種による差別と偏見の無い世界か…俺達の住む大陸も見習ってほしいものだ。


それから休憩を挟みつつ無事ツデルカ村に到着した。


どことなく俺の故郷、ポマリス村に似ている。取り敢えず近くに居る村人に依頼人の居場所を聞いてみるか。


「すいません、ハティスさんっていらっしゃいますか」

「ああ、冒険者さんかい。護衛の件だろう、案内するよ」

「よろしくお願いします」


話が早くて助かるな。その村人に案内され歩いていると、他の村人達が集まってきた。


それにしても少ないな、見たところ40人にも充たない。


「おお、ミウとミミルじゃないか」

「あ、やっぱりおじさんだ〜」

「先日はありがとうございました、お陰で俺達は冒険者になれたよ」

「そうかそうか、それは良かった。こちらの美人エルフさんは仲間かい?」

「はい。頼れるパーティーメンバーです」

「そっ…えっと、は、はじめまして、リクトメティアと申します」

「ハティスだ。よろしくな」

「おじさん、これあの時のお礼。受け取らないなんて言わないでよね〜」


そう言ってミミルと俺はお酒と布を村人達に渡した。


「なっ、こんなに沢山もらっていいのか」

「当たり前だよ〜」

「ああ。遠慮なく貰ってくれ」

「感謝するよ。本当にあんた達は良い人だな」


そのあと寝泊まりする場所に案内され、食事の準備ができたら呼びに来ると言われた。


「喜んでくれてよかったですね」

「うん、苦労して運んだ甲斐があったよ〜」

「そうだな」

「明朝に出発ですよね」

「そうだよ。今更だけど何から護衛するの?」

「そうですね…主に野盗や魔物ですがこの辺りに現れることはごく希のようです。それでもギルドに護衛を頼むということは大事な荷物なのですね」

「そうだね、しっかり守ってあげないとねっ」


夜は村の集会所で宴会状態だった。任務があるので酒は控えたが、賑やかで和気あいあいとした場の空気に酔い痴れた気がした。


「あれだけ控えろと言ったのに」

「ん〜ごめん。雰囲気に呑まれちゃった」


ミミルを背負って寝所に向かって歩いていると、空には星々が散りばめられた様に輝いていた。


つい立ち止まって星空を眺めていると、メティが近付いてきた。


「星、お好きなんですか」

「ああ。見てると心が落ち着くんだ」

「そうですか…私も好きです」

「そうか」


背中でミミルが寝息を立て始めたので俺達は歩き出した。


俺も明日に備えてさっさと寝よう…ってこいつ(ミミル)よだれ垂らしてやがる。


翌朝、村人達に見送られて俺達は荷馬車に乗って出発した。


さあ、初の護衛クエスト開始だ。


…とは言ったものの何の襲撃もなく既に中間地点まで来てしまった。


「なにも出ないね〜」

「元々この辺りは魔物が少ないからな。そのうえ近頃は急に魔物どころか動物も見なくなったんだ」

「えっ、そうなのか」

「それってもしかしてミウくんがエビルタイガーを追い払った時の殺気と魔力圧の影響なんじゃない」

「あっ…そうかもしれませんね。動物や魔物は本能的に危険な場所だと感じたら当分は戻って来ませんよ」

「ん?殺気ってなんだ、ミウが何かしたのか?」

「いや、なんでもない。まあ何にせよ安心して町と村を行き来できる様になって良かったなハティスさん」

「ああ、そうだな」


なんとか誤魔化していると町が見えてきた、もうすぐ到着だ。と思った矢先にホブゴブリンが4体現れた。


「な、なんでこんな魔物が町の近くに!?」

「有り得ません…これは、まさかあのダンジョンから出てきた個体では…!」

「話は後だ、先ずは仕事だ」

「りょーかい!」

「はいっ!」


俺達はホブゴブリンを速攻で始末して再び荷馬車に乗った。


そして馭者をしているハティスさんに聞こえない様に会議を始めた。


「どうするミウくん、このままじゃ村や町の人に危害が及ぶよ」

「ああ。もう一度あのダンジョンに行く必要があるな」

「しかし、ダンジョン内の探索クエストは私たちのランクでは受注できませんよ」

「知っている」

「まさか…」

「その通り。ウチらはダンジョンの位置を知ってるからね〜」

「ああ、勝手に入って攻略する。打ち漏らさない様に魔物を殲滅する」

「な…本当に大丈夫なんですか」

「大丈夫だよメティちゃん。あの程度ならミウくん独りでも充分なくらい…」

「独りは駄目ですっ。私も絶対にお供します!」

「もちろん2人にも来てもらう。俺達はパーティーだからな」

「そ、そうそう。町に戻ったら色々準備しないとね」

「ああ。そんなに規模の大きい迷宮ではないと思うが万全の備えで挑む」

「メティちゃんあのダンジョンに行くの本当に平気?メルストレちゃんのこともあるし…無理はしないでね」

「ありがとうミミル、ですが問題ありません。彼女も私もそんなに軟ではないつもりなので」


あの目…メティの決意は堅い、怯えも無さそうだが強がりも多少含まれている…その辺はちゃんとフォローしないとな。


「そうと決まれば先ずは目の前の任務に集中だ」

「りょーかい」

「わかりました」


そうして会議は終了し、俺達は護衛クエストを続行した。

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