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加入


「よろしければ私をパーティーに加えてはいただけないでしょうか」

「えっ」

「はい?」


取り敢えず俺達はギルドの食堂に移動して飲み物を注文した。


「申し遅れました、私の名はリクトメティア。エルフです」


そう言ってフードを取ると艶々の金髪にお決まりのとんがり耳が現れた。そしてやはり色白で端正な顔立ちをしていた。


「へぇ~これがエルフなんだ。綺麗な髪の色だね」

「えっ…?」

「ああすまない、俺達は実物のエルフを見るのが初めてなんだ。遠くの村から出て来たばかりでね」

「なるほど、そうでしたか」


自己紹介を済ませ、なぜ俺達のパーティーに入りたいのか問うとリクトメティアは自分と同程度の実力者とパーティーを組みたくて待っていたらしい。


「あなた方は力を隠していますね。私には分かります」


俺とミミルは惚ける様に平静を装っているが内心かなり動揺していた。


「なぜそう思うんだ」

「あなた方に初めて会った時、確かにあなた方の居た所から凄まじい気配を感じました。それにミミルさんの槍さばきを拝見してかなりの腕前とお見受けしました」

「あっ…見てたんだ」

「すいません、近付くと気付かれるので遠くから見ていました。エルフは視力が長けているので」


おいおい、やはりストーカー気質が窺えるな。


「それにミウさんとミミルさんの会話を聞いていてお二人とも人柄が良さそうだと思ったので」


「そ、そうか」


尾行、盗撮、盗聴ってもう完全にストーカーだな。


「ちょっと2人で話して来てもいいか」


「どうぞ」


俺とミミルは食堂の隅まで移動してリクトメティアを見ながら話した。


「どうするのミウくん」

「断りたいところだが…分かるよな」

「うん、付きまとってきそうだよね。そっちの方が厄介かも」

「となるとパーティーに入れるしかないんだが、俺達の素性を知られない様に振る舞うのは苦労しそうだ」

「確かにいちいち言葉を選ばないといけないね」

「ああ。だから別の大陸から来たことと俺の無属性魔法のこと以外はなるべく晒け出していこうと思う」

「なるほど。嘘は嘘を呼ぶからね、異議なしだよ〜」

「決まりだな、大変かもしれないが頼むよミミル」

「りょーかい」


リクトメティアの元に戻り、加入了承の旨を伝えた。


「ありがとうございますっ!改めてよろしくお願いいたします、名前は長いのでメティと呼んで下さい」

「分かった、よろしくなメティ」


俺が握手を求めるとメティはごくりと音を立てて生唾を飲んだあと、恐る恐る手を出した。


そっと握手するとメティはとんがり耳を赤くして俯いていた。


「メティちゃんは何歳なの?」


握手しながらミミルが尋ねるとメティは俺の顔をチラチラと見ながら答えた。


「今年で49歳になります」

「へっ!?」

「エルフは長命だから見た目が若いんだ」

「そ、そうなんだね。普通に年下だと思ってた」

「いえいえ、そう言っていただけて嬉しいです」

「じゃあ呼び方メティちゃんのままでも良い?」

「もちろんですよミミルさん」

「ミミルで良いよ~」

「分かりました」

「俺もミウで構わない」

「はい。ところでお二人のジョブは何ですか?」

「じょぶ…?」

「ああ、えーっと…俺がソードマンでミミルがランサーだ」

「えっ、ミウさ…ミウは剣を持っているんですか?」


しまった、俺は武器を何も所持していないんだった。『物干し竿』があるから刀を持ってる気でいたが創造魔法のことを教える訳にはいかない。


するとすかさずミミルがフォローしてくれた。


「あ~そうそう、このあいだ盗まれちゃったんだよね」

「そうなんですか!?」

「あ、ああ。町に来たばかりの時に柄の悪い連中に盗られたんだ」

「それは災難でしたね…ただその賊はもう生きてはいないと思います」

「えっ…なんで?」

「彼等は駆け出し冒険者を狙う厄介な者達で、近々私が粛清しようと思っていたのですが先日全員が町の路地裏で変死していたそうで」

「そ、そうなんだ。変死って?」

「全員が何か礫のような物で額を貫かれていたそうです」

「そ、そうか…。あ、そういえばメティのジョブをまだ聞いてなかったな」

「失礼しました。私はソードマン兼アーチャー兼スカウトって感じです」

「へぇ~凄いね!そういえばその双剣、変わった形してるよね」


メティは双曲剣をテーブルの上に置いた。


「これはミスリルの双曲剣『フィレネ』と『シプラ』です。里を出る時に授かりました」

「ミスリル…?」

「はい。エルフの領地でしか取れない希少な鉱物です。ご存知ないですか?」

「あ、ああ!あのミスリルねっ。実物見るの初めてで」

「そうでしたか!確かにミスリルは希少価値の高い物ですからねっ、エルフの剣は曲線美が魅力的なんです。好きなだけ見て下さいっ」

「あ、ありがと」


なんだか急に自慢気になったな。そんな表情が普通に可愛い。


それにしてもミスリルが存在するなんて…やはり俺達が居た大陸には無い物が有るのか。


少しワクワクしてきた。


「そういえばメティちゃんって魔法使えるの?」

「はい。風の属性魔法を扱えます。あとは一般魔法を少々」


やはり魔法の概念も同様っぽいな。と言うか関わることの無い別の大陸なのにどうしてこんなに酷似してるんだ?まるで元々は1つだったみたいに…。


「このショートボウは『リッツァ』といいます」

「装飾が綺麗な弓だね。それも特別製なの?」

「はい。ミスリルと里の特産の木材と麻を使用しています。耐久性と威力は頑丈な大弓に負けないくらいです」

「それは凄いな、大した装備だ。ところでメティもギルドに泊まっているのか」

「いえ、宿の方に部屋を取ってあります」


なるほどな…メティは身なりも装備も整っているし経済的にだいぶ余裕がありそうだ。


しかしメティもまだランクはFなので取り敢えず明日、3人で採取クエストに行くことになった。

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